電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第628回

中国市場が牽引する新車販売


中国は2桁の高成長、EU・米国は1桁成長で推移

2025/11/14

 中国自動車工業協会(CAAM)によると、2025年9月の新車販売台数は前年同月比15%増の322.6万台(乗用車が同13%増の285.9万台、商用車が同30%増の36.8万台)となった。このうち、新エネルギー車(NEV)は同25%増の160.4万台となり、過去最高を更新した。NEV販売台数の内訳をみると、バッテリー式電気自動車(BEV)が同36%増の105.8万台と、13カ月連続で2桁台の伸び率を記録。プラグインハイブリッド車(PHEV)は同7%増の54.6万台と1桁成長にとどまっている。

 なお、25年1~9月の累計販売台数は前年同期比13%増の2436.3万台(乗用車が同14%増の2124.6万台、商用車が同8%増の311.7万台)。うち、NEVは同35%増の1122.8万台で、新車販売台数全体に占める割合は46.1%と4割を超えた。

 米国の25年7~9月の新車販売台数(暫定値)は、前年同期比6%増の415.5万台となった(モーターインテリジェンス調べ)。9月30日に発動した電気自動車(EV)税額控除撤廃前の駆け込み需要などが寄与したもよう。また、当初懸念されていた一連の追加関税による大幅な価格上昇がみられなかったことも市場を下支えした。実際、1台あたりの平均車両販売価格は前年同期比2.0%増にとどまっている(コックスオートモーティブ調べ)。7~9月の新車販売台数を部門別にみると、乗用車は前年同期比9%減の71.3万台、小型トラックが同10%増の344.1万。小型トラックの中でも中型SUVが好調だった。

 欧州自動車工業会(ACEA)によると、欧州連合(EU)における25年9月の新車登録台数は、新モデルの投入が牽引役となり、前年同月比10%増の88.9万台と2桁成長を記録した。なお、1~9月累計の登録台数は、前年同期比0.9%増の805.8万台とほぼ横ばいで推移している。1~9月累計の登録台数における車種別の構成比率はHEVが34.7%、内燃機関車が27.7%、BEVが16.1%、ディーゼル車が9.3%、PHEVが9%、その他が3.2%。なお、BEVの構成比率は、主要国での補助金の打ち切りなどもあり、前年から3ポイントの増加にとどまっている。

日系自動車メーカーの動向

■トヨタ自動車
 25年4~9月の連結販売台数は、前年同期比5%増の478.3万台となった。アジア地域でマイナス成長となったものの、日本が同3%増の97万台、欧州が同5%増の57.3万台、その他地域も同5%増の85.4万台と堅調に推移するなか、関税影響で市況の落ち込みが懸念された北米は同14%増の153.3万台と2桁の高成長を果たした。

 なお、トヨタ・レクサスの販売台数は同5%増の526.7万台。このうちHEVを含む電動車が同11%増の247.1万台となり、電動車比率は前年から2.5ポイント増の46.9%にまで拡大している。

ソフトウエアづくりプラットフォーム「Arene」を搭載した「RAV4 CORE(プロトタイプ)」を25年度内に日本市場に投入
ソフトウエアづくりプラットフォーム「Arene」を搭載した「RAV4 CORE(プロトタイプ)」を25年度内に日本市場に投入
 CFOの近健太氏は、「長年積み重ねてきた高い商品力を背景に、世界中のお客様から強い需要をいただいている。Japan Mobility Show 2025においては、トヨタグループの5ブランドを改めて明確に、ブランドの方向性を明示した。一人ひとりに応える多様な商品で、お客様の選択肢をさらに拡大していく」と語った。

■ホンダ
 25年第2四半期(6カ月間累計)の四輪車販売台数は、北米で前年同期比2万台増、その他地域で0.5万台増とプラス成長で推移したものの、日本、欧州、アジア(中国は同6.5万台減)で減少したことを受け、同6%減の168万台となった。

 なお、同社では主にアジアでの減少(中国は前年から9万台減少)に加え、ネクスペリアの半導体供給不足による減少を北米地域に11万台反映し、25年度通期の販売台数を前回見通しの362万台から2.8万台引き下げ、334万台に下方修正している。

 「立て直しが必要なアジアにおいては、今年度ICEやHEVでの収益が当初の見込みに比べて大きく減少する見通しで、抜本的な対応が不可欠。電動化が遅れている状況を受け、台数、モデル数、今後の投資計画も軌道修正しながら、ICE、HEVでの収益力を高めていく」と貝原典也副社長は語った。

■日産自動車
 25年度上期(4~9月)のグローバル販売台数は、前年同期比7%減の148.0万台となった。地域別に見ると、北米で同2%増の63.4万台とプラス成長で推移したものの、中国が同18%減の27.9万台、日本が同17%減の18.6万台、欧州が同8%減の14.7万台、その他地域も同8%減の23.4万台と軒並みマイナス成長としている。

 同社CFOのジェレミー・パパン氏は、「7~9月期の中国を除くグローバル販売台数は、前年から4%減少したものの4~6月期比では改善。中国については6月以降、15カ月ぶりに前年を上回るなど、好転の兆しが見えてきている。直近の5カ月間は好調な新型EVセダンのN7が販売を支えている」と語った。なお、欧州およびその他市場の販売は、モデルイヤーの切り替えや競争の激化で一時的に減少しているが、今後の新型車の投入などで、拡販が見込まれるとしている。

■スズキ
 25年1~9月のグローバル販売台数は、日本やパキスタン、アフリカなどで増加したものの、インドや欧州で減少したことを受け、前年同期比3%減の152.3万台となった。

 日本市場の販売実績は、同4%増の35.5万台。内訳は軽自動車が同2%減の27.9万台とマイナス成長で推移したものの、軽自動車のシェアは34.6%でトップシェアを堅持している。また、登録車の販売台数は同28%増の7.6万台の2桁成長。9月には同社のBEV世界戦略車第1弾となる「eビターラ」を公開しており、26年1月16日からの市場投入に大きな期待が寄せられている。

スズキのBEV世界戦略車第1弾「eビターラ」
スズキのBEV世界戦略車第1弾「eビターラ」
 一方、インドにおける卸販売台数は、GST(物品・サービス税)改定の発表による買い控えなどにより、同6%減の81.2万台にとどまった。9月22日からの新税率の施行や、10月のお祭り商戦(ディワリ)によって市況は回復していくものと期待されている。スズキでは9月に新型SUV「ビクトリス」を発表しており、今後の拡販が期待される。

■マツダ
 25年4~9月期の生産台数は、米国における不透明な経済情勢と関税環境を勘案して台数を抑えたことから、前年同期比8%減の55.5万台となった。また、グローバル販売台数は同3%減の60.9万台のマイナス成長となった。

 特に欧州では、今後「CX-5」の新モデルを本格投入する計画だが、現行のCX-5ならびにMAZDA2のICE(内燃機関)モデルが販売終了となったことを受け、同17%減の7.4万台と大きく落ち込んだ。また、オーストラリアでは競争の激化により小型車や低価格帯セグメントで販売が弱含み、同9%減の4.5万台となった。一方で、日本および北米では販売が増加したことは好材料としている。

■三菱自動車
 25年4~9月期の小売販売台数は、前年同期比2.4万台減の38.4万台となった。主要地域別に見ると、日本ではモデル刷新をテコにさらなるブランド価値向上、販売シェアの拡大に注力したことから、同5000台増の5.8万台とプラス成長で推移。北米は同9000台減の8万台にとどまった。関税影響による供給抑制があるものの、関税率の低下、対応効果などによる影響が徐々に縮小する見通し。欧州は同2000台減の2.3万台となった。競争が激化する中、主力モデルの拡販と新モデルの着実な立ち上げにより挽回を図っていく構えだ。


電子デバイス産業新聞 編集部 記者 清水 聡

サイト内検索