電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第397回

東京ロボティクス(株) 代表取締役 坂本義弘氏


幅広いロボ要素技術の開発を推進
ヤマハ発へ協働ロボ技術を供与

2020/10/23

東京ロボティクス(株) 代表取締役 坂本義弘氏

 東京ロボティクス(株)(東京都新宿区山吹町347)は、2015年設立のロボットスタートアップ企業。従来は研究開発向けのプラットフォームロボット事業をメーンで展開していたが、20年から事業モデルをシフトし、現在は人共存型ロボットの実現に向けて、幅広いロボット要素技術の開発を進めている。今回、代表取締役の坂本義弘氏に話を伺った。

―― 設立から直近までの取り組みについて。
 坂本 当社は、独自の関節柔軟性(力制御)を持つ協働ロボットをベースに、ロボット研究に必要なハードやソフト、サポートサービスをワンパッケージ化した研究開発向けプラットフォームロボットを提供する事業を進め、これまでに大学や研究機関、企業の開発研究部門など30機関以上に導入してきた。そして、事業拡大に向けて製造現場向けへの展開など様々な施策を検討したが、当社のようなスタートアップでは生産、販売、保守・メンテナンスなど経営リソースには限りがある。
 そこで、このような弱みを補完してもらえるような大手のパートナーを探していたなか、縁あってヤマハ発動機(株)(静岡県磐田市)と知り合う機会を得て、1月に同社と技術供与に関する契約を締結した。

―― 技術の特徴などは。
 坂本 当社の協働ロボットは各関節にトルクセンサーが搭載されており、動作時のトルク値をリアルタイムに取得できる。そのため位置と力のハイブリッド制御やインピーダンス制御、柔らかい外力追従が可能で、素早い衝突停止も実現できる。こうした当社の協働ロボット関連の技術をヤマハ発動機に技術移転することになり、それにあわせヤマハ発動機からは当社へ2億円を出資いただいた。そして現在、ヤマハ発動機ブランドの単腕型協働ロボットを共同で開発している。

―― 現在の注力分野は。
 坂本 様々な作業を代替し、職場や家庭にも自然に溶け込めるような人共存型ロボット開発を目指している。ただ、そうしたロボットの実現には、これまで当社が注力してきたアームの技術だけでなく、移動機構、ビジョンシステム、機械学習、認識、センシング、ロボットハンドなど、様々な要素技術が必要となる。
 そこで現在、人共存型ロボットの実現に向けて幅広いロボット要素技術の研究開発を進めている。そのなかで優れた性能を持つものも出てきており、それらをライセンス提供や製品化するような取り組みも計画している。

―― 企業間連携も進めていますね。
 坂本 19年にNTTコミュニケーションズのオープンイノベーションプログラムに採択され、現在、遠隔操作型ロボットの開発を協力して進めている。当社のロボット技術とNTTコミュニケーションズの通信技術などを融合し、データセンターの遠隔保守ビジネスといったロボットによる遠隔就労のサポートや、危険作業の代替などを検討している。また、ANAホールディングス(株)(東京都港区)がスポンサーを務める遠隔操作型ロボットの国際技術コンテスト「ANA AVATAR XPRIZE」に向けた取り組みも進めている。
 そのほか、JUKI(株)(東京都多摩市)と連携し、ワイシャツ製造工程の一部にロボットを活用する実証を行った。画像処理技術などを用いて折り幅を調整し、ロボットで生地を折り畳むことに成功し、JUKIと共同で特許も出願した。

―― 今後の方針を。
 坂本 現在、設立時から進めてきた研究開発向けのプラットフォームロボット事業はいったん休止して、ロボット要素技術の研究開発を事業主体に据える体制に切り替えており、20年末~21年前半にかけて複数の製品を発表したいと考えている。そうした技術成果を積み上げていくことで、ロボットが活躍できる場を、製造現場だけでなく、商業施設やオフィス、家庭など我々の生活空間に近い場所まで広げていき、単純労働や危険作業をロボットに任せ、人はロボットにできない高度な作業に集中できるような社会、ひいては人とロボットが共存できるような社会を目指していきたいと思う。


(聞き手・浮島哲志記者)
(本紙2020年10月22日号11面 掲載)

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