実のところ、高市早苗という人にどうにもこうにも好感が持てないという人は少なくないかもしれない。いわゆる昔の価値観で言えばとても生意気に見える女性であり、男勝りの発言に内心拒否反応がある人もいるであろう。おまけに、超タカ派で右寄りの政治家として特に韓国、中国などから警戒されており、こんな人物が首相にでもなった日には日中関係も日韓関係もぐしゃぐしゃになってしまうのではないかと不安を感じてもおかしくはない。
 それはそうであろう、彼女は靖国神社はいっぱい参拝しているし、日の丸・君が代は大好きであり、歴史観は中国や韓国からは反発を受けやすい。日本が直面する移民に対する考え方も賛否両論巻き起こっている。
 ところが、自民党総裁になった段階で彼女は「(靖国参拝は)適時適切に判断する」などと発言し、軌道修正を匂わせている。
 そして思い出したのである。高市早苗首相は国会議員に10回も当選しておられるが、1996年の衆議院選挙では新進党公認で出馬して当選しているのだ。新進党はご存知の通り民社党、新生党、日本新党、自由改革連合などが結集した政党であり、かの小沢一郎が牛耳っていたのだ。つまりは、高市首相は自民党ではない民主党系の政党からその政治人生をスタートしている。
 彼女は、右寄りタカ派を気取ってはいるが、なんと左寄り民主党系の支持を受けて当選し、その後見事にこれを裏切り、自民党に所属したのだ。
 こんな感想を左寄りの知人に話したところ、「政治家というヤツは当選するためにはどんな政党からでも立候補するのだよ。小池百合子の例を見てほしい。彼女は総理大臣になろうとしてなれなかったが、いくつも政党を変えたではないか」とのたまったのである。
 それはともかく、初の女性首相である高市早苗氏は、ここに来て凄まじい人気を集め始めた。あるマスコミの調査によれば、高市早苗氏を首相として支持するか、という世論調査に対し、支持者が全体の71%もいたのである。それも、若者たちが圧倒的に「サナエちゃん!サナエちゃん!」と絶叫して支持しているのだから、驚き以外の何物でもない。そしてまた、彼女のいう積極的な財政プランで日本経済を復活させる、という主張は多くの人に受け入れられたといってよいだろう。それが証拠に、日本の株価は早苗ブームでとんでもない上昇を続けている。
 とまぁ、いろいろなことを述べてきたが、彼女の言うアクティブな経済政策によって半導体産業が徹底的に支援を強化されるのは間違いないだろう。先の総理大臣である石破茂氏をも上回る半導体強化を打ち出すならば、筆者としてはこれを支持するしかないのである。
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泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。