電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第692回

東南アジアに半導体の凄まじいウェーブがきた!


タイ政府は12兆円を投入し23万人雇用、シンガポールは新国家戦略を策定

2026/10/16

 アジアの半導体といえば、何といってもTSMCを擁する台湾の動向が常に注目される。そして、サムスン電子とSKハイニックスという巨大半導体メーカーを持つ韓国についても多くの報道がなされている。もちろん、最近では中国半導体にも世界の関心は集まっている。

 こうしたなかにあって、東南アジアについても最近は半導体の国家戦略を推進する動きが強まっている。特に、シンガポールとタイでは明確なプランが策定されつつある。

 シンガポールには、米国の大手であるブロードコム、マイクロンなどが進出しており、欧州ではインフィニオンが拠点を持ち、日本勢ではセイコーエプソンが工場を構えている。タイについても日本の富士電機、ローム、ソニー、東芝などが工場を運営している。米国勢のアナログデバイセズも拠点を持つなど活発な動きが広まっている。

 タイ政府は、半導体投資の強化へ向けての国家戦略を正式にアナウンスした。それは2050年までに半導体分野に12兆円を投資し、23万人の新たな雇用創出を目指すというものだ。タイ国内の半導体産業の大半は、組立とパッケージングに集中している。しかし今後はテスティングも強化するほか、チップ設計、ウエハー製造も開始し、前工程についても強化していく考えである。

 タイ政府は、重点技術としてシリコンフォトニクス、パワー半導体、センサーの3つをリストアップしている。こうした状況下で、ドイツの大手半導体メーカーであるインフィニオンの大型投資誘致に成功。同社は2.3兆円を投じ、パワーモジュールの新工場を立ち上げる。また、インフィニオンは後工程の新工場についても開設している。

TOPPANのシンガポール新工場
TOPPANのシンガポール新工場
 シンガポール政府は、SG Semiconductorを半導体産業の国家ブランドとして立ち上げる計画である。26~30年にかけて8億ドルを投じてAI向けの先端パッケージングやシリコンフォトニクス、パワー半導体、MEMSなど7分野を重点的に育成する計画だ。

 また、最近の動きでは日本のTOPPANが、高密度半導体パッケージ向けFCBGA基板の新たな製造拠点をシンガポールに設けた。TOPPANが50.1%を出資し、米国のブロードコムが49.9%を出資する。総額500億円を投じ、12月の本格稼働を予定。現地の高度エンジニアを200人以上雇用する計画だ。

 こうしたタイやシンガポールの政府による国家プロジェクトが次々と発表されてくるのをみると、東南アジア半導体の新たな夜明けが始まったといえるのではないだろうか。


■泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 執行役会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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