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第333回

エイブリック(株) 代表取締役社長兼CEO 石合信正氏


電池保護用と車載向け好調続く
更新投資で前工程キャパアップ

2019/7/26

エイブリック(株) 代表取締役社長兼CEO 石合信正氏
 日本政策投資銀行を筆頭株主とするエイブリック(株)は、2018年1月にエスアイアイ・セミコンダクタ(株)から社名変更し、1年余りが経った。代表取締役社長兼CEOの石合信正氏に事業状況などを伺った。

―― 18年度の総括を。
 石合 18年度は、第3四半期まで工場がフル稼働で推移した。第4四半期には市況全体が落ち込んだが、事前に状況を把握できたため、コスト対策を実施して投資案件の優先順位を付けていたことや受注残があったことで、目標数値を達成することができた。連結売上高は328億5200万円、営業利益は41億6900万円となった。19年度も同程度の計画だ。
 当社は売上高に占める海外比率が70%と高く、実勢為替レートは110.7円だったが、見積もりレートは105円と厳しく計画している。それでも目標数値を達成できるような複数の施策が実行できた。

―― 具体的には。
 石合 18年度は上期の需給が非常にタイトだったため、製品の棚卸しをするなかで不採算製品を見極めて撤退するなどの決断をした。今後伸ばしていく製品にフォーカスし、代理店もこれまでの8社体制から、新しい委託先を入れて6社にするなど、活性化を図った。19年度は海外代理店の活性化も計画している。
 また、お客様へは当社のFAEが、購買担当ではなく技術担当の部署に営業活動を行って新規案件を獲得したり、Webマーケティングのシステムを構築したことなどが奏功している。

―― 注力製品は。
 石合 (1)リチウムイオン2次電池用、(2)医療機器用、(3)車載用ICを事業の三本柱としている。
 (1)の保護ICはスマートフォン(スマホ)向けがメーンで、主要ブランド全社に採用されている。スマホ台数全体の伸びは鈍化しているが、保護ICは搭載個数が増えており、今後はワイヤレスイヤホンや5G対応機種などでさらに増加傾向にある。
 (2)については医療診断向けICを展開しているが、これをさらに横展開し、採用機器の拡充を進める。
 (3)は、EEPROMやホールIC、LDOやリセットICなど多数製品の採用が堅調に進んでいる。韓国や台湾の車載用途でもデザインインの獲得に注力しており、19年度は欧米メーカーへの営業活動も注力していく。

―― 新しい技術開発にも取り組まれています。
 石合 17年にCLEAN Boost技術を発表した。エネルギーハーベスティングで得られる1μW程度のごく微量な電力を30mWまで増幅させられる技術で、「スモール、スマート、シンプル」をビジョンにしているエイブリックにとって、その象徴たる製品だ。まだ業績に貢献するレベルではないが、発表以降、様々な企業からの引き合いが多く、ビジネスモデルが広がっている。世の中に貢献する技術として、中長期的にビジネスになるように育てていく。

―― 生産体制は。
 石合 前工程の高塚事業所(千葉県)、後工程の秋田事業所(秋田県)ともに更新投資を行った。前工程は新設備を導入して生産量を増やし、月産2万枚から月産2.5万枚程度までキャパアップした。プロセスノードは0.6~0.35μmで、以降の微細化は外部委託している。後工程は、これまで外部委託していためっき工程の一部を自社内に取り込み、電気特性検査設備を増設した。
 18年度は工場のフル稼働が継続し、生産数が過去最高となったため、スマホ向けを中心にジャパンセミコンダクター(岩手県)に委託した。今後、車載向けおよび医療向けも委託する計画だ。
 投資額は毎年30億円程度で、19年度も同程度を計画している。また、ISO14001と45001を取得する予定だ。

―― 社内風土の刷新にも取り組まれています。
 石合 社内活動として、女性だけのプロジェクトを作り、働き方改革を進めている。男性社員の人数が多いなかで、やはり女性視点の意見の吸い上げが必要と考えたからだ。すでにいくつもの改善提案が挙げられ、順次着手している。
 また、オフィスにも新しい試みを導入している。主に医療用ICを扱う立川オフィスと高塚事業所をカメラ映像でつなげており、壁全面に立川オフィスの映像が映り、会話もすべて聞こえることで、まるで1つのオフィスのようになっている。海外の従業員にも、日本と同様に情報が伝わっているかを確認できるシステムを作り、国内外で情報量の差が無いようにした。全社を挙げてシームレス化を進め、風通しの良い、明るく元気な社風を築いていきたい。

(聞き手・澤登美英子記者)
(本紙2019年7月25日号1面 掲載)

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