電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第623回

中国で半導体関連の展示会が乱立!


【9月開催】装置・パーツ展の「CSEAC」とパワーデバイス展「PMICA」

2025/10/10

 中国の半導体産業の国産化が加速し、装置や材料分野の国産メーカー大手が中国市場で頭角を現すようになった。半導体製造では特にレガシー分野での国産化比率が急拡大している。このような世相を反映してなのか、1年を通じて中国各地のどこかで半導体関連の展示会が開催されている。今回は中国で開催されている半導体関連の展示会を列挙するとともに、とくに9月に開催されたばかりの2つの展示会を訪問した時の様子を紹介する。

 中国の半導体分野の展示会は、2025年3月から11月までに開催(予定含む)されるものだけでも、とりあえず17件が思いつく。記憶から漏れているものもあり得るので、実際はもっとあるかもしれないが、以下にこの17の展示会についてリストにまとめておくので、よかったら参考にしてほしい。

 日本でも開催されている世界的に有名な展示会は、「SEMICON」と「NEPCON」だろう。中国では「SEMICON」は3月、「NEPCON」は4月と10月に開催されている。中国政府系の主催で以前から開催されている「IC China」もそれなりに有名なのだが、最近は江蘇省無錫市(展示会名はCSEAC、9月開催)と広東省深セン市(同SEMI bay、10月開催)で開催される展示会も知名度を上げている。


■中国の国産装置・パーツが勢揃いの「CSEAC」展示会

 「SEMICON China」が3月に開催する国際的な装置・材料の展示会という位置づけであるのに対し、「CSEAC」はその半年後に開催される中国の国産装置とパーツ、および材料がズラリと集まる展示会だ。「装置・パーツなどの展示会としては中国で2番目の開催規模になる」(中国の半導体装置メーカーの営業マン)。

 「CSEAC」という名称の呼び方は、展示会主催会社のスタッフは「シー・エス・イー・エー・シー」とアルファベット読みしていたが、私はこのアルファベットの順番をよく忘れてしまって、「シー・シー・シー」と読んでいる。半導体業界のある日本企業駐在員は「シー・セック」と読んでいた。この呼び方もありだが、「CSEC」と書き間違える心配があって、私は「シー・シー・シー」と読んでいるが、独自の呼び方なので他では通じないかもしれない。そのせいもあって、日本人の業界関係者は「無錫の装置展示会」と呼ぶことが多いように感じる。

NAURAは昨年同様に会場入って一番手前に出展していた
NAURAは昨年同様に会場入って一番手前に出展していた
 CSEACの25年の開催規模は、展示面積が6万m²、出展企業は約1130社、来場者は約13万人(展示会の見学者は105万人、出展関係者は2.5万人弱)だった。セミコン・チャイナの25年の開催実績(出展企業数1400社、展示ブース面積11万m²、来場者延べ18万人)との単純比較で、CSEACの出展企業数はセミコンチャイナの約80%、来場者は約70%、展示面積は55%という規模だった。セミコンチャイナよりは展示総面積は小さいが、来場者数は面積比ではかなり多く、その分さらに活気を感じた。

■NAURAや新凱莱技術などが出展

 中国企業は、株式上場している大手装置企業ではノーラ(NAURA、北方華創科技)やAMEC(中微半導体設備)、ACMリサーチ(盛美半導体)、パイオテック、キングセミ(芯源微電子設備)などが出展した。中国の装置大手ではHHQK(華海清科、天津市、CMP装置)だけが出展していなかった。露光装置のSMEE(上海微電子装備)もブースがなかったが、グループ子会社に分離したAMLESが出展していた。AMLESは後工程用の露光装置事業を分離して今年新たに設立された企業だ(SMEE本体はこれまでどおり、前工程用の露光装置事業を継続している)。新興企業のシリコンキャリア(SiCARRIER、新凱莱技術、広東省深セン市)も出展していた。

新興装置メーカーの「VF SEMI(微釜半導体設備)」は縦型炉を生産
新興装置メーカーの「VF SEMI(微釜半導体設備)」は縦型炉を生産
 展示館内を回っていて「VF SEMI(微釜半導体設備)」という新進の縦型炉メーカーを発見した。会社紹介のロードマップは22年から記載が始まっていた。25年は「VF 320」や「VF350」という300mm対応の縦型炉をリリースした。「VF SEMIは、もと華虹半導体にいた技術者らが創業した会社とのことだ」(同社のブーススタッフ)。

■パーツ企業は全カテゴリーを網羅

 装置以外にも「パーツ企業の出展は350社、材料企業は70社が出展した」(展示会主催会社)。精密金属パーツや石英、セラミック、シリコン、SiCなどの装置部品や治具の他にも、静電チャックや精密バルブ、排ガスバルブ、圧力部品、電源、カスケードTC(ヒーター内の温度を計測)、センサー類、Oリングなど多種多様な国産パーツが紹介されていた。金属や石英、セラミックなどの加工品は、もはや中国企業でもかなりのものを生産できるようになった。もう少し複雑なゲートバルブなどの展示企業も増えていた。静電チャックの展示もあちこちで見かけたが、静電チャックのリファブ企業が多く、本当の意味で量産レベルの製品を供給できている企業はほぼいないようだった。

 日本企業の出展が大幅に増えていたのも、今年の特徴だ。展示会場内で見かけた日本企業も以下にリスト化しておくのでご参考にどうぞ。ただし、これも列挙漏れがあるかもしれないのでご注意ください。


 CSEACの26年開催は、時期が9月から6月に変更される(26年6月10~12日の開催予定)。開催場所は無錫市のまま。これまでより開催が3カ月早くなるのでご注意ください。

■中国のパワーデバイス企業が集結する「PCIM」展示会

 世界の主要パワーエレクトロニクス企業が出展する「PCIM」が9月24~26日、上海市で開催された。新エネルギー車(NEV)の販売拡大により、中国のパワー半導体市場は伸び続けている。同展示会には海外の電機・半導体メーカーに加えて、中国企業のIGBTやMOSFETなどのSiパワー半導体とSiCパワー半導体が紹介された。この展示会も過去何年も見学しているが、開催回を重ねるごとに中国企業の出展比率が高まっているように感じる。

 ただし、過剰キャパによるパワー半導体市場の不安定さからか、中国企業でも若干の出展企業の減少が認められた。中国のパワー半導体のIDM企業のCRマイクロ(華潤半導体)やCRRC(中車集団)、ヤンジエ・セミコン(揚潔科技)などが今年も出展していたが、シランマイクロ(士蘭微電子)は出展していなかった。また、パワー半導体のファンドリー製造で実績のあるUNT(芯聯集成電路制造)やGTA(積塔半導体)の出展もなくなっていた。

パワー半導体の国産IDMのヤンジエ・セミコン(揚潔半導体)
パワー半導体の国産IDMのヤンジエ・セミコン(揚潔半導体)
 中国企業で出展が多かったのは、モジュール組立企業だった。これらの企業の多くはシリコン(Si)半導体やシリコンカーバイド(SiC)の半導体の設計と組立・検査(後工程)、モジュール組立を行っている。前工程製造は中国ファンドリーに委託していて、その委託先の多くが前述のUNTやGTA、華虹半導体などとなっている。自動車メーカーが自ら子会社を通じてモジュール組み立てしている場合も多い。

■SiとSiCともに前工程工場の投資は停滞ぎみ

 会場内で前工程製造を行っている企業の数社にヒアリングしたが、Siパワー半導体の生産ラインを拡張する動きはほとんどなく、SiCパワー半導体で設備導入する企業もだいぶ減少していた。SiCデバイスでは、中国企業は海外大手に遅れて200mm(8インチ)製造を始める段階にあり、150mm(6インチ)工場までしかない一部の企業が200mm対応の装置導入を予定していた。

 ただし、「CRマイクロはまだ200mmのSiC半導体工場の投資計画は具体化していない」(同社のブーススタッフ)という。ヤンジエ・セミコンは江蘇省揚州市で200mmのSiC生産ラインの投資を計画していた。両社とも市況を見ながら投資時期を詰めていくという。

 SiCパワー半導体企業が足元で工場投資をためらっているのは、24年から過剰設備と価格下落が顕著となり、今投資する旨味が見えないからだ。SiCパワー半導体の価格は23年から26年の3年間で7~8割下がるという異常な事態に発展している。3年前にこのような暴落を予見していた企業はなく、当時はYoleや富士経済などの市場予測レポートで「SiCデバイス市場は22年の1707億円が35年には5.3兆円の市場規模へと30倍以上も拡大する」と解説していた。中国ではこれに加えて、EVシフトやレガシー半導体の国産化の加速によりSiCウエハーやデバイス工場の投資が雨後の筍のように一気に急増した。今はこの反動が生じており、過剰能力を解消するにはまだ時間がかかりそうだ。

 ただし、中国のパワー半導体の製造はかなりの規模に育っていて、日本企業も装置や部材の販売で中国市場を無視できなくなった。また、世界最大のEV生産国であり、新エネルギー導入国でもある中国は、パワー半導体の消費量も桁違いに多い。パワー半導体の過剰設備がもう少しで解消されれば、やはり装置や材料企業にとって一番伸びしろがある市場だ。

 なお、26年のPCIM展の開催日程はまだ発表されていない(25年10月初め時点)。

SwissSEMI(賽晶亜太半導体)は三安半導体に前工程製造を委託している
SwissSEMI(賽晶亜太半導体)は三安半導体に前工程製造を委託している
東芝は基本半導体にチップ売りし、基本半導体はパッケージとモジュール化している
東芝は基本半導体にチップ売りし、基本半導体はパッケージとモジュール化している










 今回は、ちょうど9月に開催されたばかりの装置・パーツの展示会の「CSEAC」とパワー半導体の展示会の「PCIM」の訪問記となった。どちらも同分野の国産化の進展を肌で感じる貴重な体験となった。今年は10月の深セン開催のChina Bay(装置などの展示会)と11月の北京開催のIC China(半導体全般)の展示会が残されている。


電子デバイス産業新聞 上海支局長 黒政典善

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