商業施設新聞
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No.1025

トロピカルな食巡りで名産品の普及目指す


サリョールサラ

2025/9/30

 外皮はなんとも言えない紫色で、切ってみると甘みのある黄色い果肉、そして酸味のきいた黒い種が詰まっている。パッションフルーツのことである。この甘酸っぱいトロピカルな果物の主な産地は、世界では南米、国内では鹿児島県や沖縄県がトップだが、実はこれに東京都が続く。近年、パッションフルーツを東京都八王子市の名産品にするべく、若手農業後継者などが中心となって様々な取り組みを行っている。

 八王子市では大根や茄子、ほうれん草など幅広い品目の野菜が生産されているものの、名産といわれる農産物がないとも言われていた。そこで、若手農業後継者たちが集いパッションフルーツを名産品とすべく活動を開始、2007年ごろから八王子市内でパッションフルーツの栽培を始めた。農家の1人が小笠原での農業研修でパッションフルーツと出会ったことがきっかけだという。名産品として根付くよう、市内の事業者や洋菓子店にパッションフルーツを卸し、道の駅などでキャンディやジャムなどのオリジナル商品を展開し、現在も知名度アップに努めている。

 その取り組みのひとつが、プロジェクト「めぐるめ」とのコラボレーションにより8~9月に実現・開催した「にしこやまパッションフルーツジャーニー」である。めぐるめは、慶應義塾大学商学部牛島利明研究会に設置される食をテーマにしたソーシャルプロジェクトで、都市近郊農業に着目し、八王子市をフィールドに活動。このほど、学生らがパッションフルーツの普及活動に果物の生産段階から関わり、交流のあった東京・西小山の洋菓子店「アンティエ」との協力で、地域の飲食店を巻き込んだスタンプラリーを実施した。

協力店には学生の活動の紹介コーナーも
協力店には学生の活動の紹介コーナーも
 イベントの内容は、東京都の目黒区と品川区にまたがるエリア西小山の飲食店7店で、八王子市産のパッションフルーツを使用したオリジナルメニューを期間限定で提供するというもの。購入するとスタンプをゲットでき、一定数買い回ると賞品としてアイスがもらえる。バニラアイスのパッションフルーツがけ、パッションフルーツとマンゴーのジェラートなどのスイーツから、鶏ハムのパッションフルーツソースがけ、煮穴子とズッキーニのパッションフルーツソース和え、きゅうりとパッションフルーツのカルパッチョなど、冷菜や温菜も含めた幅広いラインアップで各飲食店が思い思いのオリジナルメニューを提供した。

 スタンプラリーの目的は「飲食店と農家をつなげる」「魅力的な飲食店を多くの人に知ってもらう」の2つの側面を持つ。実際、イベントをきっかけに訪れたことのない飲食店を開拓した地元住民もいたという。パッションフルーツの認知度向上からスタートした取り組みで、飲食店には新たな人流が生まれたのだ。

 新しくオープンした商業施設やフードコートなどを見学していると、地元店の誘致や、地元食材を使うコンセプトの飲食店が目立つと感じる。今回の活動も、そういった地産地消や地元への還元といった活動と地続きで、商品の生産や、産地や飲食店の魅力をプラスにするサイクルを促進するものだ。そして、その活動の成果は少しずつ実ってきている。八王子といえばパッションフルーツ、と言われる日も近いだろうか。
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