ドイツにおける総人口に占める外国人の割合は17%に達している。これに対して、日本はたったの3%なのだ。インバウンドを快くおもてなしする日本政府および日本人のことを考えれば、これは意外な数字であるという他はない。
目に見えない外国人差別は残っているのだ。最近では、少しく改善されてきたが外国人に対してはアパート、マンションは貸せないという風潮があった。つまりは、日本人以外は信用できないというヘンな意味での大和魂がはびこっているのだ。
ちなみに、筆者は港町ヨコハマのど真ん中で生まれ育ったが、小学校の頃の1クラスの中に在日朝鮮人、在日中国人、さらにはアメリカ人とのハーフなどがクラスの15%くらいを占めていた。よく言えば、国際交流都市ヨコハマの姿とも言えるが、一方では太平洋戦争前から朝鮮人や中国人を日本に強制的に連れてきて、重労働をさせたという歴史がある。その名残が、京浜工業地帯の中核であった横浜にも残っているために外国人の多い街になった。
それはともかく、今日においても移民に関する日本国政府の無策と責任回避はひどいものがある。移民を認めるのは、特定技能に限られているからだ。要するに、人手不足の産業・分野で一定の技能をもつ外国人の受け入れはOKだというのだ。しかし、それ以外は事実上ほとんど認めないという方針なのである。結局のところ、農業、製造業、建設業の低賃金労働者として外国人を受け入れるということにとどまっている。ちなみに、技能実習生の受け入れは46万人にも達しているが、しかして低賃金なのである。
こうした状況下で、積極的に外国人を登用していく方向性をもつ人材カンパニーが増えてきた。その代表格は、大阪に本社をもつフジアルテである。同社は、創業63年を迎える人材カンパニーのパイオニアともいうべき存在であるが、グローバル人材(外国籍人材)派遣・請負のスペシャリストとして急成長を続けている。同社を率いる平尾隆志社長は、こうコメントする。
「1990年代から日本の少子高齢化に先駆けて、入管法改正に伴い、グローバル人材雇用を本格的に進めてきた。とりわけ、日系ブラジル人を多く雇用することが社業の拡大につながった」
フジアルテの場合は、会社が連帯保証人となって外国人の住居を確保してきた。グローバル人材(外国籍人材)が安心して働ける仕事環境づくりだけでなく、その家族も含め、長く日本に定着できるような生活環境づくりもサポートしてきたという。また、地方自治体と連携した多文化共生社会の実現に向けた取り組みも進めている。
少子高齢化にあえぐこの日本にあって、本格的に移民を受け入れない政策を続ける政府の姿勢は、まことにもって如何ともしがたい。毎年、100万人が減っていくという日本の人口、そしてGDPの下降を考え合わせれば、あらゆる意味で移民を加速していくのが本筋ではないか、と筆者は考えるのである。
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泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。