九州シリコンアイランドは、国内外に知られる半導体産業の集積地である。国内半導体生産の50%以上は九州で作られているのだ。さらに、最近では事実上の半導体生産の世界チャンピオンである台湾TSMCが熊本に舞い降りたために、さらに国内生産の九州における比率は上がっていくことだろう。
実際のところ、TSMCの熊本第1工場には1.2兆円が投入され、今後予定される第2工場には2兆円が投じられる見込みであり、3.2兆円の大型投資がもたらすインパクトは大きい。さらに、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリングの熊本県合志における大型新工場も計画されていることで、こうした熊本における経済効果はなんと11兆円に達するというのであるからして、サプライズ以外の何物でもない。
こうした状況下で、2024年に開催された[九州]半導体産業展は多くの反響を呼んだのだ。来場者数は7314人を数え、出展者数は261社を獲得している。そしてまた、2025年10月8日~9日に開催される第2回の同展示会は、動員予定数は1万人、出展予定数は400社と大きくバージョンアップする見込みなのである。
今回もまた、展示会と並行して九州半導体産業の「現状」と「未来」がわかるセミナーが多数開催される。目玉はなんといってもソニーセミコンダクタマニュファクチャリングの社長であり、九州半導体・デジタルイノベーション協議会(SIIQ)会長の任にもある山口宜洋氏の講演である。同氏は新生シリコンアイランド九州の実現を常に掲げており、SIIQの活動についてもアクティブに取り組んでいるのだ。ソニーセミコンは、長崎諫早に巨大なFAB5を立ち上げ、さらに熊本合志の新棟建設にも取り組んでおり、九州活性化の先頭に立っていると言ってよいだろう。
その他でも注目する講演は数多い。熊本大学の若林秀樹教授の生成AIやチップレットに関する講演、デロイトトーマツコンサルティング執行役員の貴志隆博氏の講演、デンソーのシニアアドバイザーである篠島靖氏の講演などに関心が寄せられるであろう。ちなみに、10月9日の10時半~11時半の時間帯で筆者も講演をすることになっている。
同時開催で第1回[九州]次世代物流展も行われるわけであり、こちらにも足を運ばれる方が多いであろう。
会場はマリンメッセ福岡A・B館、主催は[九州]半導体産業展実行委員会、事務局は(株)イノベント。来場事前登録・セミナー受講申込みは
http://k-semi.jp/から。
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泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。