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第334回

住友電工デバイス・イノベーション(株) 代表取締役社長 長谷川裕一氏


GaNトランジスタ、10倍増産
5Gに備えて6インチ量産も準備

2019/8/2

住友電工デバイス・イノベーション(株) 代表取締役社長 長谷川裕一氏
 住友電工デバイス・イノベーション(株)(横浜市栄区金井町1、Tel.045-853-8150)は、ユーディナデバイスと住友電気工業との事業統合により2009年に設立された、通信インフラ用デバイスのトップメーカーだ。第5世代通信システム(5G)やIoTの普及に重要な役割を担っており、需要拡大に向けた準備に万全を期そうとしている。代表取締役社長の長谷川裕一氏に話を聞いた。

―― ご略歴から。
 長谷川 ユーディナデバイスの前身だった富士通に1985年に入社し、川崎工場でGaAs FETなど化合物半導体のプロセス開発やチップ設計に携わった。90年代には米国でマーケティング活動を4年間手がけ、携帯電話用モジュールを米国メーカーに大量に納入するなど成果を上げた。98年に山梨事業所へ戻ってからは無線マイクロ波通信の立ち上げに従事し、GaAs HEMT、いわゆるMMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)の拡大に努めてきた。

―― 近年はGaN HEMTへの注目が高まっていますね。
 長谷川 05~10年ごろまではLDMOSの性能向上によって無線通信基地局向けではGaAsからシリコンへの置き換えが進んだが、11年以降にGaNの採用が始まり、5G導入を控えた現在はGaNの性能優位が明らかになった。
 当社はGaN HEMTの開発を00年に開始し、06年から世界に先駆けて量産を始めたが、需要が拡大し始めたのは11年からだ。5G通信のサブ6(6GHz以下)で周波数が高い帯域はシリコンLDMOSでは対応できず、現状でGaNが7割以上のシェアを占めている。また、既存インフラの4GでもGaNのシェアが高まっており、4G向けでもシリコンLDMOSのシェア8割に対し、GaNは2割までシェアを上げている。

―― 貴社の事業構成について。
 長谷川 売り上げベースで申し上げると、光デバイスおよび光コンポーネントが6割、電子デバイスが4割という構成だ。
 光デバイスは受発光デバイスを主力としており、なかでもInPベースのDFBレーザーが主力だ。これをEML(Electro-absorption Modulator Integrated Laser Diode)として供給している。現在は100Gbps向けがボリュームゾーンで、波長多重のバックホール用途が中心だ。18年後半から主力市場であるデータセンター向けの需要が軟化しているが、20年から400Gbpsの需要が本格的に立ち上がってくる見込みとなっている。

―― 電子デバイスについてはいかがですか。
 長谷川 19年度はGaNトランジスタの構成比が半分を超える見込みで、生産が追い付かないレベルの引き合いをいただいている。無線通信基地局間の増幅器には、4~40GHzではGaAs MMICが使われるが、3GHzまでのRRH(Remote Radio Head)にはGaNが標準で搭載されているためだ。
 今後は競合メーカーが増えてくる可能性があるが、現状でGaNトランジスタを量産供給できるメーカーは世界で当社と米国2社しかなく、このうちGaNとGaAsを両方供給しているメーカーは当社と米国の1社しかない。当社は基地局用GaNトランジスタで世界シェア7割を獲得している。

―― 非常にシェアが高いですね。
 長谷川 GaNトランジスタはSiCウエハーベースで製造しているが、これまでGaAs HEMTやMESFETで培ってきた技術を応用し、プロセスの高い再現性によって、性能ばらつきが少なく低消費電力で広帯域化を実現できている点を評価していただいていると自負している。マッシブMIMO向けなどの需要増によって、19年度のGaNトランジスタは18年度比で2割増収になるとみており、当社最大の製品になる見込みだ。

―― 増産計画を教えて下さい。
 長谷川 山梨事業所の4インチラインを増強しており、17年のGaNトランジスタの生産量を1とすると、20年には10になる計画を推進中だ。ウエハーの処理能力でみると、19年は17年比で2倍、20年には同比3倍になる計画だ。
 これに加え、SiCウエハーサプライヤーの1つである米ツーシックスと18年10月に戦略的協業を結び、ツーシックスのニュージャージー工場に6インチのGaN専用量産ラインを設置する。21年から量産を開始する予定だ。

―― そのころには5Gインフラがある程度普及していそうですね。
 長谷川 米中の貿易摩擦など不安定な要素があるものの、5Gプラスと呼ばれるミリ波帯が23年ごろから立ち上がってくるとみており、ここに向けたGaNトランジスタが新たに必要になる。エピ構造の改良やゲート長の微細化などが必要で、製造技術は高度になるが、これを実現して外販半導体メーカーとしての地位をさらに上げたい。
 こうした増産活動と並行して、RF分野のアプリケーションエンジニアを増員していく。中国や欧米にサポート拠点を新設したいと考えており、顧客が当社のデバイスを用いてハードを設計するのを支援する体制も強化するつもりだ。

(聞き手・編集長 津村明宏)
(本紙2019年8月1日号1面 掲載)

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