商業施設新聞
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
No.376

妄想の旅


古沢 大輔

2012/7/24

ハワイっぽい雰囲気の中、ゆったり過ごせる
ハワイっぽい雰囲気の中、ゆったり過ごせる
 ついに夏到来。子供ならずとも、海や山へと繰り出したくなる季節だ。個人的には、海ならハワイか、沖縄へ行きたい。陽の光をチラチラと照り返すさざ波、底の白砂まで見通せる澄みきった海、海中を右へ左へとゆらゆら舞う色鮮やかな魚たち――。泳ぎ疲れたらココヤシの街路樹の下に身体を横たえて、寄せては返す波音にたゆたうのも良い。


 さて、このような夢や妄想の類はどこまでも広げられるが、ふと我に返ると、静かに近づいてきたデスクに「早く原稿を出せ」とせっつかれる厳しい現実が待ち構えている。本欄の締め切りはとっくに過ぎており、こうした非生産的な逃避行動にうつつを抜かしているわけにいかないのだ。
 それでもなんとか、脳内で旅行を楽しみながら、同時に原稿も仕上がるような都合の良い方法はないものかと考えていると、窮すれば通ず、うってつけの新規オープンが舞い込んだ。7月14日に開業した、横浜市のみなとみらい21地区にある「横浜ワールドポーターズ」1階に開業した新商業ゾーン、その名も「Hawaiian Town(ハワイアン タウン)」だ。

感じの良いハワイアンセレクトショップが並ぶ
感じの良いハワイアンセレクトショップが並ぶ
 大きなSCの一角にできた小規模ゾーンながら、これでなかなか良くできている。一歩足を踏み入れると、どこかで見たことのある風景。カラカウア通り沿いの、「モアナサーフライダー」ホテル向かい側にあるインターナショナル・マーケットプレイスを思い出した。ゾーン中央部には、作り物だがシンボル的な大きな木があって、その木陰に椅子とテーブルが並んでいたりする。ネックレスなどのお土産をたくさん並べた屋台車が店を構えていたり、アロハシャツを着た人たちが周辺を目的もなくウロウロしていたりする。
 ショップは全21店で、後援するハワイ州観光局の高畑エリック局長いわく「いろんなブランドが入っていてびっくりした。ハワイのベストが揃った」と太鼓判を押す充実のラインアップ。インターナショナル・マーケットプレイス内で、実際に営業しているガーリックシュリンプの人気店「BLUE Water Shrimp」も国内初出店した。

 また、アラモアナSCやモアナサーフライダーに店を持つカフェ「HONOLULU COFFEE」も、落ち着いて良い雰囲気。看板メニューの「マカデミアナッツフレーバーコーヒー」をひと口含むと、豊かな甘い香りが鼻先に広がって、南国での楽しかった思い出を心に甦らせる。もちろん、ハワイを代表するコナコーヒーも提供しており、「コナブレンド」であればマカデミアと同じSサイズ300円からというお手ごろ価格で味わえる。
 横浜は、ハワイ国王・カラカウアⅠ世が日本で最初に立ち寄った港町。今でも日本最大のハワイイベント「アロハ ヨコハマ」(7月27~29日)が開催されるなど、2つの土地は縁が深い。そういった土地柄も手伝って、ハワイアンタウンはちょっと一服、ハワイ気分にひたれる面白いゾーンに仕上がっている。

 あえて欲を言えば、備え付けの椅子やテーブルが白プラスチックのもっと安っぽいものだったり、怪しい日本語であれこれ売りつけに来る販売員なんかがいると、より真実味が出るのだが、まあ、そこまで求めるのなら本場に行って来いという話。逃避目的のつかの間の妄想旅には、十分こと足りる舞台装置が揃っている。
サイト内検索