商業施設新聞
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No.383

日中関係の早期改善を願って


登坂 嘉和

2012/10/9

多くの若者で賑わっていた平和堂の五一広場店
多くの若者で賑わっていた平和堂の五一広場店
 中国国内において、尖閣諸島問題を発端とした大規模な反日デモが行われ、日系企業の工場や、小売業では平和堂やイオン、イズミヤなどの店舗も大きな被害を受けた。

 平和堂によると、9月15日に中国各地で反日デモが発生したが、湖南省長沙市と株洲市において発生したデモでは、同社子会社の平和堂(中国)有限公司が運営する五一広場店と東塘店(長沙市)、株洲店(株洲市)で、投石や内外装の破壊、乱入などを繰り返した。店舗は臨時休業していたため、顧客や中国人従業員および日本人駐在員に人的被害は無かったという。
 臨時休業した3店には、幹部のみが出社した。当日の午後2時過ぎ(日本時間)に長沙市の五一広場店で入口が壊され、店内にデモ隊の一部が乱入。同時刻に東塘店も侵入された。また、株洲店は夜10時過ぎにシャッターを壊されて乱入され、3店の中で最も大きな被害を受けた。店内の陳列什器やエスカレーターが壊され、化粧品などの商品も略奪された。
 同社では、社員や駐在員の身の安全を確保するため、日本人が多く住む宿泊施設からホテルへ避難させ、社用車も日本製以外のレンタカーを使用したという。18日以降は、当局が警備員を店舗の回りに配置したことで進入はなくなり、翌日以降は落ち着きを取り戻しているようだ。

 その後、平和堂では売り場の調査と在庫の確認を行った。被害は建物の1~2階部分が大きく、概略として建物、内装、レジ、什器、商品などで約5億円に及ぶ。さらに、復旧工事による11月ごろまでの休業で、従業員への給与支払いを含む営業損失は13億円ほど、現時点ではトータルで約18億円が見込まれる。このうち、3億~4億円は損害保険の対象となるという。
 同社の店舗は百貨店形態で、直営が2割、テナント部分が8割を占めており、テナントの被害は把握していないが、平和堂と合わせて30億円規模の損害が予想される。

 そもそも平和堂の中国進出は、1983年に滋賀県と中国湖南省が姉妹都市となったのがきっかけ。それぞれ、琵琶湖、洞庭湖を抱える自治体として、友好省協定を締結し文化交流が始まった。その後、名産品の展示即売会などを通じて平和堂の「商い」が高く評価され、平和堂に湖南省への出店が要請され、94年に同社と湖南省は合弁会社の湖南平和堂実業有限公司(現・平和堂(中国)有限公司)を設立。98年11月に、省都の長沙市中心部に1号店の「湖南平和堂商貿大厦 五一広場店」がオープンした。
 こうした両国の友好の深まりとともに誕生した商業施設が、今回、大きな被害を受けたことが残念でならない。

 小売業各社は、現時点で中国国内での出店を中断するという判断はしていない。平和堂は、長沙市に4号店を13年夏に開設する。イトーヨーカ堂も成都市で6号店、7号店の計画を進めている。イオングループの青島ジャスコは今回のデモで被害を受けたが、イオンモールは中国国内で今後3年間に9つのSCモールを開発する計画を発表しており、当面はプロジェクトを予定どおり進めるという。
 現地で得られた利益は、中国国内で内部留保とするか、再投資に使われる。両国のためにも、早く事態が沈静化し、関係改善が図られることを祈っている。
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