創業70年を超える米卸会社の阪神米穀(株)(兵庫県西宮市)は、兵庫県西宮市におむすび専門店「MUSU」をオープンした。世の中におむすび店は数多くあるが、同ブランドの特徴は大学とコラボして学生が商品企画、マーケティングなどを学びつつ、運営のサポートをしてもらっている点。将来的には、商業施設への出店も視野に5店まで拡大したいという。現況や今後の展開を、同社代表取締役社長の田中隆氏に話を聞いた。
―― 貴社の概要から。
田中 当社は創業75年目となる米卸の会社で、大手の回転寿司や牛丼チェーンから地方量販店まで、売り上げ全体の60%を業務用で取引させてもらっている。創業当初から約30年前までは食糧管理法という法律があり、販売可能なエリアが制限されていたのだが、1995年に発生した阪神淡路大震災で販売可能なエリアがほぼ壊滅状態になってしまった。一方、同時期に食糧管理法が廃止されたので、大阪方面にも販路を拡大できるようになり、取引先も増えて今も商売ができている。
田中 おむすび屋自体は、2018年ごろから構想を持っていた。当時は米が高騰する現在の状況と違い、米が余っている状態で、消費量が伸びないとどうにもならないなと考えていた。その中で取引先におむすび屋がなかったので競合しないと思い、チャレンジすることを決意した。しかし具体的に動き出した20年ごろはコロナ禍であったことに加え、様々なおむすび屋がオープンしており、後発になる中でビジネスを成立させるのが厳しい状況になっていた。その中で、銀行から近所にある武庫川女子大学とコラボしてみてはどうかという話があった。具体的には商品のアイデアからアルバイトまで学生にお願いし、マーケティングや原価計算を現場で学んでもらいながら、赤字の店舗を黒字に切り替えるというものだ。社宅を改装し7月22日にオープンした「MUSU」はそのコラボ案を引き受けて開業した店舗で、1号店というより、研究所だと私は認識している。
―― 運営した実感は。
田中 当初、客層は女子大生が運営している店舗なので、10~30代の若者女性がボリュームゾーンと想定していた。しかし運営してみると、ファミリーや高齢のお客様の利用が多くなっており、健康志向のニーズに加え、少し値段が高くても店舗で握ったおむすびを買い求めてくれていることを実感している。
メニューは、鮭や梅などの定番8種類に加え、武庫川女子大学の学生が開発した創作おにぎり8種類を販売している。創作おにぎりは、1カ月を目安に入れ替えるなど学生たちとともに試行錯誤している。
営業時間は、当初18時までとしていたが、18時前後に訪れるお客様が多いことが分かり、現在は19時30分まで営業時間を延ばしている。
―― 今後の展開は。
田中 新店はある程度利益が出るビジネスモデルを確立できたと思った時に、出店する。26年10月には新規出店に関する本格的な検討に着手する方針だ。将来的には商業施設も視野に入れ、5店体制まで拡大したい。
人材面においては、MUSUにアルバイトで入っている21~22歳ぐらいの女性を当社の社員として雇っており、店長や副店長の役割で働いてもらっている。MUSUでの人材確保の取り組みを通じて、米卸しの事業にも興味関心を持ってもらえるとありがたい。
米の消費量を長期的に考えれば、減っていくと私は考えている。そのために、おむすび専門店以外にも米粉を使用したパン屋や米粉の麺を使ったラーメン店の構想もある。人材や設備、供給の面で課題があり具体化しているわけではないが、米粉自体は26年に、当社の工場に精製する機械を導入し、チャレンジできればと考えている。
(聞き手・北田啓貴記者)
商業施設新聞2627号(2025年12月23日)(5面)