人々の憩いの場となる芝生広場。公園や街の広場のほかに、郊外型SCなどの商業施設にも敷設されているのを目にする。商業施設新聞2025年5月13日号ではデベロッパーの公園事業について特集した。Park-PFIなどの整備手法を用いて官民連携で公園を整備するが、そのなかでも芝生広場は寝転んでくつろいだり、子ども遊ばせたり、食べ物を持ち寄って食べたり、イベント会場にもなったりと、使い勝手がよく、公園機能の中でもさしずめ4番打者のような存在と感じた。
そんな芝生だが、管理者が一番頭を悩ませるのが天然芝の傷みだ。芝生広場を利用したイベントは特に人気が高く、イベントを開催すればするほど多くの来場が見込め、Park-PFIで整備したカフェなどの商業施設にも立ち寄ってもらえる。その収益を公園整備に充てられるわけだが、代償として芝が傷んでしまう。傷んだ芝を再生するためには芝を張り替えることになるが、養生期間に1カ月ほどは必要だ。だったら人工芝でいいんじゃないかという意見もある。技術革新で品質が向上し、管理の手間や管理コスト面で負担の小ささは天然芝を圧倒する。だが、天然芝の風合いや居心地感は支持が高い。
スポーツの世界ではまた趣きが異なる。サッカー、Jリーグのスタジアムはフィールド(グランド)は天然芝だが、実は人工芝を組み合わせたハイブリッド仕様が認められている。Jリーグスタジアム基準を見ると、人工芝のハイブリッドを認めており、人工芝はピッチ全体の5%以下と定めている。
23年3月に内覧会で訪れたエスコンフィールドHOKKAIDO。ちょうど内野芝を生育していた
一方、プロ野球の主要球場(外野エリアのみ芝生を除く)は、天然芝仕様は「ほっともっとフィールド神戸」「楽天モバイルパーク」「MAZDA Zoom-Zoomスタジアム広島」となった。“となった”というのも、北海道日本ハムファイターズがホームとして使用する「エスコンフィールドHOKKAIDO」が今シーズンよりオール天然芝から人工芝のハイブリッド仕様としたからだ。ハイブリッドといってもJリーグのような仕様ではなく、内野のみ人工芝とした。同球場を運営するファイターズ スポーツ&エンターテイメントによると、イベントの開催を理由に挙げる。スタジアムで開催するイベントとなるとコンサートなど大規模で、機材などの設置で芝の傷みが避けられず、場合によっては全面張り替えとなることも多く、運営管理コストが増大する。内野の人工芝化でイベントの頻度や、小学生野球大会の開催も可能になるのだという。あの空間で野球ができたらさぞかし楽しいし、良い思い出になるだろう。そう思うと致し方ないが、23年3月に開催されたエスコンフィールドの内覧会で、球場内に足を踏み入れた時の天然芝特有のなんともいえないにおいが未だに忘れられない。興行か天然の風合いか、悩ましい所だ。