商業施設新聞
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No.501

押し寄せる九州旋風


岡田 光

2015/4/7

モデル店となる「ジョイフル 姫路大津店」
モデル店となる「ジョイフル 姫路大津店」
 兵庫県の姫路駅より少し西に位置する山陽電気鉄道網干線「山陽天満駅」に降り立った。同駅から歩いて10分の距離にある「ジョイフル 姫路大津店」を内覧するためだ。しばらく歩くと、右手に茶色の建物が見えた。これがジョイフルの新しいモデル店である。従来は「Joyfull」という、黄色に赤文字の看板が目印だったが、モデル店の看板は白色と橙色でマークが描かれており、外観も茶色を採用したことで、どこかシックな印象を受ける。店内も完全分煙を実現しており、これならば男性だけでなく、女性や高齢者も気軽に入店できるだろう。

 (株)ジョイフルはここ数年、年間で20~30店を出店している、ファミリーレストランを展開する外食企業だ。2014年度(14年12月期)は24店を新規出店しており、ロードサイドへの立地を中心に、最近はパークプレイス大分、イオンタウン富雄南、ララプレイス愛宕など、商業施設内への出店も積極的に進めている。とりわけ、近畿以東で店舗網の拡大を図っており、14年度は近畿地区において、前述の姫路大津店のほか、「岩出店」「イオンタウン富雄南店」「イオンタウン湖南店」「草津店」の計5店を開店。15年度も35店の新規出店を計画しており、同年度も近畿以東で積極的な出店を推し進める方針だ。

 業態は異なるが、天然とんこつラーメン専門店「一蘭」を運営する(株)一蘭も、4月16日、大阪市中央区の道頓堀に「一蘭 道頓堀店屋台館」をオープンする。ビル1棟の全フロアを使用した店舗で、総店舗面積は920m²、席数は172席と国内最大の席数を誇る。同店は1階がお土産商品販売スペースで、2~3階は味集中カウンター、4~5階は新業態の一蘭屋台となる。一蘭屋台では、天然とんこつラーメン、釜だれとんこつ焼き豚皿、抹茶杏仁豆腐のほか、生ビール、瓶ビール、オスカラン焼酎などのアルコール類も用意している。

長い行列ができる「一蘭 道頓堀店」
長い行列ができる「一蘭 道頓堀店」
 現在、同社は関西エリアで「道頓堀店」「梅田店」「泉大津店」「京都河原町店」「京都八幡店」「宝塚店」の計6店を展開している。筆者も京都河原町店で味集中カウンターを体験したが、一人ひとり仕切られたあの空間は、人目を気にすることなくラーメンを食べることができるため、1人で来店する女性客も多く見受けられた。同社によると、既存の道頓堀店も07年のオープン以降、長蛇の列ができるほどの人気ぶりで、同店には日本人だけでなく、外国人の来店も多いという。時期は明言していないが、関西エリアでは全国53店目となる「大阪茨木店」の出店も計画しており、今後も同エリアで新規出店を加速する見通しだ。

 ジョイフルも、一蘭も、九州に本社を構える企業だが、どちらも大阪を中心とする関西(近畿)エリアで店舗網を拡大しつつある。お膝元の九州に出店する余地がなくなった、とも解釈できるが、それでも食に厳しい大阪を含む関西エリアをなぜ選んだのか、一度聞いてみたいところだ。関西には「ロイヤルホスト」「ガスト」「フレンドリー」といったファミレス業態に、「天下一品」「横綱」「魁力屋」などのラーメン業態も数多くの店舗を展開している。あえて激戦区に身を投じる、それは九州男児の血が騒ぐからなのか、それとも別の深い理由があるのか、興味は尽きない。
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