(有)天辺ダッシュカンパニー(茨城県つくば市)は、ラーメン店事業において「活龍」をメーンブランドとして茨城県内で16店を展開し、2026年10月期には「真壁屋」ブランドで東京都内に初出店する計画だ。また、4カ所の自社工場を活用して、麺・スープなどの製造・卸売を行う製造事業も手がけており、製造事業は海外展開も視野に入れる。今後の店舗展開や事業戦略などについて、同社代表取締役の芝山健一氏に聞いた。
―― 貴社の紹介から。
芝山 05年の創業で、今年で創業20年を迎えた。06年に1号店の「龍神麺」を茨城県真壁町(現桜川市)にオープン、08年にメーンブランドである活龍の1号店をつくば市に開業した。活龍は当時、首都圏で流行していた濃厚な魚介豚骨つけ麺が看板商品で、いち早く茨城県で展開した。これがヒットし、活龍の成功は当社がラーメン店として飛躍したきっかけだと言える。
―― 現在の店舗数は。
芝山 全6ブランドを有し、店舗数は直営8店、のれん分け8店で、グループ計16店を有する。基本的には路面店で、道の駅のフードコートにも出店している。店舗は活龍を中心に展開を進めているものの、海老・蟹に特化した「活龍 甲殻類専門店 甲殻堂」、豚を一切使わず鶏のみを使用した「活龍 鶏そば専門店 とりだけ」など、様々な種類・味のブランドがある。
―― 製造事業について。
芝山 ラーメン店で最も時間と労力がかかるのがスープの仕込み。実際、活龍でもスープの仕込みが課題だったため、11年ごろからセントラルキッチンを導入し、そこで麺・スープを製造している。ここから派生し、自社工場で製造した麺・スープの製造・卸売を行う製造事業を14年にスタートした。
セントラルキッチンはすべて機械化しており、当社分と製造事業用の麺・スープを作る。セントラルキッチンはスープ工場が2拠点、製麺工場と野菜加工などを行う工場が各1拠点の計4拠点あり、この4拠点で北海道から沖縄県まで取引のある約900店分を賄う。
―― 足元の状況は。
芝山 売り上げは24年10月期が14億6000万円、25年10月期が15億4000万円だ。今、業績を牽引するのは製造事業で、製造事業の売り上げ構成は25年10月期で約7割、来期の26年10月期は約8割となる見込み。製造事業の伸長は想定どおりで、特に時間と労力を要する豚骨スープはニーズが高い。スープは取引先の仕様にカスタマイズするなどして約50種類、麺は200種類以上を扱い、ラーメン一杯にかかるコストなども計算できるよう、料金はすべて公開している。
―― 今後のラーメン店事業の店舗展開について。
芝山 出店数は年間2~3店程度だろう。また、これまで活龍ブランドで店舗展開を進めてきたが、26年10月期から直営では活龍の出店をいったんストップし、既存ブランドで2店を有する真壁屋の出店を強化する。真壁屋は500~600円台が中心のリーズナブルなラーメン店で、当社を育ててくれた大学生などへの「恩返しブランド」と位置づけている。
真壁屋で26年10月期から東京都内に進出する計画で、新橋エリアなどを検討しており、茨城県外初出店をこの真壁屋で果たす。都内でも500~600円台の価格を維持し、ラーメン専門店ならではのクオリティの高い商品を提供する。
―― 製造事業については。
芝山 元々ラーメン店事業をやりながら、製造事業がうまく軌道に乗れば当社のメーン事業になると考え、思い切った投資を行ったが、踏み切って良かった。全国のお客様と取引ができるので、マーケットも全国に広がった。事業のスピードとしては店舗展開よりも製造事業に集中的な投資をして加速させたほうが、会社として大きくなるだろうということで今は製造事業を推進しており、進行中の5カ年計画では製造事業への投資に重きを置いていく。
―― 目指す姿は。
芝山 ラーメンに関する総合商社になりたい。ラーメン店事業、製造事業をやりながら、これら既存事業を生かし、取引先に我々が20年で培った店舗運営のアドバイスというのも付加価値として提供する。
加えて、24年の日本のラーメンのマーケットは8000億円規模だが、約10年後、35年の世界のラーメンのマーケットは18兆円規模になると言われ、今まさに世界中でラーメンが普及している。日本のラーメン店も世界中に広がる中、スープの仕込みはやはり課題となっている背景から、当社は製造事業を海外に展開していきたい。
これを見据え、25年5月にインドネシアの会社を買収した。ここで麺・スープの製造工場をスタートし、これを皮切りにインドネシアのジャカルタ、次いで東南アジア各国にビジネスを広げ、ゆくゆくはアメリカなどでもできればと考えている。日本のラーメン店が海外進出する事例が増えれば、そこにビジネスチャンスが生まれる。日本でやっていることをそのまま海外に持っていき、ラーメン店をサポートしていく。
(聞き手・副編集長 若山智令)
商業施設新聞2622号(2025年11月18日)(8面)
経営者の目線 外食インタビュー