商業施設新聞
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No.639

韓国・現代自動車の超高層ビル建設計画が暗礁に


嚴 在漢

2018/1/16

 韓国で自動車最大手の現代自動車グループが進める超高層ビルの建設計画に「待った」がかかった。現代自動車が2018年上期の着工を目指すソウル・三成洞の「グローバル・ビジネス・センター(GBC)」について、韓国国防部(国防省)が「飛行安全およびレーダー電波の影響評価」を改めて求めたためで、GBC建設プロジェクトを許可したソウル市と現代自動車は戸惑いを隠せない。例え政権が変わったとはいえ、企業が進める建設プロジェクトを見直してしまうとはひどすぎるというのもうなずける。

 超高層商業ビルに対する飛行安全の問題は、17年4月にグランドオープンした「ロッテワールドタワー」(123層)の建設を遅延させた原因にもなった。ソウル上空のいくつかの地点には、「高度制限」という建設不可区域がある。これは有事の際、戦闘機の離着陸などを妨げないためのものだ。韓国政界では最近、前政権(イ・ミョンバク、パク・クネ大統領)に対する弊害の清算が行われている。イ元政権の飛行安全性評価と関連し、「特別優遇の疑惑」を調査する過程で、GBCの問題が浮き彫りになったようだ。

 国防省とソウル市は1月3日、現代自動車のGBC建設プロジェクトの飛行安全性評価に対する実務者協議を行った。同協議は、17年12月22日に開かれた国土交通省主催の「首都圏整備委員会」で、国防省側がGBC建設プロジェクトの案件について「超高層ビルであるだけに、飛行安全などに及ぼす影響を検討する必要がある」との指摘に対応する措置を諮るものであった。委員会は、GBC建設プロジェクトについて「承認保留」の判断を下したのである。

旧韓国電力社屋の様子(14年撮影)、今は更地に整備されGBCの着工を待つ
旧韓国電力社屋の様子(14年撮影)、
今は更地に整備されGBCの着工を待つ
 ソウル市と現代自動車は、GBC建設プロジェクトをすでに進めており、地区単位計画決定や環境交通影響評価などを経て、18年上期に本格着工する計画である。だが、空軍による飛行安全影響評価は、これから少なくとも1カ月強かかる見通しだ。委員会は通常、2カ月ごとに開かれることから、次回は2月末と予想される。仮に1カ月以内に空軍側の評価結果が出て、GBC建設プロジェクトに問題がないと結論付けられれば上期の着工は可能だが、現状では不透明である。

 現代自動車は14年10月、ソウルCOEX(国際展示場)周辺の韓国電力の敷地を、当時の相場をはるかに上回る10兆5500億ウォン(約1兆1223億円)で購入した。22年の完成を目指すGBCは、総額15兆~20兆ウォン(敷地+開発費+公共寄与金など)が費やされる大規模建設工事となる。

 今回のGBC建設プロジェクトの問題をめぐり、「民間企業がビジネス戦略として決めた事案について、国家が是非を左右することは、政経の構図として決して望ましくない」という指摘もある。一方で、「南北が先鋭に対峙してきた韓国だからこそ、このような経済原則からかけ離れた判断が下されることも一理ある」という主張も説得力を得ており、今後の委員会の行方が注目される。
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