先端パッケージ向けの次世代パッケージ基板やインターポーザー関連部材の国内投資が動き出した。高性能な次世代の樹脂パッケージ基板をはじめ、RDLインターポーザー向けの感光性絶縁材料など主要部材の大型投資も進行中だ。高品質を武器に材料開発を継続してきた国内勢が強い分野でもあり、次世代パッケージ構造の高度化を機にシェア拡大や新規参入を図る企業も多い。
現在のAI用チップ用パッケージ構造は、高性能なGPU/CPUに加えHBMなどの高性能メモリーを集積化するため、高速信号処理や高周波特性に優れた材料を採用する必要があること、加えてチップからの発熱も著しいため高放熱性や低熱膨張といった特性があらゆる面で要求されている。その結果、主要部材を構成するフィラーやガラス繊維といった原料レベルでの特性向上が求められている。低消費電力化や高速伝送の両立を狙って光電融合技術による新たなパッケージ技術となるCPO(コ・パッケージ・オプティクス)の流れも出てきている。日系勢は先端パッケージ材料業界でデファクトを握る製品も多い。さらなる高性能化のためにはブレイクスルーを必要とする領域もあって、今後、新規市場が台頭する可能性もある。
現行世代の樹脂パッケージ基板市場では、旺盛なAIチップの需要増に応えるため、量産拠点の整備を進めている。高性能パッケージ基板に強いイビデンは25年10月から大野事業場を稼働させ、AIサーバーに搭載されるGPU向けなどに大型FCBGA基板の出荷量を拡大する。同事業場は現在、工場スペースの半分に生産ラインを導入、量産を開始したばかりだが、25年度下期から売上高に貢献してくると期待する。さらに旺盛な需要が継続しているとして27年度までに残り半分に生産設備を導入、フルキャパにする計画だ。一方で稼働を延期していた河間事業場も、ここにきて有力な既存顧客の次世代パッケージ向けでの引き合いが具体化しつつあるとして、早ければ26年度にも追加投資に踏み切る可能性が出てきた。
■TOPPANが国内外で大型投資
同様に大型のFCBGA基板に注力するTOPPANも、拠点の新潟工場内に新ラインを26年1月から稼働させた。新ラインではAIデータセンターに搭載するスイッチやASIC、ARM系サーバーCPU向けを手がける。今回の投資で新潟工場におけるFCBGAの生産能力は22年度上期比で2倍となる。さらなる需要増に対しては現在建設中のシンガポール工場がその受け皿となる。26年夏ごろには開所式を開催する予定で、稼働は26年末ごろを計画する。
一方で、次世代パッケージ基板の有力候補であるガラスコアや有機RDLインターポーザーなどの準備も進める。23年にJOLEDから取得した石川工場に試作ラインを導入し、26年7月から稼働を開始する。
石川工場では大型ガラス基板を用いたインターポーザーの研究開発をはじめ、ガラスコア、有機RDLインターポーザーなど次世代半導体パッケージに求められる部材の研究開発や試作に取り組む。
大日本印刷(DNP)も次世代半導体パッケージ向けのTGV(ガラス貫通電極)ガラスコア基板の試作ラインを久喜工場内に新設した。26年初頭からサンプル出荷を開始し、顧客とマーケットの動向を見ながら、28年度の量産開始に向けた体制を構築する。
パネルサイズは510×515mm、次世代半導体のパッケージ基板として必要な平坦性と反りを生じさせない剛性を確保した。ガラスを貫通する孔に銅を充填する「充填タイプ」と、貫通孔の側壁に金属層を密着させる「コンフォーマルタイプ」の2種類を提供する。高アスペクト比のTGV基板の量産につなげたいとしている。
次世代パッケージ基板市場において新たに新規参入を試みる企業もいる。日東電工は、低誘電基板の量産を25年度から開始する。また、半導体パッケージ基板の開発を進めており、先ごろ米IBMと先端パッケージ技術および材料に関する共同開発を行うことで合意した。独自の樹脂設計技術をフル活用して、次世代の低誘電材料の開発にめどをつけた。
半導体パッケージ基板は、28年度以降の量産立ち上げを目指すもよう。当初は民生機器向けを想定、微細配線で薄型高剛性の基板を検討する。また次世代半導体インターポーザーに向けた開発も進める。
さらに北欧企業のBeammWave社(BW)と共同開発を行い、次世代の低誘電基板開発につなげる。自社の材料技術とBW社のデジタルビームフォーミング技術を組み合わせ、低消費電力・低コストで高周波通信が可能なモジュール開発を加速する。
■周辺部材の投資も拡大
こうした先端ならびに次世代パッケージ基板の市場拡大に伴って、関連する部材メーカーの投資意欲も旺盛だ。なかには生産能力の増強が追いつかず、27年には供給不足に陥る部材も指摘されている。
その一つが、大型FCBGA基板の反りを低減する低CTE(熱膨張率)ガラスクロス、通称Tガラスと呼ばれるガラスクロスである。先端パッケージ基板のメーカーからラッシュオーダーが舞い込むも、目下、日東紡や一部の台湾企業しか供給メーカーがいないため、供給律速を起こしている重要部材だ。もともとインテルが高性能CPU向けのコア材に重宝していた部材だが、パッケージ基板の大型化による反りの問題が大きくなり、低熱膨張に優れる日東紡の特殊ガラスに注目が集まった。反りの問題を解決できるとあって、大型化するAI向けGPUのパッケージ基板にも使われだしたことで、不足感に一気に火がついた。
日東紡では原料となるヤーンの能力増強を含めて実施中だ。すでに日本では炉の増設スペースがなかったため現在、台湾でも原料から増強している。26年後半からは炉を需要に合わせ増やし続ける計画だ。
また、Tガラスクロスについても福島事業センターに150億円を投資して生産能力を大幅に増やしている。今回増強する生産能力をすべてTガラスクロスに充てた場合、28年度には現在の生産実績の3倍程度の生産が可能になるとみているが、27年度は厳しい供給体制となることは間違いない。このため、同業の台湾ガラスなどが同市場に名乗りを上げており、一部は国内のパッケージ基板メーカーの認定がとれたとして拡販を強化中だ。
さらに、大きな市場として期待されているのが、感光性ポリイミド樹脂を使った先端パッケージ向け再配線層の絶縁材料だ。旭化成のパイメルが事実上、ほぼ市場を独占しているとみられるが、新規参入企業も多数出てきた。
先行している旭化成は矢継ぎ早の投資を展開している。24年12月には150億円以上を投じて能力増強のための生産棟および新品質保証棟を立ち上げたばかりだが、旺盛な需要が継続しており25年8月には追加投資を決定。約160億円を投じて、28年度上期の商業生産を目指す。当初見通しより2年ほど前倒しでオーダーがきている状況という。今後さらに需要拡大が見込める場合の次期投資の検討も開始するなど、後続企業を突き放す戦略だ。その場合、BCPの観点から生産拠点の富士支社以外の立地も視野に入れる。
東レや富士フイルムもこの市場に本格参入すべく、新技術やプロセスを明らかにしている。東レはガラスコア基板の再配線層の微細加工と、貫通ビア電極の樹脂充填を同時に実現するネガ型感光性ポリイミドシートを発表した。基板メーカーを中心にサンプル提供中で、26年度の量産開始を目指す。富士フイルムもRDL用途などに展開するとして、液状ならびにフィルム製品が可能な新ブランド「ZEMATES(ゼマテス)」を立ち上げた。
また太陽インキは、感光性ポリイミド以外の感光性絶縁材料をimecと共同開発しており、液状での1μm以下の微細な配線に対応した材料を開発している。ビルドアップ基板用層間絶縁膜の開発も加速する。デンカも同基板向け層間絶縁膜への参入を検討中だ。
既存の樹脂パッケージ基板の層間絶縁材料として圧倒的シェアを誇る味の素のABFも、30年に向けて電子材料関連に250億円の投資を敢行する。同素材はパッケージ基板の配線層の微細化の切り札とされ、現行のハイエンドのFCBGA基板製造には不可欠な部材だが、通称で「ABF基板」と呼ばれるなど同社の製品名が冠となっている。
新たな部材市場も立ち上がりそうだ。高周波対応など低伝送損失を実現する基材では、得てして難接着性機能があるためガラスやフッ素系樹脂などと銅箔とのピール強度を確保するのが大変だ。そのため銅箔や樹脂の表面を粗化・改質したりする必要があるが、これだと電気信号の伝送速度に影響が出てくるため、新規の化学密着型の表面処理薬品が有効となる。
VSPはほぼ無粗化に近いため、表面の平滑性が一般銅箔よりあり、高周波特性に向いている
次世代パッケージ基板ではこうした新規部材が採用される可能性が高く、四国化成工業のグリキャップやメックの化学密着向上剤といった製品に注目が集まっている。銅箔自体も極力、低粗度の銅箔が要求されるようになっており、三井金属は約60億円を追加投資して、低粗度の高周波基板用銅箔「VSP」の生産体制の大幅強化に乗り出す。現在、月産620t(台湾560t、マレーシア60t)だが、28年9月には同1200t(台湾860t、マレーシア340t)へとほぼ倍増させる。
このように世界の最先端のパッケージ基板業界では、日本の材料メーカーが大きなシェアを持ち技術進化を支える重要な役割を担っている。今後とも日系部材メーカーの製品開発力ならびに安定供給力に期待したい。
電子デバイス産業新聞 特別編集委員 野村和広