電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第662回

ルネサスはGFと車載向けで戦略提携


インド市場攻略推進するも、6年ぶりの赤字転落

2026/3/6

ルネサスは先ごろGFとの連携を発表
ルネサスは先ごろGFとの連携を発表
 EVの本格登場により、半導体をめぐる議論が慌ただしくなってきた。自動車向けマイコンに強いルネサス エレクトロニクスは、米国のグローバルファウンドリーズ(GF)と次世代自動車向け半導体を共同で製造することを決めたのである。ルネサスは、自社で最小限の製造設備を持ち、需要変動に合わせて外部のファンドリーを活用するファブライト戦略を続けており、今後GFとの連携を深めていく。

 よく知られているようにルネサスは、車載用マイコンについては世界トップクラスのシェアを持つ。そして近年はM&Aも複数実施し、事業体制を強化している。長期レンジの計画としては、組み込み半導体メーカーとして世界第3位を目指すということがあるが、現在の市況をみると、この目標が少し先送りされるだろう。

 マイコンなどの組み込み技術をベースにIGBTやSiCパワーディスクリートなどを強化を掲げていたルネサスだが、市場環境の変化に伴い開発を中止。てこ入れ策の1つとしてGaNパワー半導体の事業を強化しており、将来的には甲府工場での300mmラインを用いた生産も視野に入れている。このきっかけは、米トランスフォームの買収にある。

 また、ルネサスは先進運転支援システム(ADAS)やEVで求められるレーダー、バッテリー監視システム、通信機能などに特化した次世代半導体を同社が設計し、GFに製造委託するという方向性が固まった。40nmプロセスまでの半導体については、茨城県にある那珂工場や熊本県にある川尻工場といった自社工場で生産し、それを上回る高性能品はTSMCやGFなどに生産委託するファブライト戦略を取っている。GFは当面のところ、回路線幅12~28nmの製造技術を手がけるようだ。ここで確立した技術は、将来的にはルネサスの国内工場へ技術移管されることも十分に検討されるという。

 ルネサスの海外戦略としては、インド市場での事業拡大がある。EDAベンダーのアルティウムの買収をてこにして、積極的にインドを攻略する。2030年には全社売上高の15%程度をインド市場で創出することを目指す考えだ。

 具体的には、インドの財閥系グループのタタとの連携を軸に考えている。後工程工場をインドに新設する計画も推進している。インドのベンチャー企業や教育機関も支援している。

 それにしても、ルネサスの25年12月期の最終損益は518億円(GAAP基準)の赤字であり、通期で赤字を計上したのは6期ぶりのことであった。前期は2191億円の黒字を計上したのに一転してダメになった。この原因ははっきりしている。SiCウエハーの長期供給契約を結んでいたウルフスピードの経営破綻の影響を強く受けたのである。しかし、売上高も前期比2%減の1兆3212億円と振るわない。車載向けが伸び悩んでいるのであり、今後はAI・データセンター向けチップにシフトすべきと考えるのは筆者だけであろうか。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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