電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第341回

自動運転技術の進化


見えてきた自動運転レベル3の市場投入

2020/3/13

 2019年(暦年)における国内自動車メーカーの自動車生産台数を見ると、トヨタが前年比1.9%増の905万3500台とプラス成長で推移したものの、日産、ホンダ、マツダ、三菱自動車、スズキ、SUBARUの各社は軒並みマイナスとなった。さらに、足元では新型コロナウイルスの感染拡大から、民生機器をはじめとした様々な製品のマーケットが頭打ちとなっており、感染の終息まで市場の先行きは不透明な状況となっている。

 一方で、自動車産業においては、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)をはじめとした、次世代技術の革新が目覚ましいスピードで進んでいる。なかでも、ADAS(先進運転支援システム)、さらにはその先にある自動運転技術の進化は、交通事故の低減(将来的には交通死亡事故ゼロ)や様々な利用者への自由な移動の提供、新たな移動の喜びの提供などをもたらすものと期待されている。

 日産では、高速道路においてハンズオフの運転を実現する「プロパイロット2.0」を搭載したスカイラインの新モデルを19年秋からリリース。また、ホンダでは、20年中に技術を確立し、21年から高速道路における自動運転レベル3を可能とする車両の市場投入を計画しており、クルマを取り巻く環境は新たな時代を迎えようとしている。

お台場で自動運転レベル4の試乗を計画

 トヨタ自動車は、AIや自動運転技術などの研究開発を行うToyota Research Institute, Inc.(TRI)が、20年夏ごろ(7~9月)に自動運転実験車「TRI-P4」を用いて、東京都内で一般向けの試乗を行う計画だ。トヨタはこのTRI-P4実験車で、レベル4相当の自動運転のデモンストレーションを実施する。

 TRI-P4実験車による試乗は、交通量が多く、渋滞も頻繁に起こるお台場地区で行う予定。この地域は、交通環境が複雑で、歩行者や車両などが複雑に存在する交通状況が想定される。様々な道路インフラや高層ビルなどがある厳しい環境下でもあり、技術力を示す絶好の機会になる。

 TRIのCEOであり、トヨタのフェローでもあるギル・プラット氏は「お台場の複雑な交通環境で自動走行を成功に導くということは、限られた短い時間の中で技術をより早く向上させるという、高い目標を自らに課すことにほかならない。今回の同乗体験の実施に向け、TRIはトヨタの先進技術開発部門と、TRI-P4の自動運転ソフトウエアの実用化を担当しているトヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(TRI-AD)とともに一体となり開発を進めている」と語る。

トヨタの自動運転実験車「TRI-P4」
トヨタの自動運転実験車「TRI-P4」
 なお、TRIは、TRI-P4実験車の自動運転技術のテストを、米ミシガン州オタワレイクのテストコースで実施。そこで、TRI-P4実験車が自動走行する場所の厳しいインフラの特徴や、運転シナリオを再現している。さらなるテストについては、お台場のほか、米ミシガン州アナーバー、カリフォルニア州ロスアルトスの周辺の公道でも行っていく。

プロパイロット2.0では周囲360度をセンシング

 日産自動車は、高速道路の複数車線をナビシステムと連動して設定したルートを走行し、同一車線内でハンズオフ(ドライバーが前方を注視して道路・交通・自車両の状況に応じ直ちにハンドルを確実に操作できる状態でのみ)が可能となる運転支援システム「プロパイロット2.0」を発表し、19年秋に市場投入にしたスカイラインから搭載を開始した。このプロパイロット2.0のキーテクノロジーは「3D高精度地図データ」「360度の周囲センシング」「インテリジェント インターフェース」の大きく3つだ。

 地図データでは、高速道路の形状をセンチメートルレベルの細かさでデータ化した3Dの高精度地図データを採用している。これには、すべてのレーンの区分線情報と、速度標識、案内標識などの情報も含まれている。道路と自車の位置関係を常に高精度に把握するとともに、カメラで見える範囲より先の曲率・勾配・カントを先読みすることで、正確なステアリング制御と滑らかな速度制御を実現している。「例えば、車両を元の車線に戻す際に、ステアリングに介入してしまうと、ドライバーが居眠りをしていた場合、ステアリングの動きに反応して急に戻してしまうことがある。そのため、車線を戻す際には、内側の車輪にブレーキをかけて操作している」と同社エンジニアは語る。

 センシングシステムを見ると、従来の「プロパイロット」では、高性能の単眼カメラで前方車両との距離や車線内の自車位置を計測し、コントロールユニットで情報を処理してステアリング・アクセル・ブレーキを制御していた。しかし、プロパイロット2.0では、トライカム(画角150度/54度/28度)と4個のサラウンドカメラに加え、5個のレーダー、12個の超音波センサーを搭載することで、白線や標識、周辺車両など、周囲360度のセンシングを可能としている。

プロパイロット2.0をスカイラインに搭載
プロパイロット2.0をスカイラインに搭載
 ドライバーとのインターフェースでは、ドライバーモニターが運転者の前方注視を常に確認。また、先述のセンシング情報をリアルタイムに表示するとともに、地図上の位置と周囲の交通状況を考慮し、システムが車線変更などを最適なタイミングで分かりやすく提案してくれる。

日系メーカー初 レベル3を市場投入へ

 ホンダは、高速道路での車線内運転支援、高度な車線変更支援、渋滞時における自動運転技術(レベル3相当:アイズオフ)を年内に確立し、21年から同技術を搭載した車両を市場投入する計画を明らかにした。

 同社は、交通事故ゼロ社会の実現に向けて運転支援技術の高度化、自動運転技術の実現に向けて取り組んできた。運転支援・自動運転は、レベルが上がるにつれてドライバーの役割が減少し、システムの役割が増大することになる。

 自動運転車の実現には、「パーソナルユース自動運転車」「限定エリア自動運転車」の大きく2つのアプローチがある。パーソナルユースでは、カメラやレーダー、LiDAR、GPS、カーナビレベルのマップなどを使用して外界を自律的に認識しながら、地図情報に極力頼らない人間のような運転の実現を目指していく。一方の限定エリア自動運転は、LiDARやインフラ、高精度マップ、高精度GPS、カメラ、レーダーを組み合わせ、高精度マップを主体的に利用したものになる。

 同社が市場投入を目指す高速道自動運転技術は、車線内運転支援・高度車線変更支援機能により、ハンズオフのまま目的地に向けて連続的に車線を変更することができ、長距離もストレスフリーで運転することができる。そして、渋滞時(時速50km以下)では、自動運転レベル3に移行し、アイズオフでの走行(周囲の安全監視から解放)を実現。ドライバーは、テレビやDVDなどを視聴することが可能となり、従来にはない快適な運転環境を享受できる。

 この機能を実現するシステム構成は、(1)外界認識(カメラとレーダー5個のフュージョン、カメラとLiDAR5個のフュージョン)、(2)自車位置認識(マルチGNSSアンテナ、高精度地図、バックエンドサーバー)、(3)ドライバー状態検知(ドライバーモニターカメラ、把持センサー・操舵トルク検知)、(4)HIM(センターディスプレー、HUD、ステアリングインジケーター)、(5)車両制御・機能冗長(ブレーキ冗長、EPS冗長化、DC/DC電源の追加と2ndバッテリーの搭載)を、メーンECUによって制御・処理することになる。

 なお、同社では、顔認識や動体補足、行動予測などの先端AI技術の開発を行うスタートアップ企業や大学と連携することで、自動運転用AI技術を高度化。25年ごろをめどにパーソナルカーユースに向けた自動運転レベル4技術の確立を目指していく。

30年に死亡交通事故ゼロ実現へ

 SUBARUは、独自の総合安全思想に基づいた安全技術(4つの領域)の開発を進めている。0次安全では、乗員の良好な視界の確保、疲れにくい車両・パッケージの実現に取り組んできたが、今後はドライバーモニターシステムによる乗員認識性能の向上を図る。1次安全では、クルマの動的性能/危険回避性能の向上から、今後は車両運動制御機能のさらなる強化を進める。予防安全では、従来のリアルワールド重視から、画像認識性能の向上・自動化に取り組む。衝突安全の領域では、乗員保護だけでなく、交通弱者の保護拡大、ADASとの連携強化を進めていく。さらに、将来的にはこれらの総合安全思想に、つながる安全、知能化技術を融合することで、「2030年に死亡交通事故ゼロ」の実現を目指していく考え。

 同社では、ステレオカメラの代名詞でもある「アイサイト」をベースに、安全技術の高度化を進めている。20年代前半においては、視野角の拡大、データ処理能力アップ、全周囲センサーとの協調を可能とする新世代アイサイトにより、交差点での事故対応の強化、高速道路での運転支援の拡大を目指す。その後20年代後半には、運転支援技術のさらなる進化により、障害物の認識判別力の向上、統合制御の拡大により一般道での事故シーンへの対応を強化するとともに、インフラ・コネクテッドとの連携により、自動運転システムの導入、自動駐車・自動バレー駐車などの機能を提供していく。

SUBARUにおける運転支援機能の進化
SUBARUにおける運転支援機能の進化
 これまで、ステレオカメラ単体によって運転支援を行ってきた同社だが、今後は、フロントならびに後部の各コーナーにレーダーを搭載し、アイサイトと組み合わせることで360度の周辺検知を実現していく。さらに高精度の地図ロケーターを融合することで、高速道路での車線変更支援やカーブ予測自動減速、渋滞時のハンズオフ機能などを装備する。

電子デバイス産業新聞 編集部 記者 清水聡

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