商業施設新聞
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No.555

繰り返された偽装


若山 智令

2016/5/10

 三菱自動車の燃費偽装問題が発覚した。競合車に対抗するため、燃費試験やデータの取り方など数点で不正を行い、自社製品を優位に見せていたというものだ。同社は過去にもリコール隠し、欠陥隠しなどの不祥事があった。このときの教訓を活かせず、隠蔽体質は改善されぬままだった。ユーザーや消費者はこうした問題に敏感だ。再度の信用回復には、それなりの時間を要するだろう。

 近年、こうした企業の不正や偽装といった問題が多いと感じる。記憶にあるところでは、7~8年ほど前になるが食肉偽装のミートホープ、石屋製菓の白い恋人の賞味期限偽装、2013年末に相次いで発覚したホテルの食品偽装やメニュー表示偽装、14年にあった中国の工場によるマクドナルドの鶏肉偽装、木曽路のメニュー偽装など業界大手のこうした問題がしばしば取り上げられてきた。今年の初めに起こった産廃業者の不正転売といった問題も記憶に新しいだろう。また、食品業界だけでなく、東洋ゴムの免震ゴムデータ偽装や、旭化成建材の杭打ちデータ偽装といった建設業界でのデータ改ざんも起こっている。

 こうした問題が明るみに出ると、当然ながら消費者は離れていく。今回起こった三菱自動車の件も、「過去の反省が活かされず~」などの報道がされ、企業が最も大事にすべき信用を一気に失うことになる。マクドナルドの鶏肉偽装も、異物混入の時期が重なったこともあるが、その後の業績に大きなダメージを与え、今もこの問題のイメージが残ってしまい、事件後は店に行かなくなった、利用しなくなったという人もいるだろう。前述した企業も営業停止などの処分が下されるなど、大きな損害を受けている。

三菱自動車復活の道のりは長く険しいだろう
三菱自動車復活の道のりは長く険しいだろう
 また、三菱自動車は今回の件で総額数百億~1000億円規模の賠償、補填をすることになるという報道もあるが、結果的に企業イメージの低下に加え、多額の損失を出すことになってしまった。ユーザーだけではなく、各取引先からの信用も失くしてしまうだろう。競合車への対抗意識から不正を働いたというが、その代償はあまりにも大きいものだ。

 偽装や不正といった消費者を欺く行為は許されるものではない。企業同士が競争意識の中からより良い技術の開発や、より良い製品、商品を作るからこそ、そこに企業価値が生まれ、消費者に支持を受けるのではないだろうか。自社の製品、商品を良く見せたいがゆえに偽装や不正を行うというのは、結果的に競争とは真逆のところにいると個人的に思う。

 それを考えると、偽装や不正はあまりにお粗末であり、社会や経済に悪影響を与える結果となるだけだ。早期に全容を解明し、ユーザーや消費者の信用回復に努めてほしい。日本の産業を代表する自動車産業の名門復活に期待したい。
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