電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第2回

日本が誇る品質が良いだけの製品は売れない


~アジアのコピー文化にどう対抗していくのかが課題

2012/12/7

 シャープ、ルネサス、日本の電子工業界は暗い話題ばかりであるが、何か実態とかけ離れているような気がしている。小生は数年前まで、東南アジアや中国で仕事をしていたが、現地の経営者は一様に、「もっと日本はしっかりしてくれ。日本が落ち込んだらアジアはもっと落ちて死んでしまう」と話していた。彼らは、困った時の神頼みが日本頼みであり、日本製の商品の質と性能を落として、それ以上に価格を下げて商売をするので、日本が新製品を出して世界の市場をリードしてくれないとビジネスが無くなるという変な危機感を持っている。

 しかし最近の世界的なヒット商品は米国アップル社の物であるから、欧州で基礎技術ができ、米国で製品化され、日本で商品化される、と一時言われていたが、このサイクルがずれてきているのは確実だろう。カシオのデジカメとGショック、任天堂の家庭用ゲーム機、最近は高級電気釜とコンセプトが世界に受ける製品が売れ、品質が良いだけの製品は売れない。この状況への対応が余りに遅いのではないか?

 かつて、昭和30年代の米国政府は共産圏との競争があり、このために日本の経済を良くしようと米国企業に日本の企業との連携を勧めた。AT&TはNEC、モトローラは最初はアルプス電気、次に日立、というようにパートナーを設け、知財を無償で提供してくれていた。このパートナーシップで大きく成長できた日本企業は多い。実際、米国のAT&Tに平成の年代になってから訪問し、特許や知財の話となった時、NECはAT&Tの子会社だから特許問題は気にしなくてよい、というような発言があり、(当時すでに協力関係は解消されてかなりの年数が経っていたのに)驚いた記憶がある。

 その後、日本が成長して、昭和30年代後半から40年代は、今度は日本企業が韓国、台湾の企業と合弁を組んだり、下請けにしたりしながら、これらの国の経済の発展に寄与してきた。小生の先輩には台湾の駐在や、韓国の駐在の経験者が多数いて、現地で様々な技術の指導をしていた。

 反面、今や忘れ去られた「キーセン観光」なる、国辱的な、今の言葉にすればセクハラ国とでもなるのか、変な旅行が流行ったりした。当時の中国は竹のカーテンの向こう側で実質的には世界の経済への影響度は低く、貿易も極めて少なかった。しかし、東京オリンピックの直前に地上核実験を行って日本全土に核の灰をまき散らすといった迷惑な隣国であった。これは今も変わらないような気がする。

 しかし台湾、韓国が力をつけてくるに従い、これらの国に進出していた企業は日本に回帰してきた。そして、より安価な労働力を求めてインドネシアやフィリピンに展開していったが、政情不安などで戻ってくるころに中国が引き受け手となり、現在に続く中国への進出の拡大が始まった。

 現在、中国と問題が起きている。領土は資源の問題であるが、最も大きな問題は賃金と経費の増加で、まもなく日本で物作りをした方が全体では安価になり、過去の台湾、韓国からと同じように日本企業は、いつか日本へ回帰してくるのであろうと見ている。

 世界に低賃金を求めて工場を移していくのは、工場があってこその生産技術の開発には大きく不利となる。特に日本が得意とする「カイゼン」は生産現場との協力が不可欠。躍進しているソニー半導体の発展のキーは開発センターが工場の隣にあることと報道の記事で見た。これこそ、本来の技術を磨き、オンリーワンの製品を作るコツではないか。コスト競争のために海外に工場を移しても、製品の改善や新規のアイデアの創造にはマイナスという点に、もっと投資家やアナリストには注目してほしいものである。

 閑話休題、本題に戻ろう。ちょうど“マイコン”という物(技術)が普及してきて、“半導体産業”なるものが産業として認められてくる。そして韓国や台湾でも半導体工場ができる様になってくる。しかし、当時、日本の半導体の品質は世界一であり、価格は低かった。日米半導体摩擦なる政府間交渉に乗るほど、日本の半導体に優位性があったころ、韓国の半導体は似て非なる物を安価に作ることしかできなかった。

 そこで、今や液晶テレビで飛ぶ鳥を落とす勢いのS社は、東芝、富士通、NECなどのカスタムIC、ゲートアレイというASIC製品をリバース・エンジニアリングしてしまった。ほとんどのマスター・スライス(配線だけがカスタムのICの下地)を作り、コピーの依頼があれば、1週間でその完全なコピー品を量産する、という偽術を生み出した(意図して、技術とせずに偽術としています)。これにより、ゲートアレイのESを本来の発注主が評価している間にコピー品が完成し、本物より先に市場に出るという事態にもなった。

 今でも余り改善はされていないと感じているが、著作権法を無視する、無視できる国での作業であるが、欧米に輸出されて、元の設計した会社の販売価格より余程、安価に販売されるという大問題があった。

 この時代にはまだFPGAがないか、あっても小ゲートの物しかなかったので、ハードのゲートアレイをいかに短期間で作るか、そして、韓国、台湾へ、そのサンプルが出ないようにするかが、ビジネスが成功か失敗かの分かれ目となるという変な事態が生じていた。
 今も中国はコピー大国。一応、共産国家を標榜しているので、すべての生産手段は国民の共有物、だから、ソフトも設計図も皆出せ、という国なのだ。

 中国国内で作られている音響用のスピーカーは、フォスター電機か、パイオニアか、どちらかの図面で作られている、と聞いている。これらの工場は古くから中国へ進出していたが、従業員が図面をコピーして、別の現地のスピーカー工場へ行き、そっくりの物を作ってしまう。だから基本的な要素を変更した物が作れない。形だけを作れば完成する物を作るだけなら自動機で作れる。我々、日本の企業は、形の上にもう一つ感覚に訴える物作りをしようではないか。
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