福島市役所主催による福島市企業立地セミナーが、9月29日に東京都内のホテルで開催された。福島市長の木幡浩氏が挨拶するとともに市の概要などを紹介し、「若者を定着させるためにも産業政策は重要」と語り、広く立地を呼びかけた。
福島市は大震災・原発事故の被災地県都として、福島の復興を牽引し、世界へ全国へ、発信力を有する都市を目指し「世界にエールを送るまち」を掲げ、防災先進都市など大震災の教訓を生かしたレガシーを展開している。
福島駅前では東口の再開発が進められており、29年の竣工・開業を予定している。民間エリアでは、オフィスのほか、シェアラウンジやカフェ、フードホールなども設置。公共エリアでは、最大1500人収容のフレキシブル・ホールや大小様々な会議室を設置する。また、西口でも再開発が検討されており、「西口にも拠点ゾーンを形成していきたい」(木幡市長)としている。
福島市の特徴として、抜群の交通利便性があり、南東北のクロスポイントに位置していることが挙げられる。東京駅まで新幹線で最短78分、高速道路では浦和ICまで約170分の距離で、福島市から約50分の距離に位置する仙台空港では国内線9路線、国際線6路線が就航している。
また、ビジネス環境も優れており、福島県内外の各先端技術研究施設との連携にも抜群の立地となっている。多種多様な企業が立地しており、市内各地にサプライチェーンが広がっている。
人材を育む環境も整備されている。市内には大学・短期大学が5校あり、周辺地域の大学とも連携が取りやすい環境にある。東北・北関東エリアで随一の工業高校生徒数を誇り、ワーカーを採用しやすい環境にある。離職率も低くなっており、粘り強い良質な人材の確保が可能としている。
都市機能を街なかへ誘導し、民間投資を呼び込む「まちなか立地集積支援事業」では、商業施設だけでなく、ベンチャー企業の集積も目指している。第1号認定となった福島日産グループの複合施設では、多目的スペースやレンタルオフィスなども設置する。
公民連携のワンストップ窓口「公民こねくと」を設置。「罹災証明迅速化ソリューション」を富士フイルムシステムサービス(株)と共同研究を行っており、共同で特許を出願。製品化して8月29日から自治体向けの販売を開始している。また、市内に研究所を開設している(株)菊池製作所と福島ビジネス創成フォーラムを開催した。
農道空港のふくしまスカイパークは、スカイスペースチャレンジフィールドとして、航空宇宙産業の拠点としていく方針。燃焼テスト、飛行テスト、走行テスト、離着陸訓練などの実証実験などの場として活用していく。
福島市が分譲を進めている福島おおざそうインター工業団地は第1期分譲区画に6社が立地済み。第2期区画では全8区画中1区画はすでの募集を締め切っており、残りの7区画の分譲予約を11月21日まで受け付けている。
福島市では、特定集積産業である、医療・健康、ロボット・航空、農産加工の製造業を最優先に、製造業の誘致を優先的に進めており、物流業はその次の位置づけとなっているが、木幡市長は「物流関係の方でも、要望があれば話を聞かせていただきたい。開発にみあう案件があれば新たな場所を用意することも検討したい」と語った。
続いてのトークセッションでは、「“地方だからこそ”の選択―企業立地目線で見た福島市の強み―」のテーマで、ハウス食品グループ東北工場(株)代表取締役社長の橋詰弘基氏と経済産業省東北経済産業局地域経済部長の古谷野義之氏が登壇した。
ハウス食品グループ東北工場は24年7月操業。25年6月にサンヨー缶詰(株)からレトルト食品事業を継承し、同社から継承した福島市内の工場で生産を行っている。現在、福島市内の佐倉西工業団地内に新工場の建設を進めており、26年4月の操業開始を予定している。金属加工を手がけていた工場を取得しており、食品製造には向かないことから、新たに建築面積6000m²の製造棟を建設して対応する。
新工場を福島市内に建設することにした理由について、橋詰氏は「グループ会社の工場には余地があり、そこに建設することもできたが、会社分割で事業承継しており、人に技術が紐づいている。これを承継していきたいので福島市内に決定した」としており、そのほか食品製造には多くの水が必要で良質な水が確保できること、助成金・補助金などの支援が厚いことを挙げた。
将来について橋詰氏は「地域の材料を調達して活用することを検討したい。工場で出る残渣を近隣の農場などで活用してもらい、そこからまた食品を調達していければいいかなと考えている」と語った。
古谷野氏は東北経済産業局が、地域内外の経済情勢や政策の方向性を踏まえ、3月にまとめた中長期的に取り組み政策の柱と25年度の重点施策を説明。東北へ立地することへの経済支援策などを紹介した。