商業施設新聞
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No.927

海外と日本の違い


高橋直也

2023/10/17

ホーチミンで発見した2人用の『BOX』
ホーチミンで発見した2人用の『BOX』
 2022年にベトナムへ出張したときの写真を整理していたら「珍しいから紙面にすき間があれば紹介しよう!」と思って撮影した写真が出てきた。結局、すき間は生まれず、文字だけで紹介したのがホーチミンのショッピングセンターで撮影したこの写真だ。

 電話BOXのようだが、『2人用店舗』である。同様のものを何カ所で見かけた。現地の人が「若い女性が2人で使っているのを見かける」と言っていたが、おそらく1人でも使えるだろう。筆者は使っているシーンを見られなかったが、よく見るとマイクも置かれている。通路に置かれていたため防音のはずで、歌声は外にさほど漏れないようになっているのだろう。そう、カラオケBOXである。まさに『BOX』という名がふさわしいつくり。日本のカラオケBOXはどちらかというと閉じた空間だが、これは丸見え。実際使うとなると少々恥ずかしいかもしれない。

 海外出張の面白いところは、日本ではなかなか見かけない店舗があることだ。カラオケBOXのほかに、地下にスケートリンクがあるSCもあった。ホーチミンは年中暑いためウィンタースポーツは集客要素になるらしい。ちなみにスケートリンクはフロアの一段低い場所に設けられ、周りにはフードコートなどが張り付いており、面白いエリアだった。このほか日本ではないものとしては、店舗構成の面白さか。寿司店のすぐ近くにハイブランドファッションが出店しているエリアがあった。ちなみにフロアは商業フロアの最上階だったはず。ハイブランドファッションが上層階にあるのも珍しいし、そうしたファッション店を飲食店のすぐ近くに配置するのは、日本ではなかなか見かけないMDだ。

 このエリアを最初観たときは大胆さに驚いたが、海外のSCは日本と違い、賃料が固定制であることも珍しくないという。極論になるが、いくら見事な店舗配置で売り上げを最大化してもデベロッパーの収入は変わらないのだ。そのためSC事業者はまずは区画をしっかり埋める意識が強いそうだ。日系のデベロッパーが海外でSCを開発する事例が少しずつ増えている。日本のSC事業者が持つ運営力=テナントとともに売り上げを最大化する販促施策などは、海外でも強みになるかもしれない。

 一方、(株)アトレは台湾・台北市で展開している「Breeze南山atre」を、23年12月末をもって閉店することを発表した。開業したのが19年1月であり、コロナの影響もあったとみられる。海外のSC運営、店舗運営について取材をすると、初期は日本と商習慣の違いによって苦戦したという話を聞くことが多い。アトレも日本とは違う難しさがあったのかもしれない。実は、いつか現地取材をしたいと思っていたため非常に残念である。ただ、閉店するとはいえ、様々なノウハウが蓄積されたはずだ。ぜひ将来、新たな海外出店を果たしてほしい。
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