商業施設新聞
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第142回

昭和飛行機工業(株) リアルエステート事業部 理事 副事業部長兼賃貸施設1部 部長 高橋佐登志氏


130haに多彩な機能で集客
商業は20年先見据えたMD着手

2018/8/14

昭和飛行機工業(株) リアルエステート事業部 理事 副事業部長兼賃貸施設1部 部長 高橋佐登志氏
 昭和飛行機工業(株)(東京都昭島市田中町600、Tel.042-541-2111)は、JR昭島駅前に広がる約130haの敷地で、地域密着型SC「モリタウン」を中心に、ホテルやテニスコート、2015年3月にはアウトドアブランドを集めた「アウトドアヴィレッジ」など様々な機能を集積した街を形成する。一方で、周辺に続々と開業する大型商業施設にどう対峙していくのか。リアルエステート事業部副事業部長の高橋佐登志氏に聞いた。

―― 立川駅周辺に大型商業施設が増えています。
 高橋 さほど影響を感じていない。むしろ立川駅以東で影響があるのでは。モリタウンの17年度売り上げは前年比100%。2月から改装で17店が休業の状態で達成した。

―― 施設の活性化について。
 高橋 開業35年の節目を迎えるにあたり、本館をリニューアルする。20年先を見据えて、継続できる施設をつくり、競合が出てきても影響しないMDを構築するのが今回の改装の最大の狙い。
 本館を北・南工区に分け、南工区の1階にはデイリー性の強いミセスアパレルや食物販を集めて、1日何回でも来館できるようにする。加えてコミュニティの場所をつくる。67席の共用部分を整備し、コーヒースタンドを設けて休憩できたり、他で買ったものが食べられる。2階はカルチャー中心で、本、CD、カメラ、楽器などとする。
 北・南工区計25区画が対象で、新店は7店、残りは移転する。また、以前は区画壁で仕切られていたが、通路側に面した一部の店舗を島区画にする。高さも抑えて見通しを良くし、回遊性を高めるほか、集客性の高いテナントの配置の最適化で、デッドスペースを極力なくす。
 2月から工事を開始しており、9月13日にオープンする。北工区は19年6月完了予定だ。施策で売り上げ1割増を狙っている。ゆくゆくはモール型の東館にも手を入れたい。

―― フードコートは。
 高橋 17年2月、店舗は変えず、席と床、天井、壁、環境を変えた。席数を若干増やし565席にするとともに、家族6人席、お子様用の低いテーブル、お一人席などをつくった。環境を変えることにより、売り上げが2割程度上がった。楽しい中で食べたいという気持ちに応えた。次は店舗を刷新する。

―― フードコートが人気の一方で、アパレルは元気がない。施設づくりも時代の趨勢に左右されます。
 高橋 デベロッパーはそこに対応していく必要がある。先を読むか、流れを自分でつくるかだと思う。

―― アウトドアヴィレッジの状況は。
 高橋 おかげさまで好調だ。初年度目標が15億円だったが、実際は15.7億円。3年目の17年度が16.5億円。客数は100万人を維持する。連休には青森、三重、豊田市など、各段に遠方者が増える。また来店は駅前にあっても車が多く、75%を占める。モリタウンで50%ほどだ。また、男女比率も逆転するし、滞留時間も長い。環境がいいので、コーヒーを飲みながら物思いにふける方も多い。

―― 拡張計画は。
 高橋 アウトドアヴィレッジはこれ以上拡張できないし、テナントの入れ替えも難しいので、クライミングやカヌー、お泊まり体験などのイベントやワークショップといったライフスタイルの提案や体験から購買につなげている。
 また、17年4月にスピードウォールが完成し、世界のトップ選手を招いて大会を開催している。3種目を揃え、クライミングの聖地としても名を上げていきたい。
 なお5月26日に日本初のサウナグッズ専門店「METOS Sauna Soppi」が開業した。近くには「BESS」も開業し、アウトドアスタイルの好きな人が集まる場所となっている。

―― アウトドアヴィレッジは県外から来街します。駐車場は。
 高橋 2400台を持つが土日は足りない時もある。従来、専用駐車場だったが、敷地の施設を利用すればどこでも駐車サービスを受けられるようにした。せっかくうちの敷地を使っているのでその利点を生かした。

―― 機能的なものは揃った。
 高橋 コトを表現する仕組みや、コミュニティスペースや行政の出先機関など、行く目的をつくらなければいけない。それこそがリアル店舗の強み。

―― 敷地内には事業所もあります。
 高橋 様々な企業が進出しており、就労者は約3000人におよぶ。駅前で便利という声が多く、新宿から35分で来られるし、成田、羽田空港行きバスも運航し、利便性も高い。また、都会の喧騒よりも落ちついた環境でクリエイティブな仕事をしたいニーズが多い。

―― 20年先を見据えたモリタウン全体としての取り組みは。
 高橋 モリタウンとしては超地域密着を推進していきたい。一方で、クオリティオブライフをキーワードを掲げながら、上質な生活感を提供する。その一弾としてアウトドアビレッジをつくった。今後も生活の豊かさを生むものを提供していきたい。

(聞き手・編集長 松本顕介/副編集長 高橋直也)
※商業施設新聞2253号(2018年7月17日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.268

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