商業施設新聞
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No.764

自然はもはや商業施設のなか


山田高裕

2020/7/14

 川遊びが子どもにとって当然のものでなくなってから、どの程度経つのだろうか。1990年代ごろに少年時代を過ごした筆者の生活圏では、すでに近所で川遊びができるような川は存在していなかった。川遊びができる場所は自然豊かな川辺の観光地や、人の少ない田舎のようなところだけで、川で遊ぶ子どもというのは実体験ではなく、物語の中にしかないようなものだった。

 4月に東京都立川市で複合商業施設「GREEN SPRINGS」が開業した。中心に緑地や芝生広場を設置し、周りを商業店舗、ホテル、オフィスなどで囲んだ施設で、飲食や雑貨系物販など多彩な店舗が出店している。本来は多摩エリア最大規模と言われたホールが施設の核で、集客の肝として期待されていたが、昨今の新型コロナウイルス感染拡大により、ホールの開業ができなくなっている。こうした中、人気を集めているのが施設内の緑地スペースと、ホール横の小川ゾーンだ。

「GREEN SPRINGS」の小川ゾーンで遊ぶ親子連れ客
「GREEN SPRINGS」の
小川ゾーンで遊ぶ親子連れ客
 特に小川ゾーンでは、平日にも関わらず多くのファミリー客が集まり、子どもに水遊びをさせている光景が見られた。親子ともども裸足になり、流れる水に足をつけながらはしゃぐ姿は、今や見られなくなった川遊びの光景を彷彿とさせるものに思えた。生活圏から消滅した「川遊びの場所」は、現在では商業施設の中に存在しているのだ。

 川に限らず、生活圏から消えた緑や自然の遊びの場を設置し、集客要素とした商業施設は多い。施設内に設けるにとどまらず、公園内に商業施設を設置し、公園と一体化して遊びの場と融合させた施設も多数ある。7月28日に東京都渋谷区で開業予定の「MIYASHITA PARK」は、旧宮下公園の跡地に建設した複合商業施設で、屋上部分に緑地公園や芝生広場、運動場などを設置した施設だ。下層の商業施設や、併設するホテルに加え、緑地や旧宮下公園でも有名だった運動場が重要な集客要素となっている。

 こうした公園や水辺などの空間を設けた商業施設の需要は、このコロナ禍の下、重要性を増しつつある。ステイホームが要請され、県をまたいだ外出・レジャーが色々と難しくなる中、溜まっていくストレスを屋外で発散するにはこうした近所の商業施設の自然空間がベストの選択肢となっていくからだ。これからの子どもの屋外での遊びは近所の空き地ではなく、商業施設の中でやるという時代になっていくのかもしれない。
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