グリット・インターナショナル(株)(東京都渋谷区)は、米国ロサンゼルス発のドーナツ店「ランディーズドーナツ」の国内フランチャイズ展開を担う。2025年5月に1号店の「渋谷代官山店」を開業し、日本上陸から1年。行列ができる店も多く、順調な立ち上がりを見せる。最近では都内に製造拠点を新設し、将来的な50店体制を見据えた取り組みが進んでいる。同社代表取締役の芳賀剛氏に話を聞いた。
―― 日本のFC展開のきっかけは。
日本1号店の「渋谷代官山店」は、本国1号店のアイコンである巨大ドーナツオブジェが特徴
芳賀 24年3月に開催された「フランチャイズ・ショー2024」のアメリカパビリオンでの出会いがきっかけだ。ドーナツはなかったが、配置されていたオレンジカラーのパッケージがかわいく、日本でやってみたら面白いのではないかとビビッときた。
15分ほどの立ち話を経て、お金の話もなしにその場でFC展開を即決した。当時は40~50社ほどから問い合わせがあったそうだが、当社に任せてくれた。24年5月にロサンゼルスを訪問し、9月に契約、11月にはリリースを発表した。小さな組織ならではのスピード感を強みに、迅速な意思決定で短期間の出店拡大を実現している。アメリカ本部も協力的で、柔軟かつスピーディーに対応してくれる。
―― どのようなポテンシャルを感じましたか。
芳賀 ランディーズドーナツはアメリカのクラシカルなレシピで作られ、カラフルで大きなサイズが魅力。ただ、おいしいのは当たり前のこと。ランディーズドーナツは映画やMVに登場するなど、ファッショナブルなオーラを持っていることが唯一無二であり、味単体よりもそのような空気感で勝負したい。Tシャツやバッグなどのグッズも人気で、売り上げの5~8%を占める。
―― 足元の状況は。
芳賀 1年目は3~4店を出店する予定だったが想定以上の勢いで出店が進み、現在はテイクアウト専門業態を中心に都内で7店を展開している。この1年で大きく変わったのは、東京都板橋区にセントラルキッチンを設けたこと。2層構造の約130坪で、事業計画的には半年以上前倒しの25年12月に開設した。
元々は渋谷代官山店のキッチンで製造していたが、出店が広がり、今後の製造キャパシティを見据えて開設した。セントラルキッチンでは月に12~13店分をまかなえる。現在は各店に1日2便デリバリーしており、今後出店する新店のドーナツについても、同キッチンから配送する予定。この先の出店にも耐えられるよう、製造スキームを組んでいるところだ。
出店面では、(株)JR東海リテイリング・プラスがFCパートナーとなり、「東京ギフトパレット店」を皮切りに出店を広げている。ワンハンドで新幹線の中などでも食べられ、1個360~580円(税込み)と価格にプレミア感があること、若者に人気なことを評価いただいている。今後の出店は同社によるFC加盟店を中心にオープンしていく方針だ。当社は日本本部として直営店も展開するが、ドーナツ製造に注力したい。
―― 商品のローカライズなどは。
芳賀 むしろローカライズを極力行わないことが強み。砂糖など一部材料は関税の関係で日本のものを使っているが、商品ラインアップやレシピ、小麦粉などの材料は基本的にオリジナルを採用している。アメリカの小麦粉は日本のものと比べ、小麦の芯まで削っているため少しビターなフレーバーで、それもオリジナルの良さだと考える。
価格面でも本国と同程度だ。国内大手のドーナツと比べると価格が上がるが、ドーナツ1個の重さは1・6倍ほどで、グラム当たりの単価はあまり変わらない。値上げは行っていないが、安売りはしない方針だ。
―― 数店舗を展開して見えてきたことは。
芳賀 駅前などのトラフィックが多い場所を中心に出店し、購買層が幅広くなってきた。「有楽町マルイ店」などSCの特性上女性が多い店舗もあるが、最近は仕事帰りのサラリーマンも増え、夕方以降の20~21時ごろも好調だ。年配の方もみられ、ブランドの認知が向上した実感がある。カフェ利用よりも持ち帰りの手土産需要が強く、客単価は1800~2000円程度。複数人で楽しめるコミュニティフードとして機能している。
―― 注力したい出店形態や、今後の展開は。
芳賀 セントラルキッチンができ、3~5坪程度のテイクアウト特化店の出店を加速できるようになった。5月28日に開業した直営店の「目黒 アトレ店」は店舗面積が3坪と最小で、ほぼレジとショーケースだけで構成。施工を工夫した案件だ。将来的に百貨店などへの出店も考えており、その際は同店のような出店形態になるだろう。路面店よりも、SC内や駅直結など、トラフィックの多い場所の施設内をメーンに出店する戦略だ。
今後は27年3月以降に名古屋、27年秋~28年春ごろに大阪への進出を計画している。進出にあたっては各エリアに製造拠点を設置し、フラッグシップ店も出店する予定だ。このほか、神奈川や都内でも複数出店を控えており、26年内は8店、27年度末は16~17店、28年度末までには30~40店体制となる見込み。当初28年度末までに目指していた50店体制となるのは1年先延ばしになりそうだが、達成できる見通しだ。関東地方以北はまだ具体的な出店計画はないが、いずれ北上していきたい。また、現在は出店に注力している状況だが、今後はアパレルブランドやドラマなどとのタイアップにも本格的に取り組んでいきたい。
(聞き手・副編集長 若山智令/サリョールサラ記者)
商業施設新聞2652号(2026年6月30日)(8面)
経営者の目線 外食インタビュー