商業施設新聞
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No.695

パン選びのこだわり


岡田 光

2019/2/26

大阪で人気のベーカリー「石窯パンの店 ゴッホ」
大阪で人気のベーカリー「石窯パンの店 ゴッホ」
 無性にパンを食べたくなる時がある。そんな時は、百貨店や商業施設でベーカリーを探す。時にはイオンモールのような広い郊外型ショッピングセンターでも、フロアを歩き回ってベーカリーを探すことがある。家では妻が朝・昼問わず頻繁にパンを食べているが、横で見ていても食べたいという気持ちになったことはない。なのに、取材で外に出たりすると、パンが食べたいという欲求に駆られる。テレビ番組でよく、「京都はパンの消費量が多い都市」という話題を耳にするが、京都人である筆者もその一人と言えるのだろうか。

 ベーカリーを選ぶ際、まず、その店がテイクアウトのみか、イートインできるかを必ず確認する。イートインできる店が増えたとはいえ、まだまだテイクアウトのみのところも多い。百貨店のように、ベンチなどがあって、かつ飲食できるスペースがあるなら、テイクアウトのみの店を選ぶが、近くにそのようなスペースがない場合は敬遠している。40歳を過ぎた男がベンチに座ってパンを食べている姿は、周囲に哀愁を漂わせてしまう。そんな惨めな思いをするくらいなら、女性ばかりのイートインスペースで食べているほうがましだ。最近は男性の1人客も増えており、味方が増えたと日々喜んでいる。

 食べる場所を決めたら、次は商品のラインアップだ。筆者は菓子パンでも、惣菜パンでも、なんでも食べる性分ではあるが、こだわりも少しはある。ひとつはチーズを使った商品が置いてあること。パン生地にチーズを練り込んだものや、チーズをパンの間に挟んだものなど、様々なトッピング方法があるが、筆者が好きなのは、パン生地にチーズクリームを挟んだものだ。特に、志津屋が提供する「ハイジのチーズクリームパン」は絶品で、柔らかいパン生地の中に、甘味と酸味を含んだチーズクリームが入っており、パン生地に練り込んだレーズンとの相性も抜群。志津屋を見つけたら必ず購入する商品のひとつである。

パンとサラダのコラボ店「ドンク&RF1 高岳店」
パンとサラダのコラボ店「ドンク&RF1 高岳店」
 もうひとつは、当たり前と思われがちだが、焼きたてパンが店頭に並んでいることだ。冷めたパンも具材が良ければ美味しいが、やはり、パンは焼きたてが一番美味しい。この焼きたてで好感を持てるのが、カスカードだ。カスカードは兵庫県西宮市に本社を置くベーカリー店で、商業施設や地下街で見かける機会が多い。同店では、焼きたてのパンを店頭のポップで表示するだけでなく、持ち帰る際に、わざわざ別の容器に分けて包装してくれる。取り立てて言うことではないかもしれないが、温かいパンは温かいままで、常温のパンはそのままで、そのほんの少しの心配りに好感が持てる。

 些細なことではあるが、こうした客のこだわりが商品の付加価値となり、ひいてはサービスの向上、ベーカリー業界の発展へと結びついているのだと思う。

 実際、ドンク、アンデルセン、神戸屋、ヴィ・ド・フランス、ハートブレッドアンティークといった既存プレーヤーに加え、メゾンカイザーや俺のといった新興勢力も出店を強化している。加えて、最近は高級食パン専門店や、パン&サラダのコラボ店まで出店するようになった。百貨店の衰退が続き、ショッピングセンターの新規開発も減少する中、これらのベーカリー企業が今後、どのような立地で新規出店を進めるのか。さほどパンを食べない筆者でも、ミミだけでも食べてみたい、ではなく耳を傾けたい関心事である。
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