電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第630回

注目集まる光電融合


国内外で開発が加速

2025/11/28

 10月21日に高市内閣が発足した。所信表明演説のなかで、エネルギー安全保障として「脱炭素電源を最大限活用するとともに、光電融合技術などによる徹底した省エネや燃料転換を進めます」と述べた。高市首相も注目する光電融合技術について、主要各社の現在の取り組みをまとめる。

光電融合技術の国内における取り組み

 国内では、産業技術総合研究所(産総研)が2025年4月に「光電融合研究センター」を発足した。同センターを中心に、最先端フォトニクス研究を推進し、エレクトロニクス技術との連携により光電融合技術の研究開発を進めていく方針。同センターでは、通信の実現のあと、演算までの実現まで達成できるのは2050~60年になると想定している。

 また、産総研は光電融合に関する技術開発や社会実装に関する議論を行うために「次世代グリーンデータセンター用デバイス・システムに関する協議会」(GDC協議会)を立ち上げており、国内で先行するNTT(日本電信電話)がプロジェクトとして推進している、光電融合技術を活用した次世代通信基盤の「IWON」(Innovative Optical and Wireless Network)との連携を強化している。

 NTTは、光電融合技術を搭載したデバイスの企画、開発、製造、販売を一貫して手がける子会社、NTTイノベーティブデバイスを23年に設立。光電融合デバイスの用途は、通信領域(大容量、長距離伝送)だけでなく、コンピューティング領域(大容量、近距離伝送)やクルマ、PC、スマートフォンなどのコンシューマー領域まで拡大することを目指している。現在までに、光と電気の変換を行う光インターフェースの機能を小型化した通信用モジュール「COSA」を第1世代として実用化したほか、COSAとデジタル信号処理を行うDSP(Digital Signal Processor)を一体化した光・電子パッケージ「CoPKG」を第2世代の技術として開発した。

NTTパビリオン
NTTパビリオン
 大阪・関西万博のNTTパビリオンでは、初の光電融合デバイスをコンピュータに応用した。IWONを活用して実施した音楽ユニット「perfume」のライブ映像の追体験や、IOWN光コンピューティングとNTT独自の次世代メディア処理AI「MediaGnosis」を活用したパビリオンの外壁を覆う膜の制御などを披露した。

 IOWN向けでは、(株)白山は光電融合デバイス向けコネクターの開発を進めている。高温に長時間対応できる点などが特徴だ。

 このほかにも国内では様々な企業が光電融合技術に関する開発を進めている。例えば古河電気工業(株)は、CPO(Co-Packaged Optics)に適した小型12心光コネクターを開発した。従来の多心光コネクターに比べて接続部の面積が6分の1になるなど大幅に小型化する。光電融合デバイスへの実装時に必要となる260℃のリフローに耐えられるなどの特徴も持つ。そのほかCPO向け外部電源の開発にも成功している。

 また、住友電気工業が光接続パネルやコネクター、ケーブルなど光接続技術の開発を進めているほか、三菱電機はさらなる高速伝送を目指した光デバイスを開発している。そのほかにも、ウシオ電機(株)は、光電融合技術に対応した干渉露光装置を開発の開発に成功した。今後は各社の独自技術の搭載や融合などが課題となってくるかもしれない。

 技術開発に加えて投資も行われており、古河電気工業(株)は、AIデータセンター向けで需要が急増している光通信用のDFBレーザーダイオードチップの生産能力増強を決定。また、JX金属は光通信用半導体に用いるInP基板について追加の増産投資を行うとしており、25年度比で約5割増の生産体制を磯原工場(茨城県北茨城市)に整え、27年度から稼働を開始する予定だ。

海外では製品化が先行

Quantum-X シリコン フォトニクス ネットワークスイッチ
Quantum-X シリコン フォトニクス ネットワークスイッチ
 海外企業は製品化が先行しており、製品の最終形に近い、デバイスの活用を中心とした企業が多い印象を受ける。特に最終製品として製品化が進むのは、ブロードコムとエヌビディアだ。ブロードコムは、24年3月にCPOイーサネットスイッチ「Bailly」を顧客に提供したことを発表している。また、エヌビディアはCPO技術を搭載したシリコンフォトニクスネットワークスイッチ「Quantum-X」と「Spectrum-X」を発表しており、製品化を控えている。

 そのほか光電融合の技術開発では、スタートアップ企業にも注目だ。Ayar Labsは、15年に設立された企業で、シリコンフォトニクスを活用し、パッケージ基板上でデバイス同士を光接続する光I/O技術を開発しており、出資者にはAMD、アプライドマテリアルズ、グローバルファウンドリーズ、インテル、エヌビディアなど半導体関連の大手企業が名を連ねる。

産総研の光電融合パッケージ技術

 光学部品と半導体チップを同じパッケージ内に組み込み、電子の代わりに光をデータ送受信に使うことで、データ転送速度の向上と、電力消費の削減に対応するCPO技術の開発が進む。CPOでは、光学部品と半導体チップを同じパッケージ内に組み込み、電子の代わりに、光をデータ送受信に使うことで低損失、高密度を実現する。

 そして産総研は、光機能を集積したAOP(Active Optical Package)基板の開発に取り組んでいる。GPU周辺に光エンジンを配置するCPOとは異なり、AOPは光エンジンを基板に埋め込んだもので、光ファイバーと電子部品の融合技術となる。xPUとPICの間を短距離で配線することで、電力効率の向上や低消費電力化が期待できる。また、AOP基板によりチップレットとPICを対面で積み重ねることができるため高密度電気インターフェースを可能にする。

 従来のアセンブリープロセスを使用してCPOを実現できる。また、光RDLによりファイバーを直接接続することなく、PIC用の高密度I/Oが可能となるほか、xPUとPICの間の高密度電気I/Oも可能にする。

 主要技術はPICの埋め込み、ポリマー導波路(100μm未満のポリマー導波路ピッチを実証済み)、マイクロミラー結合(高密度光I/O向けに100μm未満のマイクロミラーピッチを実証済み)、光コネクターのアセンブリーとなっている。特に光結合においてのベンチマークとの比較では、効率、小型化、垂直距離波長帯域幅、生産性で優位性を示した。

 AOP基板において将来期待できる点は、高度なチップレット相互接続と互換性のあるエッジ帯域幅密度(AI、分散コンピューティング、スイッチンアプリケーション)向けでの使用やシリアライザーの追加コストの削減など。現在は評価や試験を進めているほか、高密度のI/OデバイスやORDL用高密度ポリマー導波路の研究も進めている。


電子デバイス産業新聞 編集部 記者 日下千穂

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