電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第322回

「250人全員が正社員、65歳定年制で世界価格競争に挑む」


~松阪のOKUMURAが目指す総合パイプオンリーメーカーへの道~

2019/2/15

 「自動車用ホース生産一筋で斗ってきた。しかしてこれからは、世界価格競争に負けない体質を身につけ、総合パイプオンリーワンメーカーへの道を目指す。自動車分野に加え医療分野、インダストリー分野などに多角展開していく」

 こう語るのは株式会社オクムラ(OKUMURA本社 三重県松阪市曲町637-1)の代表取締役社長の田中寛人氏である。同社は1973年に創立され、当初は自動車用ホースの仕上げ加工を手がけた。1987年に法人に改称し、1993年には本社工場増設と新社屋完成を成し遂げ、曲管高圧燃料ホースの生産を開始する。以来、自動車用ホース製造で地歩を築いてきたのだ。

 かつては自動車向け比率が95%であったが、現在は60%まで落としており、輸液チューブ、疑似血管チューブ、麻酔針保護プロテクターなどの医療機器分野、スパイラルホース、電線関係部材の固定フック、電柱関係部材の絶縁カバーなどの産業機器分野の比率を上げてきている。すなわち、自動車分野に依存する構造を改革し、1社寄りかかりの下請け企業を脱するべく、取引先を急速に増やしてきている。

 「医療では内視鏡用デバイス、超微細の注射針などの分野にも踏み込んでいる。電力会社との取引も本格化し、多くの工事用部材も提供している。産業分野への取引も拡大していく考えであり、今後は航空機分野へも進出したいと考えている」(田中社長)

 創業社長の奥村義治氏の後を引き継いだ田中社長は自分のカラーをオリジナルに打ち出す一方で、OKUMURAの持つ良き社風は今後も大切に保持していく考えだ。何しろこの会社に働く人たちは250人全員が正社員であり、しかも終身雇用を貫いている。そればかりではない。65歳定年制も確立しており、中高年労働力をかなり重視する経営姿勢を持っている。

 「いつもいつも人づくりにはこだわっている。会社にとって最高の財産はどこまで行っても人であり、ニッチな分野も多いだけに熟練工をどれだけ抱えているかで勝負が決まる。一方で多能工を徹底的に追求しており、一番忙しいところに人をつぎ込む変動シフトを確立している。このフレキシビリティーなくしてニッポンの中小企業は成立しないとさえ思っている」(田中社長)

 全社売り上げはここに来て急上昇している。2017年5月期は58億円、18年5月期は71億円となり、19年5月期は80億円を見込むという。先ごろ10億円を投入して新工場を立ち上げたことで、23年までには100億円を達成していきたいという。20歳で入社した田中社長は33年目を迎え、OKUMURAの看板を一手に担い、新たな斗いに挑んでいくのだ。また世界的な価格競争にもひるむことなく立ち向かうという。

株式会社オクムラ 代表取締役社長 田中寛人氏
株式会社オクムラ
 代表取締役社長 田中寛人氏
 「美しいものを創れ、と現場には常に言っている。品質の良いものは必ず美しいからだ。ものづくりを追求し続け、世の中に必要とされる会社を目指していきたい。会社は誰のものだ、という議論は常にされることであるが、私は明確に会社は社員のものだと思っている。人生の幸せはいつにかかって働く喜びを共有していくことだ。その雰囲気づくりについては、自分の総力を挙げていきたい」(田中社長)


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』、(以上、東洋経済新報社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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