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第260回

アルプス電気(株) 代表取締役社長 栗山年弘氏


中国市場攻略に本腰
IoTは高付加価値品で開拓

2018/2/16

アルプス電気(株) 代表取締役社長 栗山年弘氏
 2017年度4~12月期の売上高が前年度同期比16.7%増の6442億円、営業利益は同81.0%増の595億円と快進撃を続けるアルプス電気。上昇気流の風に乗り、通期売上高は3度の上方修正を経て8550億円を狙う。業績を押し上げるメーン市場はスマートフォン(スマホ)とクルマだ。投入製品は、取引価格優先のビジネスとは一線を画し、競合他社への競争力を有する高付加価値品で勝負する。今後さらなる成長を目指し、19年4月1日付でアルパインとの経営統合が控える。そして、その延長線上に浮上してくる次なる目標が1兆円企業への成長である。17年を振り返り、18年に展開するビジネス戦略を代表取締役社長の栗山年弘氏に伺った。

―― 17年を振り返って。
 栗山 全事業が堅調に推移した。これが実感だ。スマホとクルマの2大市場に加え、ゲーム機市場も売り上げ増に貢献した。製品については、スイッチ関連などのヒューマン・マシン・インターフェース、センサー、コネクティビティーをコア技術に展開するが、各市場でグローバルに売り上げが伸びた。

―― 18年の市況は。
 栗山 エレクトロニクス業界全体の成長は継続するが、勢いは鈍化するとみている。スマホは北米製および中国製ともに、これまでのような成長率は望めない。クルマは踊り場を迎えるのではないかと予測されている。17年の延長線上に18年の市況を重ね合わせることはできない。

―― スマホ向けの戦略について。
 栗山 スマホは北米製と韓国製を主軸に事業を展開しているが、18年は中国市場にも注力する。カメラ用アクチュエーターで攻勢をかける。スマホ内蔵カメラは、レンズやセンサーが大きく、かつ薄型化がトレンド。前者は動作を鈍くさせ、後者は設計マージンの許容度を奪う。この2つの課題に当社独自の製品開発力、製造技術力で付加価値を生み出したい。決して取引価格優先のビジネスには手を染めない。

―― クルマに対しては。
 栗山 クルマ市場については現在、EU、北米および日本の自動車メーカー、ティア1を対象に、高付加価値モジュールを提供している。18年はスマホと同様、中国市場を攻略する。ただし、中国ローカルのティア1に向けたティア2、ティア3ビジネスで、供給する製品は標準デバイスだ。カスタム性の強い付加価値モジュールを提供するのは、そのリスクの大きさに憂慮がある。

―― 生産量は拡大を続けますね。
 栗山 現在もキャパシティーは満杯状態であり、中国「無錫アルプス」の拡張に踏み切った。総額約14億円を投じて地上2階建て、延べ床面積にして約1.7万m²の新工場棟を建設中だ。2月に竣工する。新棟の稼働によって、無錫アルプスの生産能力は現行の1.5倍に拡大する。

―― 18年度にはアルパインとの経営統合作業が控えています。
 栗山 19年1月1日付でアルパインを子会社化する。現在、統合作業を鋭意推進中だ。当社とアルパインは同じグループ会社だが、それぞれが上場企業であり、かつ独立会社でもある。ADAS(先進運転支援システム)や自動運転を焦点に、両社共同で推進したい案件も数あるなか、案件ごとに契約締結が必要になるのが実情だ。これではスピード感に欠け、今の時代にマッチしていない。自動車産業が100年に1度の大変革を迎える今こそ、車載ビジネスはボーダーレスで展開したい。ハードに強いアルプスとソフトに強いアルパインが一体となり、車載市場に挑んでいく。

―― 顧客の評価は。
 栗山 経営統合の発表以降、強力なサプライヤーが誕生すると、顧客から高い評価と期待の声が数多く寄せられている。株主やアナリストの方々からも好評で、強い支持の拍手が届いている。

―― 次代のIoTビジネスをにらんで。
 栗山 センサーおよびセンサーモジュールなどを主としたEHII(エネルギー、ヘルスケア、インダストリー、IoT)市場は着実に伸びてきているが、スマホやクルマに続く第3の柱に成長するまでにはもう少し時間が必要だろう。当面は既存事業がビジネスを牽引することになる。ただ、世の中がIoTをベースにSociety5.0に向かって進化を継続しているのは事実。引き続き注力していく。

―― IoT製品はどのように展開しますか。
 栗山 商品展開は、やはりセンサー単体ではなく、通信やファームウエアまで組み込んだ高付加価値製品で市場を開拓していく。大手顧客にはゲートウエイ(ファンクションモジュール)で展開する。ただ、それはカスタム性が強くなるため、中小規模の顧客に対しては標準品の提供になると推察する。ある意味、車載ビジネスと同様の戦略になる可能性が高い。

―― 商品戦略は見えていても、成長までに時間が必要な背景とは。
 栗山 顧客ごと、あるいは市場ごと、構成するサプライチェーンが明確に見えていないことが要因だ。IoTの世界では、様々な階層(レイヤー)が存在することになる。ハードには弱く、取得データのみに関心を示す顧客もいれば、システム構築に注力する顧客もある。レイヤーごとでビジネス形態が全く違うため、電子部品メーカーは自らの立ち位置が定まらない。また顧客側でも、集めたデータをどのように活用していくのか、まだまだ模索中であり、時間が必要ということだ。

―― 第5世代移動通信システム(5G)について。
 栗山 5Gには大いに期待するが、IoTビジネスとは別と捉えている。5Gは高速/大容量通信のため、クルマの自動運転で有効に機能する。一方、IoTは低消費電力でデータ容量も大きくないため、LPWA(省電力広域無線技術)ビジネスと連動することになる。両分野ともにソリューションの提供で市場を開拓する。

―― ソリューション提供の核となるのが半導体です。
 栗山 センシングで取得した情報の信号変換を担うASIC開発を独自で行っている。設計はアナログフロントエンドがメーンだが、補正回路やメモリー機能も組み込むため、複雑で難易度の高いASIC設計を展開している。開発部隊は仙台開発センターに集約しており、一部を米ソルトレイク市にも配備している。生産は大手ファンドリーに委託している。設計拠点には最先端CADツールを配備しており、生産委託先のファンドリーとはデータ送信で設計/生産仕様を共有し合っている。

―― 自社設計のASICが有効に機能するのは。
 栗山 クルマのコックピットの領域だ。ジェスチャーやタッチ入力操作を実現する、静電式入力デバイスに期待してもらいたい。高感度静電センサーとともに、独自アルゴリズムを内蔵したASICが快適な車室内操作を提供する。

―― 18年以降に向けて。
 栗山 取り組むべきは、国内のみならず、海外生産拠点も含めたグローバル規模での人手不足だ。かなり深刻な局面を迎えつつある。これまでのような設備増強と従業員の増大による生産力拡大は望めなくなってきた。そうかと言って、既存の従業員へのさらなる負荷は排除したい。人手に依存していた領域を、機械やロボットに置き換えていく必要がある。今後に向けての投資先は、生産性向上に対するものになろう。それは同時に、アルプス電気にとっての働き方改革の取り組みが動き始めることを意味する。

―― 無錫アルプスに続き、今秋には宮城県大崎市の北原工場敷地内に新工場棟が竣工します。
 栗山 生産設備を除き、100億円を投じた。敷地面積4.8万m²の地上3階建て、延べ床面積にして3.7万m²の規模になる。ポイントは、品質管理と生産ライン管理の両方を徹底させるため、IoTを有効利用した製造実行システムを導入したことだ。新製品は国内で開発し、その生産ラインも国内で立ち上げるのが我々のスタンス。新工場棟はマザー工場としての役目を担い、不良を出さないモノづくり体制を構築することが狙いとなる。
 そしてもう1つ、新工場棟はアルプス電気の働き方改革をも推進する。人手への依存から脱却し、コンピューター・ネットワークで構成された生産設備が、高い歩留まりで高品質なモノづくりラインとして機能する。

(聞き手・編集長 津村明宏/松下晋司記者)
(本紙2018年2月15日号1面 掲載)

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