現在、ニュースではどこもかしこも米価格や備蓄米の話題でもちきりだ。特に、政府によって備蓄米が随意契約で放出され、大手小売り業者によって販売されるという報道が出てからは、古古米の食味はどうだといった特集や、ブランド米との違いはといったものが注目されている。
政府は今回の備蓄米随意契約により、店頭価格5kg2000円台の米が出回ることで、高騰した市場米価の引き下げや在庫の放出を期待している。今回の米価高騰は米の生産量減少が大きな要因ではないと見られており、目に見える形で安価な米が市場に出回ることで市場価格の低下を促せると考えているようだ。
5月30日には備蓄米の随意契約を申し込んだ事業者が公表されたが、イオングループのイオン商品調達やパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス、ライフコーポレーション、コスモス薬品など名だたる大手小売事業者や関連事業者の名前が並んでいる。特にパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスやコスモス薬品などでは1万tを超す規模の契約を行ったようで、その事業規模の大きさがうかがえる。
ただ、こうした騒動も、直接消費者が触れることになる小売店の店頭に並ぶ価格がとにかく注目されているようで、外食業界などではコメの価格高騰は問題にはなってはいるが、それを理由にメニューを値上げするといった価格転嫁はあまり起こっていないようだ。また備蓄米の随意契約に申し込める事業者は、備蓄米は一般消費者への販売のみで事業者への販売は認められていないという条件があるようで、今回の備蓄米の随意契約も一般消費者が認識する米価を引き下げたいという思惑が見て取れる。
数年前から物価の高騰については社会的に問題となっていたが、特定の物品である米の価格が注目され、しかもそれが政局を左右しうるというのは状況が変わった感がある。こうした中、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスが農水省に対し米の流通の透明化を要求する提言を出すなど、小売の政治的存在感が高まっている。物価高騰の顕在化だけでなく、かねて消費税の減税問題も議論になっている中、小売事業者が政治に対し示す提言や姿勢は、これまでよりもさらに注視していく必要がありそうだ。