電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第366回

アイシン精機㈱ 執行役員 アイシングループ 情報・電子バーチャルカンパニー プレジデント 電子商品本部長 植中裕史氏


4月に「電子センター」始動
中長期で新規センサー開発へ

2020/3/19

アイシン精機㈱ 執行役員 アイシングループ 情報・電子バーチャルカンパニー プレジデント 電子商品本部長 植中裕史氏
 トヨタグループの大手ティア1として、自動車部品総数約3万点と言われるうちの約半数に相当する幅広い自動車部品を手がけているアイシン精機㈱(愛知県刈谷市朝日町2-1、Tel.0566-24-8441)。100年に一度の大変革期に挑むべく、2017年4月からバーチャルカンパニー制を導入し、会社の枠を超えた事業軸で総合力を発揮できるグループ連携体制を急ピッチで推進している。さらに20年4月からは進化させたカンパニー制へと舵を切る。その先の21年4月にはアイシン精機とアイシン・エイ・ダブリュ(アイシンAW)の経営統合が予定されている。
 同社で各種ECU、センサーなど主要電子デバイス関連を一手に担うのは、アイシングループ情報・電子バーチャルカンパニー(VC、20年4月から電子センター)だ。同組織を統括するアイシン精機執行役員兼情報・電子VCプレジデント電子商品本部長の植中裕史氏は、福岡で大学まで過ごした後、1983年4月にトヨタ自動車へ入社。トヨタ自動車で電子技術関連一筋に歩み続け、その豊富な知識と蓄積をアイシングループに活かすべく、6年前からアイシン精機で引き続き電子技術領域を率いている。
 情報・電子VCの現状および新設される電子センターの今後の展望など植中氏に幅広く聞いた。

―― VCは4月からカンパニー制へ移行する。
 植中 17年4月からアイシングループ各社の情報・電子技術を担っているのが情報・電子VCだ。
 情報・電子VCには、カーナビゲーション事業をベースとしてCASEのC(コネクティッド)とS(シェアード/サービス)への事業拡大を進めている情報技術部隊と、各種ECU、センサー、アクチュエーターを開発し、社内カンパニーへ横串で提供する電子技術部隊の2つがある。
 そこで、20年4月からCとSのさらなる開発加速を狙い、情報技術部隊を分離独立し、「CSS(コネクティッドサービス&ソリューション)カンパニー」として始動することになる。(21年4月の経営統合まではアイシンAW内に本部を設置)。
 一方、残る電子技術部隊は「電子センター」として始動し、私は引き続き電子センターを率いていく。21年4月の経営統合では、アイシンAW内の電子技術部隊と統合することになる。

―― 電子センターが担う情報・電子技術は。
 植中 各種ECU、センサー、アクチュエーター、あるいはそれらが一体となった製品を担っていく。スマートセンサー、スマートアクチュエーターなど自動運転や電動化、利便性向上に向けたインテリジェント部品などが該当する。

―― 各種センサーと言っても様々です。
 植中 まず既存品の視点では、当社はAT(オートマチックトランスミッション)で世界トップであり、このATの歯車の回転数を検出し、最適な燃費に基づいた変速タイミングを算出するために使用されるセンサーを手がけている。また、インバーター内の電流センサー、ブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキペダルストロークセンサー、静電センサーの原理を応用し、ドライバーがドアノブに触れる時などの様々な操作を検出してドアの自動開閉を行う人センサーなどは、自動運転・電動化、利便性向上に向けてさらなる伸長が期待できる。

―― 中長期視点からの各種センサーとしては。
 植中 CASEおよび電動化に向けて、センサーがどう変化していくのか。こうした新規センサー開発に取り組むことは中長期展望の1つとなる。すでに開発を進めている案件としては、車室内の乗員検知や車室外からの人の近接を検知するための電波センサーがある。超音波、ミリ波レーダーなど選択肢も周波数も様々であり、検出アルゴリズムの開発を含め、外部の各専門企業とともに開発中だ。また、長期的には臭気センサーや、電池向けのあらゆる用途を含有するガスセンサーについても、各専門企業と協業しながら開発の検討を始めている。

―― 電子部品では。
 植中 実は、電動ウォーターポンプ、電動オイルポンプなどの制御基板でも当社は世界№1のポジションにある。電動化に伴う伸びしろの1つであり、今後、増産体制を検討する可能性がある。

―― 電子センター(4月発足)の生産体制は。
 植中 主力拠点は半田電子工場(愛知県半田市日東町)であり、各種ECU、センサー、アクチュエーター全般を生産している。なお、前述の静電式人センサーなどはアイシン東北(岩手県胆沢郡)でも担っている。また、アイシンAWの岡崎工場(愛知県岡崎市岡町)ではAT用ECU、カーナビゲーション用ECUなどを生産している。
 一方、海外では米イリノイ州の工場でECU、米カリフォルニア州の工場でセンサーおよびアクチュエーター部品を生産している。中国では、アイシン精機の広東省の工場でECUを、アイシンAWの江蘇省の工場でECUを含むAT関連を担っている。欧州では、アイシンAWのベルギーの工場でECUなどを含むATやカーナビゲーション関連を生産する。

―― 生産キャパは足りていますか。
 植中 国内工場は現有でまかなえるとみているが、海外拠点は海外での現地生産向けに先々は増強の検討もあり得る。

―― 業績面を含めて今後の展望を。
 植中 4月から電子センターという新体制になるため公表できる中長期数値はないが、実績として情報電子VCとして19年3月期は売上高1240億円を達成し、20年3月期は情報関連他の公表値として1380億円を見通しており、現状では達成できる予定だ。前述のように幅広く横串展開している点が堅調な推移につながっている。
 アイシングループは、CASE商品開発費比率を23年度に50%以上へ高めていく方向性にある。それに貢献する新規ECU、センサーを加味しながら、電子関連の売り上げは今後も右肩上がりの伸長を続けていく。会社全体では、20年度をボトムに今後5カ年で伸長する計画を描いている。

―― GAFAの台頭などIT企業の新規参入も相次いでいます。
 植中 自動車部品メーカーだからこそ可能な強さが必ずあると見ている。たとえば、自動車部品から得られる各種車両データを活かした各種サービス提供やシステム開発はGAFAには難しいだろう。アイシングループではこうした強みを活かした実証実験も始めており、たとえば、道路の補修個所について車両情報をクラウドと連動させ自動検知するサービスなどは、車両情報があればこそのサービスだ。

―― 情報・電子VC、4月からは電子センターを率いるにあたり大切にしていることは。
 植中 ご説明したように電子センターは社内の各カンパニーのシステム商品の電子部品を担うことになる。その際、自動車メーカーから、あるいは社内カンパニーから「こういう部品が欲しい」と言われるのを待つのではなく、我々から電子技術でできることを提案していく自主性を重んじていきたいと思っている。攻めの姿勢で積極的に。これを実現するために心がけていることは、システム開発部隊、自動車メーカー、外部の電子デバイス企業など、あらゆる方々とのコミュニケーションだ。そのなかで、我々から提案している案件も複数生まれ始めている。

―― 最後に電子デバイス・電子部品関連各社へのメッセージを。
 植中 サブアッセンブリーでは急速に一体構造化・小型化ニーズが高まっている。こうしたニーズに応える小型化技術、カスタムIC作り込み技術、プリント基板と複数部品の接続技術、高密度プリント実装基板技術など、業界各社様と協業しながら一緒に未来の新規デバイスを創造していきたい。また、前述のガスセンサーや電波センサーなど新たなセンサー領域が生まれつつある。こうした新規ニーズに向けた新規開発で協業できる仲間も求めている。昔は「民生技術の信頼性が高まった後に自動車へ」というスピード感だったが、今は違う。スタートアップ企業なども含め、各社様との前向きな協業を大切にしながら、ともに未来を切り開いていきたい。

(聞き手・高澤里美記者)
(本紙2020年3月19日号1、2面 掲載)

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