半導体製造装置世界最大手の米アプライド マテリアルズの日本法人、アプライド マテリアルズ ジャパン(株)(AMJ、東京都港区)は、2019年に設立40周年を迎える。外資系装置メーカーという立場ながらも、国内半導体産業の栄枯盛衰をともに経験してきた存在といってもよいだろう。日本法人社長への就任から間もなく丸2年を迎える中尾均氏に、現況や今後の見通しについて話を伺った。
―― まずはご略歴から。
中尾 入社は1992年だ。それまでは「アルバックBTU」で拡散炉など半導体製造装置事業に携わっていた。AMJ入社後はスパッタリング装置などメタライゼーション分野の営業を担当した。当時は「Endura」シリーズが市場に投入されたばかりで、当社のスパッタリング装置におけるシェアが、オセロゲームのように広がっていた時期でもあった。AMJでは、製造装置メーカーとしてはいち早くアカウントセールスを導入しており、私自身、長年アカウントセールスに携わってきた身だ。
―― 貴社の社風をどう分析していますか。
中尾 放任と規律の両方を兼ね備えている会社だと思う。当然のことながら数字を求められる一方、西海岸に本社を置く企業なので多様性のある会社だと思っている。また、日本法人に関しては、他の米国本社の装置メーカーに比べて、より多くの裁量権が与えられていると感じている。
―― 半導体製造装置市場を取り巻く環境についてどう見ていますか。
中尾 18年は機械が生成するデータ量が、人間の生成するデータ量を上回る変革の年だ。AIをフルに活用するためには、ワットあたりのコンピューティング性能を今後1000倍に改善する技術革新が必要で、アーキテクチャー、デバイス構造、材料、微細化の手法、パッケージング、これらに対して新しいアプローチを提案できるかがカギになる。AI、ビッグデータ時代に向け、早い段階からお客様と協働していく。
―― 半導体製造装置市場の見通しは。
中尾 当社の見解として、「WFE(Wafer Fab Equipment)市場は18~19年の2カ年で計1000億ドル」という見方に変更はない。18年の牽引材料はDRAM向けであるという見方にも変わりはないものの、NAND向け投資は従来に比べて予想を引き下げている。ファンドリー投資は顧客側で最先端プロセスの開発が続いており、19年は回復が期待できるとしている。
―― 懸案のメモリー投資については。
中尾 海外顧客に関しては直接関わっていないので、コメントしづらいところはあるが、過去の例から考えて、現在これだけ投資スケジュールを後ろ倒ししているのを見ると、いざ再開する時のモメンタムは非常に大きなものになるのではないか。メモリーで利益を上げようとするならば、一足先に投資を再開する必要があるので、現在は粛々と歩留まりの向上に励む時期と位置づけているような見方もできる。
―― 各装置の進捗状況は。
中尾 例えば、エッチング装置などでは3D-NAND向けにエッチングのアプリケーションが大きく増えているが、我々としてはエッチングだけでなく、その深穴形成を行う過程で必要となる成膜やイオン注入といった工程でも新規のPOR(Process of Record=顧客側ラインの承認)を獲得できていることが現在の成長につながっている。
―― 最後に、日本法人としての体制強化などは。
中尾 サービスエンジニアの拡充など日本法人でも人員の強化を進めている。17年から約200人の人員補充を行い、現在は800人を超える体制となっている。
(聞き手・特別編集委員 泉谷渉/副編集長 稲葉雅巳)
(本紙2018年11月15日号8面 掲載)