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第256回

ルネサス エレクトロニクス(株) CEO 呉文精氏


M&A、組織変更など攻め貫く
自動運転用SoCで手応え

2018/1/19

ルネサス エレクトロニクス(株) CEO 呉文精氏
 ルネサス エレクトロニクス(株)のトップに呉文精氏が就いてから、約1年半が経過した。この間、同社は構造改革の着実な実行に加え、車載を主力に産業、ブロードベースと事業ドメインの見直しを行い、組織体制も大幅に変更した。熊本地震では大きな影響を受けたが、東日本大震災の教訓をもとに想定を上回るスピードで復旧を遂げた。さらに、米インターシルの買収というM&Aにも乗り出すなど攻めのスタイルを貫く。2018年の抱負を代表取締役社長兼CEOの呉氏に聞いた。

―― 17年の総括からお願いします。
 呉 まず、17年の成果として、2月末にインターシルの買収を無事終えることができた。また、6月には普通株式の売り出しも行い、戦略的投資家から非常に強い需要をもらって、株価も底堅い推移をした。7月には新しい組織を設立して、3事業部がそれぞれグローバルに収益責任を持ち、かつ迅速な意思決定が行える体制に移行した。業績面では、まだ10~12月期業績を発表しておらず計画ベースになるが、17年(暦年)業績は、売上高が前年比21%増の7722億円、粗利益率が同2.7ポイント増の46.3%、営業利益率が同15.5%増の1200億円を達成できる見通しだ。

―― 業績が好調に推移しています。
 呉 17年は多少、「追い風参考記録」という側面があったと思う。1つは為替だ。我々は中期計画で粗利益率50%を目指すとしているが、為替前提は1ドル=100円だ。しかし、17年通年ベースでは111円を見込んでおり、この部分は追い風となっている。さらに17年については、すべての市場・顧客で需要が強かった。18年に向けては地政学的なリスクもあり、為替がどうなっていくのか不透明だが、110円台で推移すれば、17年同様に追い風が吹くことになる。

―― 足元の需要は。
 呉 まだら模様に見え始めている。17年はすべての分野が強かったが、例えば、北米の乗用車市場などでは明らかに減速感が見て取れる。中国の自動車市場も多少調整が入ってくることになるだろう。一方で、中国は16年から17年にかけて、エアコン需要が非常に強かった。特にインバーター化が進み、この恩恵を受けることができた。また、中国家電メーカーの輸出拡大もプラスに働いた。これが18年も続くのかどうか、しっかりと見極めていきたい。

―― 需要環境を踏まえ、18年の売上高見通しは。
 呉 中期的に注力市場において、市場全体の成長率の2倍を達成することを目標に掲げている。今後も年率10%弱の売上高成長を記録していきたい。

―― 製品別の状況は。
 呉 まず車載向けの制御用マイコンに関しては、2年前から40nm世代を採用した製品を市場に投入している。しかし、競合他社の40nmは混載フラッシュの市場実績がなく(外部からのIP調達のため)、我々が知る限り、まだサンプル出荷という状態で、約2年先行できていると思っている。さらに、次世代の28nmもデザイン・インを獲得しており、18年1月中にはサンプル出荷を開始できそうだ。さらに16/14nmも技術的にはすでに確立しており、顧客からのニーズがあれば製品開発および出荷ができる状態だ。

―― SoCは。
 呉 自動運転に必要なコグニッション(認識)用プロセッサーは、相当良いソリューションが提供できていると自負している。すでに発表しているとおり、トヨタ、デンソーが2020年の実用化に向けて開発中の自動運転車に搭載されることが決まっている。我々はオープンプラットフォーッム(PF)を志向しており、シリコンからハードウエア、ドライバーまでをカバーしている。一方で、最大のライバルであるモービルアイは、単眼カメラをベースにアルゴリズムをブラックボックス化している。しかし、自動運転車ではLiDARやステレオカメラなど他のセンシング機能とのフュージョンが欠かせず、オープンPFが今後大きな武器になってくる。

―― 手応えは。
 呉 圧倒的なシェアを持つモービルアイの牙城を崩すことが当面の目標となるが、すでにデザイン・イン段階でもともとモービルアイを採用していた大手ティア1でのリプレイスに成功した例がいくつか出始めている。

―― 今後の生産戦略は。
 呉 自社工場は現状、前工程が8インチ、12インチともにキャパシティーが逼迫しており、ラインはフル稼働の状態が続いている。6インチも中長期的に集約していく方向性に変わりはないが、足元の需要は根強いものがあり、採算性は十分に取れている。後工程は車載用について、これまで一貫して自社工場で行っていたが、今後増える分に関しては顧客の理解も得ながらアウトソース化を推進していくことになる。

(聞き手・副編集長 稲葉雅巳)
(本紙2018年1月18日号1面 掲載)

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