商業施設新聞
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第485回

イオンタウン(株) 代表取締役社長 加藤久誠氏


全国159施設のNSCを展開
都市型やDS核の開発急ぐ

2025/6/17

イオンタウン(株) 代表取締役社長 加藤久誠氏
 イオンタウン(株)(千葉市美浜区)は、地域密着型ショッピングセンター(NSC)の専業デベロッパーとして、全国に159施設を有している。郊外型のNSCに加え、近年は駅前立地となる都市型の開発も強化し、出店テナントを含め地域のニーズに合った施設展開を進める。今後は、ディスカウントストア(DS)を核店舗とした施設の開発も進める方針だ。同社代表取締役社長の加藤久誠氏に聞いた。

―― 前期の振り返り、今期の立ち上がりから。
 加藤 前期(2025年2月期)は天候不順などで季節性商品が苦戦する時期もあったが、売り上げ、各利益とも前期をクリアするなど通期で見ればほぼ計画どおりに推移した。経常利益も予算どおりで、数字的には良い形で着地した。
 今期(26年2月期)は4月の値上げ前の駆け込み需要などもあって、現時点では各段階で予算が取れており、順調な立ち上がりだと認識している。特に売り上げと客数が堅調だ。

―― 現在の施設数は。
 加藤 25年2月期に「イオンタウン浜松新橋」(浜松市中央区)と「イオンタウン楽々園」(広島市佐伯区)の2施設が開業し期末では158施設、直近では4月25日に「イオンタウン松阪船江」(三重県松阪市)がオープンして現時点の施設数は159施設となった。

―― 楽々園の立ち上がりは。
 加藤 今回は第1期として71店が開業した。地元企業や(株)フジが展開するスーパーマーケット(SM)の核店舗を中心に、エリア初のテナントなど目新しさも提供できており、順調なスタートを切った。食物販テナントの構成が約4割(通常のイオンタウンは約2割)と高めで「食」を強化した施設となっているが、食を強化したことで想定以上に商圏の広がり感を生むことができている。第2期として新店舗棟の建設も進めている。

―― 26年2月期の新店は。
イオンタウン東浦和のイメージ。都市型NSCの試金石と位置づける
イオンタウン東浦和のイメージ。都市型NSCの試金石と位置づける
 加藤 前述のとおり4月25日に松阪船江がオープンした。ほかには26年春開業予定の「イオンタウン東浦和」(さいたま市緑区)、「イオンタウンあびこ駅前」(大阪市住吉区)、「イオンタウン岐阜北方」(岐阜県北方町)の3施設がある。建築費や人件費の高騰、工期の長期化など諸問題はあるが、予定どおりオープンが迎えられるよう進めたい。

―― 既存店の活性化について。
 加藤 2年ほど前から、店舗年齢が20年超の既存店活性化投資をさらに大きくしており、あと3~4年はこうした既存店活性化を施設投資のメーンとする。現在、活性化の計画数はほぼ予定どおりに進んでいる。

―― 行政と連携した取り組みも目立ちます。
 加藤 地方の人口減少は行政側も課題と感じているため、当社と行政で手を組み、課題解決を図っていきたい。その意味で、行政施設を導入した官民連携の取り組みは今後も積極的に進める。当社はNSC専業デベロッパーなので、地域とともにそのエリアの課題解決をすることが重要だ。既存施設においては、エリアマネジメントとしてイベントの開催なども行っている。こうした取り組みを様々な場所でやっていきたい。

―― 従来の郊外型に加え、都市型も増えています。
 加藤 22年12月オープンの「イオンタウン旗の台」(東京都品川区)以降、駅前立地の都市型NSCの展開を強化し、その割合も増えている。都市型の立地は、駅前+その駅の乗降客数が2万人/日を一つの目安としている。都市型はテナントの顔ぶれも郊外型とは少し異なり、ドラッグストアや小型SM、コンビニエンスストアといった物販テナントに加え、サービスやクリニック、飲食店なども積極的に導入する。前述の東浦和は広い土地なので、核店舗にSMが出店するが、他の都市型においては核店舗をSMとしないケースも出てくる。東浦和は都市型NSCの試金石として重要な位置づけだ。
 一方都市型では、飲食店において昼間のランチ需要やファストフードだけではなく、夜にお酒も楽しんでもらえるようなテナントも開拓していかなくてはいけない。駅前立地ということで、車での来店がメーンではないためアルコールを扱うテナントの誘致にもチャレンジしていきたい。

―― 中長期的な目標について。
 加藤 都市型の開発を加速させながら、官民連携の施設開発もスピードアップさせる。また、世間がディスカウント志向になっている状況を踏まえ、ディスカウントストア(DS)を核としたNSCの再構築を急ぐ必要がある。当社のNSCとして、DSを核とした新規出店は直近ではできていないので、SMが核のNSCを作りながらDSを核としたNSCなど、地域や時代のニーズに合わせた開発を進め、それに合うテナント構成なども考えていきたい。


(聞き手・副編集長 若山智令)
商業施設新聞2596号(2025年5月20日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.465

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