野村不動産コマース(株)(東京都新宿区)は、大阪市此花区の大型テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」の隣接地で商業施設「ユニバーサル・シティウォーク大阪」を運営している。その立地ゆえにパークと一体となった世界観を表現することに心を砕いており、一般的な商業施設との違いも多いという。ユニバーサル・シティウォーク大阪 総支配人の原田克治氏に話を聞いた。
―― 施設の概要から伺います。
原田 貸床面積は約9760m²で、現在はおよそ50店が出店している。「パークの門前町」として、パークに来られたお客様がその行き帰りに立ち寄る場所として機能しており、その意味で商圏は全国、そして海外とも言えるだろう。
―― 現在のテナントは。
原田 大半を飲食店が占める。有名チェーンのほか、大阪特有のものとして、たこ焼き屋6店が集結したフードコート「タコパ」も展開する。物販では、アパレルの「Gap Factory Store」やユニバーサル・スタジオのオフィシャルショップなどが出店している。
コロナが終息してお客様が戻ってきたこともあり、入れ替えをする床がないのが現状だ。ただ、2024年3月には荷物の預け先が少ないという課題に対応するため、対面で手荷物を預かるサービス店「きーぺん あずかるところな。」を新設した。
―― 施設コンセプトは。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンと地続きな世界観を創出している
原田 「ハリウッドの雰囲気をイメージした、パークと連動した世界観を創出する」という開業当初からのコンセプトは今も変わっていない。パークが日々変化していく中でも親和性は常に重視している。「テーマパーク」の一部である責任は大きく、テーマを崩すとゲストのモチベーション低下につながる。
施設内でも店舗の見せ方に気を配っており、チェーン店であってもここにしかないファサードを創りあげることで、パークと統一した世界観を生んでいる。24年には「鎌倉パスタ」や「神戸元町ドリア」などでリニューアルを実施し、アメリカンで非日常を感じられる、他店にはない外観とした。また、同年10月にはGapでもリニューアルを行い、カフェを併設したほか、新しい試みとして、フォトプリントシール機やメイクアップステーションを設置した。
―― 市中の商業施設とは求められているものが異なりそうです。
原田 そのとおりだ。お客様のモチベーションが通常の商業施設とは全く違い、ユニバーサル・スタジオのオフィシャル施設としてふさわしいファサードやサービスが求められている。それに応えるため、施設の陳腐化や老朽化には速やかに対応しており、共用部も含めて必要なリニューアルを随時行っている。
我々はユニバーサルシティ駅の改札を出てパークに入るまで、同じ世界観のもとで体験価値を提供する「ユニバーサル・シティタイム」の構築を目指している。実現できれば関西を代表するエンターテインメント施設になれるだろう。そのために、MDや販促などでパークと施設が一体となった施策を行う必要がある。
―― パークとはどのような回遊行動が見られるのでしょうか。
原田 パークを楽しむ前後に食事などを楽しんでいただくことが多いが、個々の回遊行動や店舗の利用状況を特定するのは非常に難しいのが正直なところだ。集客は天候やパークの閉園時間、またゲストがパークでどのような滞在をするかにも左右される。天候や閉園時間に関しては、当日の情報を事細かく共有し、各店をマネジメントすることで対応している。一方、ゲストに当施設へも立ち寄ってもらえるようにするには、やはりパークと地続きの世界観を醸成することが重要だ。ユニバーサルシティ駅は梅田や難波などの繁華街から電車で20~30分とアクセスが良い。唯一無二の世界観を生み出すことで、「少し早く家を出てユニバーサル・シティウォークに寄ろう」、あるいは「梅田や難波まで行かずにここで夕食を取って帰ろう」と思っていただけるようにする。
―― そうした中で集客を増やすための取り組みはあるのでしょうか。
原田 LINEを活用した会員施策を行っている。近場にお住まいで来店頻度の高い、例えばユニバーサル・スタジオの年間パスポートをお持ちの方などに向けて、クーポン配布などを行っている。運用を開始して1年程度のため、これから利用者属性などの分析を進めていく。
来館者はユニバーサル・スタジオへのゲストが圧倒的多数だが、近隣にお住まいの方の利用もある。価格帯からしても日常使い向けの施設ではないため、来ていただけるには価格帯にふさわしい店づくり、サービスを突き詰める必要がある。
―― 今後もリニューアルなどの予定はありますか。
原田 今春には「リトルオオサカ」「マツモトキヨシ」「モスバーガー」でリニューアルを実施するほか、「ユニバーサル・スタイル・ストア」では増床リニューアルを行う。また、「mr.kanso」が新店として新しくオープンする予定だ。
―― 大阪万博の開催が控えていますが、集客に影響はありそうでしょうか。
原田 ユニバーサルシティの1駅先(桜島駅)からは夢洲へのシャトルバスが発着するため、流入増は期待できるだろう。人が集まる立地の商業施設ではインバウンドの存在を無視できない。実際にインバウンドは増えてきており、今後は施設として外国人対応が十分でない部分を整備していく。
(聞き手・編集長 高橋直也/安田遥香記者)
商業施設新聞2587号(2025年3月11日)(3面)
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