商業施設新聞
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No.708

韓国・ディスカウント業界の行方


嚴 在漢

2019/6/4

超低価格をアピールするソウル市内の大型ディスカウント店
超低価格をアピールする
ソウル市内の大型ディスカウント店
 韓国流通市場を牽引してきた大型ディスカウント店の成長が鈍化しており、大きな転換期を迎えている。韓国では、オンラインショッピング(ネット通販)の急成長や、月2回の義務休業などの流通規制法の強化が重なり、マイナス成長と収益性の悪化という節目に遭遇している。特に大型ディスカウント店の低迷が表面化しており、急変する市場のトレンドに合わせた戦略の見直しが求められている。

 韓国金融監督院とソウル証券街などの資料によれば、大型ディスカウント店のトップを走るイーマートは、2019年1~3月期の営業利益が743億ウォン(約69億円)となり、前年同期比で51.6%減となった。証券会社らが予想していた平均値(1400億ウォン)を大きく下回った。また、同社のディスカウント店事業では、18年10~12月期も営業利益は前年同期比で53.1%減となっている。ロッテマートの18年通年の営業利益も前年比で79%減。特に、10~12月期は81億ウォンの営業損失となり、赤字を余儀なくされた。

 一方で、ロッテと新世界のディスカウント店事業はプラス成長したことを考えると、イーマートとロッテマートの不振ぶりが一層目立つ格好だ。

 このように、大型ディスカウント店の実績が低迷したことにより、リアル店舗の流通業界全体に占める割合も減少している。韓国産業通商資源省によると、18年の韓国ディスカウント店の総売上高は前年比で2.3%減少した。18年の大型ディスカウント店の割合は、4年前に比べて22%減ったが、ネット通販は37.9%増加しており、大型ディスカウント店とオンラインショッピングの位置づけは逆転した。

 これは、消費の両極化やオンライン中心の市場再編など、韓国流通業界の構造的な変化だけでなく、政府による義務休業といった規制が影響を与えたと分析されている。リアル店舗の長所である生鮮食品市場でさえ、eコマース企業らが競争に参入し、売り上げ規模は減少している。さらに、立地に対する規制も厳しくなり、大型ディスカウント店の新規出店は止まった。大型ディスカウント店業界第1、2位のイーマートとホームプラスは、19年度の新規出店計画がゼロである。業界では、こうした危機的な現状を打開するため、様々な対策に取り組む。

 例えば、ロッテマートを運営するロッテショッピングは、19年に国内の直営店を収益の中心とし、スマートストアを拡大するなど、デジタル・モバイル事業を強化しつつ、業績の改善に取り組む計画だ。ロッテマートは19年1月までにソウル、仁川、利川などで展開する3店を、最新技術を集約した未来型売り場であるスマートストアとしてオープン。また、同社はベトナムやインドネシアなど、東南アジアの既存店が好調となっていることから、さらなる収益性の増大を図る計画だ。

 イーマートは今後、規模の拡大とともに収益性の改善にも取り組み、総売上高20兆ウォン(約1.87兆円)達成という将来ビジョンを打ち出している。同社は、大型ディスカウント店の強みである価格競争力を確保するために、様々な努力を重ねている。一時的なイベントではない根本的な流通構造の革新を通じ、競争相手が追撃できない超低価格の商品群を確保するなどして、収益性の向上に臨む計画だ。
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