商業施設新聞
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No.1007

映画館に行く動機は何ですか


北田啓貴

2025/5/27

 30代半ばになってから、月に1回大阪市内の整体へ通っている。年を重ねるにつれ腰痛の症状が出るようになり、今後症状が悪化しぎっくり腰などにならないようにするためだ。大阪市内なので仕事終わりに通うこともできるが、予約時間ありきで業務を遂行したくないので休日に行くようにしている。そのため、休日は通勤のように朝から大阪市内へ出て、約1時間の施術を受けて帰る。

 ただ、せっかくの休日なので、少し遊んでから帰ろうと思い、映画館へ行くようになった。事前に観たい作品を選んで、映画館と上映時間を調べ、観賞しているわけだが、事前に観る作品を決めずにとりあえず映画館に行って、観たいと思った作品を観賞するという楽しみ方もあるという。とりあえず映画館へ行く、という使い方を踏まえると、改めて映画館ビジネスは来館してもらうことが重要だと感じる。

 興味深い取り組みがある。全国で「イオンシネマ」を運営するイオンエンターテイメント(株)は3月28日、大阪府守口市にある「イオンシネマ大日」をリニューアルオープンした。ロビー全面を改装し、レトロアメリカンな空間へと刷新し、滞在性を強化した。加えて、写真撮影などを目的とした映画鑑賞以外の目的による来店機会の拡大を図っているという。

レトロアメリカンな空間へと刷新(イオンエンターテイメント(株)提供)
レトロアメリカンな空間へと刷新(イオンエンターテイメント(株)提供)
 なぜ、イオンシネマ大日でこのようなリニューアルが実施されたのか。理由は、立地する「イオンモール大日」が大規模リニューアルに取り組んでいたこと、そしてイオンシネマ大日が大阪市近郊にある施設で、大阪府における旗艦施設と位置づけているからだという。滞在性が強化されれば、飲食やグッズの客単価の増加が期待できるし、足を運びたくなる店づくりにより、映画鑑賞をする人の増加も期待できる。

 Netflixなどサブスクリプションの動画配信全盛の時代において、わざわざ映画館に行って作品を鑑賞する意味は何だろうか。最新作を観たい、大画面、高品質の音響で楽しめるなど様々な理由があるだろう。映画館ビジネスは作品や設備以外の部分で、来店するきっかけが求められそうだ。来店動機の多様化においてイオンエンターテイメントの取り組みは注目だ。
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