電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第655回

Prox Industries(株) CRO 野田雅貴氏


フィジカルAIで高度な技術保有
先端技術で日本の基幹産業を支援

2025/12/5

Prox Industries(株) CRO 野田雅貴氏
 Prox Industries(株)(プロックスインダストリーズ、東京都文京区)は、AIスタートアップ企業として2024年に設立された。次世代ロボティクスに不可欠なフィジカルAIなどに関する高い技術力を有し、大手企業を中心に製造現場へのAI・ロボティクス技術の実装ならびに研究支援などを行っている。今回、CROの野田雅貴氏に話を伺った。

―― 貴社の事業概要から伺います。
 野田 24年6月に設立したスタートアップ企業で、アカデミア発のAI・ロボティクスベンダーとして、製造現場への先端技術の実装を支援している。AIの技術が日々進化するなか、日本の重要な基幹産業である製造業にも、AIをはじめとした先端技術の活用が求められている。そうしたなか当社には、アカデミアでの研究経験を持つAIエンジニアが多数在籍しており、AI分野で多くの業績を持つ東京大学の松尾豊教授も技術顧問に就任している。これにより、高度な専門知見を有する体制を構築している。また、製造業の事業開発やプロダクト開発の経験を有するメンバーもおり、単なる技術導入だけではなく、お客様と密にコミュニケーションをとりながら現場の課題に向き合い、画像認識、予知保全、数理最適化、シミュレーションなど最先端技術を駆使したソリューションを、要件定義、開発、技術検証、実装、運用、保守まで伴走しながら手がけ、先端研究と現場への実装をつなぐ橋渡し役として製造業を変革する技術支援を行っている。


―― 直近の取り組みについて。
社内Labで動く双碗型の高知能ロボット

 野田 フィジカルAI(身体を持つロボットが実世界で認識、行動、相互作業を通じて学習および適応し、様々な環境で自律的に動くための基盤技術)の研究開発を支援するプロジェクトが増えている。そのなかで、四足歩行型ロボットやヒューマノイドロボットなど次世代ロボットの社会実装に向けた研究支援などを行っている。今後は、工場内の組立、搬送、検査などの複雑なタスクを対象に、産業用ロボットの知能化などVLA(視覚言語行動モデル)を活用した研究開発の支援にも取り組んでいく予定である。

―― 引き合いはいかがですか。
 野田 AI技術が急速に進化するなか、「製造現場にもAIを取り入れる必要がある」という危機感を抱く企業が非常に増えている。
 一方で、製造現場への適用という視点にとどまらず、研究分野ではロボティクス向けの基盤モデル(通称「ロボット基盤モデル」)が技術的ブレークスルーを生み出している。この潮流を背景に、我々は急成長しているロボット産業における市場獲得を目指す企業の研究開発を後押ししていくことが重要だと考えている。新たなロボット産業の創出に向けた次世代ロボティクスの知能化技術開発に加え、ファクトリーオートメーションの高度化に焦点を当てて今後も取り組んでいく。

―― 今後、製造業はどのように変化していくとみておられますか。
 野田 これまで製造現場で活用されてきたロボティクスシステムは、設定された動作を繰り返すティーチングプレイバック型が主体であった。しかし今後は、ハードウエアとAIが一体となった自律型システムの導入が拡大していく時代に入る。そのなかで当社は、ロボットの頭脳となるAIの部分を担い、とりわけVLAを活用した研究開発を通じて、ロボット産業の市場獲得を目指す企業側の研究開発の技術力をさらに高め、優れたAIロボティクス技術を日本から世界へと送り出していきたい。
 こうしたフィジカルAIに関する動きは米国や中国で急速に進んでいるが、本格的な社会実装はこれからである。多くの製造現場があり、生産技術に関する優れた知見を有する日本には大きなチャンスがあると見ている。AIという大きな技術革新が進む現在、日本の強みである製造業の地の利を最大限に活かせる領域だと考えている。しかし、こうした取り組みは当社1社で行えるものではない。「未来の製造業」をともに作り上げていただける方がいれば、ぜひお声がけいただければと思う。


(聞き手・副編集長 浮島哲志)
本紙2025年12月4日号11面 掲載








サイト内検索