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第309回

日本航空電子工業(株) 代表取締役社長 小野原勉氏


5Gが市場再活性の起爆剤に
課題は「重点3市場のバランス」
量産・開発体制さらに充実

2019/2/1

日本航空電子工業(株) 代表取締役社長 小野原勉氏
 2023年に創立70周年を迎える日本航空電子工業(JAE)。この節目に向けて、「マーケティングに基づいた技術開発・ものづくりを基軸に『情報をつなぐ』『人と機器をつなぐ』製品によって5Gで繋がるモビリティー・IoT社会の実現に貢献」をビジョンに掲げ、さらなる高みを目指し、快進撃を続けている。主力事業は3部門。コネクター事業を筆頭に、タッチパネルを取り扱うUIS事業、センサーを主力製品とする航機事業で構成される。5年後の23年を目指しては、全事業とも第5世代移動通信システム(5G)攻略が必須となる。5Gが実現する大容量・高速・低遅延のメリットを活かした新市場を獲得してこそ、次なる飛躍が期待できるからだ。このため現在、開発・生産体制の強化を推進中。18年度末までにフィリピン第2工場敷地内に新棟(B棟)を稼働させる予定。ターゲットは携帯機器市場、自動車市場、産機インフラ市場の重点3領域だ。新たな飛躍に向けて邁進する同社の次なる事業戦略を、代表取締役社長の小野原勉氏に伺った。

―― まずは19年の市況感から。
 小野原 携帯機器、自動車、産機インフラの重点3市場とも、17年から活況を呈し、それは18年上期まで続いた。すべてにおいて上げ潮に乗っていたが、同年下期あたりから米中貿易摩擦の影響なども拡大し、事業環境が変化してきたと感じる。しかし、長期的視野に立てば、重点3領域の活性化は必至。19年は、次なる市場ニーズに確実に応えるための準備の年と解釈している。

―― 携帯機器市場の攻略について。
 小野原 携帯機器、とりわけスマートフォン(スマホ)は、当社コネクター事業の主力市場だ。今後は5Gの到来に期待したい。スマホも含め通信機器の世界は、5Gの実用化でさらなる高機能化が要求される。コネクターなどの電子部品は、高機能化の様々なニーズをキャッチアップした高付加価値品の提供が必要となるだろう。しかも、スピード感ある開発とリーズナブルな価格設定を実現するため、効率化は不可欠だ。競争は激化する。その準備を整えるのが19年と位置づけている。

―― 自動車市場の攻略法は。
 小野原 自動車市場は、CASE(ケース)による技術革新を背景に、100年に一度といわれる変革期に直面している。こうした事業環境の変化のなかにおいて、開発期間の長い自動車市場の3年先の需要をしっかり取り込み、売り上げを拡大していけるように、現在の商談に取り組んでいる。将来の成長に向けて確実に押さえておくべき市場である。試作ベースでの顧客獲得競争に打ち勝ち、量産に持ち込んでいく。

―― 車載コネクターで注力するエリアは。
 小野原 まずはADAS(先進運転支援システム)エリア。高精細カメラ画像のデジタル伝送用コネクターで勝負する。ADAS機能は今後、カメラ画像だけでなく、レーダーやライダーと融合し、認識機能が付加される。その際、映像のアナログ伝送では、画像と認識の合体にタイムラグが生じてしまう。デジタル伝送は不可欠となる。当社はすでに欧州メーカーを対象にデジタル伝送対応コネクターを納品済みであり、その実績をベースに現在、国内メーカーへの拡販を展開中だ。
 また、環境対応車のパワートレイン部も攻略する。この領域ではモーターやインバーターに使用される大電流・高電圧コネクターを展開していく。また、電気自動車充電用コネクター「KWシリーズ」も手がけており、現在はCHAdeMO仕様でV2H(Vehicle to Home)用途も含めて展開している。今後はCombo規格の製品の開発も検討していく。

―― 今後をにらんだ車載コネクターの方向性は。
 小野原 ADASの進化形として、自動運転が到来する。そしてコネクテッドカーの誕生により、5Gの活用が焦点となる。このとき、クルマはもはや1つの通信モジュールである。コネクターも、これまで以上の大容量データ処理、そして高速伝送に応えなければならない。また、クルマを通信モジュールと捉えたとき、USBの新規格であるUSB Type-Cコネクター「DX07シリーズ」も有効に機能する。当社は新規格策定の参画メンバーでもあり、先行開発の優位性を有している。同コネクターを携帯機器用途のみならず、自動車や産機インフラ市場などに向けても展開し拡大していく。

―― これら来たるべき市場ニーズに応える量産体制について。
 小野原 粛々と拡充を進めている。当社国内最大のコネクター工場で、携帯機器および車載用途の量産を担う弘前航空電子(青森県弘前市)は、18年に新たに金型の生産スペースを確保した。
 一方、海外では、コネクターとともにハーネスの生産拠点でもあるJAEフィリピン第2工場敷地内に新工場棟としてB棟を建設し、18年度内の稼働を予定している。B棟の延べ床面積は約1.8万m²。既存JAEフィリピン工場全体の延べ床面積は3.1万m²。今回、B棟が加わったことで、実に1.5倍以上の4.9万m²の車載用生産スペースを獲得した。
 また、欧州向けの製品開発や量産を担当する北米のJAEオレゴン工場では、19年以降、倉庫スペースを生産スペースに衣替えする計画である。

―― 開発体制についてはいかがですか。
 小野原 引き続き昭島事業所(東京都昭島市)を中心に行う。自動車市場においては、体制強化に向けベクトルを合わせて活動するなかで、欧州での体制を見直すとともに、これまで以上に強化する。欧州はドイツなど自動車先進国を含有するエリアだからだ。

―― M&Aの考えをお聞かせ下さい。
 小野原 現状、具体的なM&Aは進行していない。仮にM&Aを実行するのであれば、開発や生産をどこで行うのが効率的で、顧客のニーズに応えられるかということを、リソースとのバランスのなかで考えていかなくてはならない。

―― UIS事業の戦略をお聞かせ下さい。
 小野原 UISは、もともと人と電子機器をつなぐ入力用の電子部品を担っていた。現在は静電容量方式のタッチパネルが戦略商品である。従来は、ガラスを購入し、自社内でパネル化するガラスタイプが主流だったが、これに加え、フレキシブル性を有するフィルムタイプを製品化。パターン形成の印刷技術も独自開発した、フィルム型タッチパネルを17年夏に市場投入した。ターゲット市場は車載。高級車をはじめ、普及車も含めて市場が立ち上がりつつある。自動車の情報化が進むなか、車載ディスプレーも大型化し、かつ曲面化などデザイン性へのニーズも高まる傾向にあり、これをフィルムタイプで実現。同時に、メタルメッシュセンサーにより大画面化でも感度が落ちにくい高付加価値品を提供していく考えだ。

―― 航機事業の戦略は。
 小野原 航機事業ではジャイロセンサー、加速度センサーなどのセンサー群やリニアモーターなどを取り扱っており、とりわけ事業の柱となっているのが油田掘削向け製品だ。センサー単体のみならず、モジュール品によるソリューション提供を展開している。計測精度の向上を進めるとともに、米ヒューストンに配備した保守・サービス拠点の体制を強化し、業績を拡大中だ。さらに今後をにらんでは、センサー技術の新たな展開として、農機や建機の自動運転に取り組んでいる。人手不足の社会情勢を背景に、装置稼働の無人化にも貢献する考えだ。

―― JAEが抱える課題とは。
 小野原 現在3事業でビジネスを展開しているが、市場を俯瞰したとき、スマホ市場の比重が大きいことが当社の課題となる。スマホ市場のほかに、自動車市場と産機インフラ市場を重点3市場と位置づけているが、重点3市場のバランスを考慮すると、産機インフラ分野での製品開発力を3事業部門の共通テーマとして大幅にアップしたい。通信インフラも含めた、産機インフラ市場の徹底攻略に総力で挑戦したい。5G到来により3市場ともに大きな技術変化が起こるため、その変化をチャンスとして事業を広げていく。

(聞き手・編集長 津村明宏/松下晋司記者)
(本紙2019年1月31日号1面 掲載)

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