商業施設新聞
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No.655

再び活気づく城下町


岡田 光

2018/5/15

名古屋城の城下町をイメージした「金シャチ横丁」
名古屋城の城下町をイメージした「金シャチ横丁」
 大阪城と名古屋城。大阪城は、安土桃山時代に豊臣秀吉によって築かれ、江戸時代に修築され、国の特別史跡に指定されている。一方の名古屋城は徳川家康が築き、大天守に上げられた金の鯱は、城だけでなく、名古屋の街の象徴にもなっている。どちらも日本の三大名城に数えられ、多くの観光客で賑わうスポットであるが、これらの城の周辺では、商業施設の開発が盛んに行われている。

 大阪城の周辺では、2017年6月に「ジョー・テラス・オオサカ」が開業し、同年10月には「ミライザ大阪城」がオープン。今後も森ノ宮噴水エリアにカフェや遊び場がオープンするほか、劇場A(客席=1144席)、劇場B(706席)、劇場C(300席/スタンディング=600人収容)の3館で構成する劇場型文化集客施設「(仮称)クールジャパンパーク大阪」を19年2月に開業する予定だ。一方、名古屋城の周辺では、横丁をイメージした商業施設「金シャチ横丁」を18年3月に開業。老舗の飲食店を集めた「義直ゾーン」と、新進気鋭の飲食店が出店する「宗春ゾーン」の2つのゾーンで構成され、今回の第1期だけでなく、第2期の整備も計画している。

大阪城公園駅の駅前に立地する「ジョー・テラス・オオサカ」
大阪城公園駅の駅前に立地する
「ジョー・テラス・オオサカ」
 城の周辺に商業施設を設ける主因は訪日客の増加だ。大阪城の16年度入館者数は、前年度比9.4%増の255万7394人を記録。17年度も前年度を上回ったことを公表しており、5年連続で伸び続けている。全体の3割程度を訪日客が占め、今後も増え続ける見通し。名古屋城は16年度の入城者数が192万人を記録し、17年度も同等の数字を見込んでいるが、天守閣の木造復元事業に伴う工事を実施するため、18年度の入城者数は減少に転じると見る。それでも、訪日客は目に見えて増えており、天守閣の復元が終われば持ち直すのは必至だ。増える訪日客に対して、城の見物だけでなく、買い物や飲食も楽しんでもらいたい、そういった願いを込めて、城の周辺で商業施設の整備が進んでいる。

 一見すると、商業施設の整備は順風満帆に思えるが、課題も山積している。まず挙げられるのが、テナントとして出店業種の偏りだ。前述のジョー・テラス・オオサカでは、飲食を中心に、物販、インフォメーション、ランナーのための施設などをテナントとして導入しているが、物販は生花販売の「サンジョルディフラワーズ ザ・デコレーター大阪店」が出店するだけで、一部、土産物を販売する店舗もあるが、大半は飲食店である。開発担当者にその理由を尋ねると、「城の周辺では物販店の出店規制が厳しい」という声が返ってきた。これではさらなる開発が進んでも、どの施設も飲食店ばかりが立ち並ぶ、“金太郎飴”になりかねない。

 商業施設の高さが制限されることも、難しい問題と言える。城の周辺は公園として扱われるため、平屋建てや2階建ては可能であるが、3階建ては実現不可能だ。上に積めないということは、店舗を横に広げるしかないことになり、公園という開放的な空間にありながら、高さで圧迫感を与えるのはせっかくの魅力が台無しとなる。そして、最も懸念されるのが、商業施設の収益性である。どの施設も公園内に立地しており、公共性の高い事業であると捉えられるため、収益よりも地域貢献を重視するケースがしばしば見られる。
 城の周辺では、今後も商業施設の開発が行われる見通しである。前述した3つの課題を克服することができ、商業施設がこれまで以上に、真の“城下町”と呼ばれる日が来るだろう。
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