商業施設新聞
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No.536

『ライフスタイル提案型業態』に足りないのものは……


高橋 直也

2015/12/15

 最近、大きな失敗をした。11月中旬に引っ越しをしたのだが、新居の内見をした際、近くに線路が走っているのに気付かなかった。住んでみるとうるさいのなんの。電車が通るときはテレビで何を言っているか分からない。引っ越して3週間、何度も電車に乗る夢を見た。

 ただし、景色は素晴らしい。高さのあるマンションのため、遠くまで見渡せる。東京スカイツリーも見える。休みの日は飛行船がよく飛んでいる。これまで家は寝るための場所くらいに思っており、居心地が格段に上がったため家で過ごす時間が増えた。食事はほぼ外食だったが、自炊するようになった。前の家は3年半住んでいて一度もコンロに火を付けなかったのに。つまり生活の仕方、ライフスタイルが変わったわけだ。

 数年前から「ライフスタイル提案型」の業態が流行し、商業施設には欠かせない業態となりつつある。商業記者として1年を通じて商業施設を見ているので、「ライフスタイル提案型店舗」をおそらく年間数十店程度見ているだろう。つまり年間数十回新たなライフスタイルを提案されているわけだ。中には「この椅子、シャレオツだな」「この掛け時計が家にあったら雰囲気が良くなるな」と思うことがある。だが実際、外食中心のライフスタイルは変わらなかった。

 そんな筆者が引っ越しにより、あっさりライフスタイルを変えた。思うのだが、ライフスタイル提案型店に足りないものは提案力ではないか。特に個人的には空間として提案力が課題と感じる。

 そう考えるとIKEAは提案力が強い。IKEAはリビング、キッチンなど空間ごとに提案するのが特徴だ。「部屋をこうすればいいのか」「こう家具を置けばいいのか」と参考になるし、真似したくなる。(組み立てるのが難しいので実際は買わないが)。

野村不動産とユナイテッドローズは家具の共同開発も行った
野村不動産とユナイテッドローズは
家具の共同開発も行った
 ただし、キッチンなど部屋ごとの提案は大型店でないと難しい。どの企業、店でもできるわけではない。そこで注目したいのは野村不動産とユナイテッドアローズの動きだ。両社はコラボレーションしたモデルルームを展開したことがある。野村不動産が展開するプラウドブランドの住宅で、ユナイテッドアローズのセレクトした家具などをモデルルームに設置した。このようなモデルルームで商品を提案すれば、客層にイメージを喚起させやすい。


 ライフスタイル提案型で販売する商品は基本的に家の中で使うものだ。スペースに限りがある店内だけでなく、モデルルームやショールームにライフスタイル系の商品を提案するのもアリではないか。そのためには不動産業界との密接な関係が必要となる。野村不動産とユナイテッドアローズは共同で家具ブランドの立ち上げまでしているが、ライフスタイル提案型業態に必要なものは不動産との関係づくりなのかもしれない。
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