商業施設新聞
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No.679

商業施設がスポーツの場や公園に


永松 茂和

2018/10/30

 最近、モールで「ウォーキング」という言葉をよく耳にする。大型ショッピングモールを全国展開するイオンモールが館内にウォーキングコースを設けて、健康的なライフスタイルの実現をサポートする取り組みが代表例だ。ふと、埼玉県越谷市にある日本最大級のショッピングモール「イオンレイクタウン」のオープン内覧会に参加したことを思い出した。とにかくここは大規模な施設で、直線距離にして1km近くあるモールは、お年寄りなどが買い物をするのには大変だろうと思ったことを記憶している。

 ただ、これがウォーキングなどに活用するとなると、一転して最適なフィールドに変わるから不思議だ。高齢化が進む中、何不自由なく体が動かせ、生活できる健康年齢をいかにキープできるかが重要な目標となっている。高齢者にとっては、時間や天候に左右されず、休憩スペースも整い、買い物もできる最適な施設になっているのかもしれない。そしてここ数年、コトに重点を置いた商業施設が一つのブームになっていたが、さらにそれを一歩進めることにより、スポーツなどの直接商売とはあまり関係ないと思われてきた部分に傾注した商業施設も多くなってきた。

PLAYatreのサイクリングの拠点となるリンリンスクエア土浦
PLAYatreのサイクリングの拠点となる
リンリンスクエア土浦
 例えば、3月にJR土浦駅の駅ビルをコンバージョンした「PLAYatre」は、従来型のショッピングを主体とした駅ビルとは異なる、日本最大級の体験型サイクリングリゾートであり、これまでのアトレとは趣きが異なる施設に生まれ変わった。第1弾では、地下1階地上6階建て延べ約1万7400m²のビルを改装し、地下1階と地上1階部分にサイクリングを楽しむためのベースキャンプとなる「リンリンスクエア土浦」をオープンした。内部には、「手ぶらでサイクリング」が可能なようにレンタサイクル、セキュリティ完備のシャワー、ロッカー、更衣室のほか、サイクリングライフに必要なアイテムをトータルで販売するサイクルショップなどが出店しており、手ぶらで土浦駅まで行き、流行の自転車でサイクリングを楽しむことができる。さらにここは、全長180kmのサイクリングコース「つくば霞ケ浦りんりんロード」のスタート地点でもあるのだ。

 この施設は、物販を大幅に縮小していることや収益構造が明確ではないことなど、その後の動向がどうしても気になったため、状況を聞いてみたところ非常に好調であり、地域の活性化にも貢献し、レンタサイクルの数も増やしたという。2019年春には飲食ゾーン、秋以降にはサイクリングホテルの整備も予定され、さらに活気づく見通しだ。

 また、銀座のソニービルをリニューアルし、8月に開業した「銀座ソニーパーク」もユニークな存在だ。銀座の一等地である数寄屋橋交差点に面した公共スペース(ソニースクエア)を拡大し、公園をコンセプトとして運営している。人のやらないことをやるというソニーらしさを前面に出した施設となっていて、地下1階から4階にかけて店舗施設があるものの、商売的な要素はほとんど感じられず、公園のどこからでも自由に入れる公共の場とした。各フロアの余白スペースではローラースケート場などを期間限定でオープンするなど、銀座の一等地を忘れさせる施設となっている。開園期間は20年秋までで、その後22年には「公園」のコンセプトは変えずに、拡張させる形で新しいソニービルを竣工する計画であり、完成が楽しみな施設だ。

 以上のように最近では単なる物を売る商業施設ではなく、様々な形態の商業施設が誕生している。今後のデベロッパー各社がいかに趣向を凝らした開発を行うのか注目されるところである。
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