電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第4回

MHN半導体株式会社の再生計画はこれだ!!(上)


~古い設備と過剰な従業員では決して勝てない~

2013/2/15

 2012年の漢字は「金」であったが、半導体業界においても政治の世界と同じく、「決められない」年であった。漢字で表現すれば「迷」と考えている。経産省も様々な方策で延命、再生を図っているが、資金の投入にもかかわらず実態は悪化への一途をたどっている。
この拙文はこの企業、そして業界の再起を願って参考としてほしく上梓する。

 MHN半導体社(ソフトボールでオリンピック金メダルのエースがいた会社)は慢性赤字の半導体事業部を、3社分、合併させて作られた会社である。しかし慢性赤字の体質からは抜けられず、倒産の危機にある。そしてさらに、FとPの不振の半導体事業とも合併させようとしている。負け組を何社併せても負け組に変わりはない。まして縄張り意識の強さがあり、逆の遠慮もあるがゆえに合併前と体制は変わらず、単に社名だけを変えてリストラを繰り返しているに過ぎない。これでは早晩消え行くこととなるであろう。

 筆者の考えでは、半導体産業ほど日本に向いている産業はない。多くの需要家がこの地域にあり、厳しい要求を出している。半導体を作る装置メーカー、半導体の材料メーカーも、その多くはこの地域の企業である。半導体の製造は化学手法によるので試行錯誤の繰り返しが多く、理論で決められないことが多い。試行錯誤からベストな方法を見出すのは、改善を旨とする技術者の多いニッポンの強さなのだ。また、品質の向上、高い品質の維持も得意な地域である。このように環境に恵まれている地域にありながら、半導体を作るメーカーが不振に陥っているのは何か根源的な間違いがある。

 需要家から半導体メーカーは厳しい注文をつけられる。これをこなすために半導体メーカーは難しい注文を素材メーカー、装置メーカーに出す。いずれの場合も対応するには開発力が必要であり、この開発力がこれらの関わる産業全体を優位にしてきた。需要家は半導体の評価をし、注文をつけてきて優れた半導体が生まれた。半導体メーカーは素材産業、装置産業が開発した製品を厳しい目で評価し、助言を行い、使用上の問題の指摘をしてきて開発の方向が定まり、優位性が保たれてきていた。

 この地域の需要家は、今や家電やゲームだけでなく自動車、電話、そのほか多岐にわたっており、これら需要家も世界での競争において負け組になっているが、これは鳥と卵の関係にもあり、どちらが原因とは言えない。優位性のある半導体があって国際競争力のある製品が開発され、優位性を保つために半導体が改良されてきたからである。

 ここで視点を変えてみたい。半導体の製造は主に化学を使った印刷である。印刷であるから、同じものを大量に印刷した方が効率は良い。厳しい国際競争の結果、一眼レフ・カメラの量産メーカーはこの地域にしかなくなっていた。つまり、歪みなく画像の拡大縮小をするレンズの技術はこの地域にしかなかった。この技術を応用して半導体の印刷機、露光装置の大手になったのは必然と言えよう。さらに、ウエハーの表面を平らにする技術はレンズを磨く技術からきており、これもこの地域が独占していた技術であった。レンズの技術と印刷技術の応用で大量生産、大量消費を目指した半導体製造は一時、御家芸となっていた。

 時代は変わり、製造設備さえ導入すれば物作りができてしまう時代が来てしまった。こうなると大量生産での競争力は資金力そのものとなる。別の島の地域でそこの政府が資金を出して超大規模の製造工場を作れば、こちらは10社にも分かれて、各社、独自性がある製造工場であるから、価格競争に負けるのは当然の話となる。従来の延長で製品を作れば価格競争にはならない。この当然なことを無視しては事業としては、成り立たない。

 振り返ってMHN半導体社をはじめとする、この地域の半導体メーカーはいまだに大量生産第一の体制にある。古い設備、工場、古いテクノロジー、過剰な従業員、これではTSMCをはじめとする海外勢と競争ができるはずがない。

 既存の古い設備、中規模の設備ではコスト競争に勝てない。これがひとつの大きな問題である。

 需要家にも大きな問題がある。半導体が使われ始めたころは性能の高度化のため、新商品のためであった。他に置き換えはできないので価格の主導権が製造側にあり、充分な利益も得られた。普及するに従い、家電のような量産品にも使われるようになると量産効果で価格が下がってきて、これがさらに普及の原因になり、雪だるま式に量は増え、価格は下がった。

 ところがそのうちに競争が激化し、顧客の奪い合いになり、価格の主導権が需要家側になると、半導体の製造では利益が出ない構造が構成された。しかも汎用のICよりコストを下げるためにカスタムICを使う、という半導体産業側から見てあり得ないことが常識として広まっていった。
 もちろん、iPhoneのようにその製造数が億になれば、これは事実となる。しかし自動車用のように1種類をわずか100万個も作らないのでは、カスタム化は高額になるだけとなる。しかも開発費まで値切られては赤字にしかならない。この地域に展開している海外の半導体メーカー各社は、この数年、カスタムICの受注を控えている、というより数百万個を超えても、汎用品の数倍の価格で買ってもらえなければ受注しなくなっている。当然のことである。

 MHN半導体もリストラの一環でSoCの事業を縮小、廃止としているが、問題はその製造数量に相応しい価格で買ってもらえない点にある。マイコンの標準品といっても、メモリーのサイズ、機能の有無でシリーズは1つでも、内実は数十種類となり、1種類の製造数は採算から見た最低ラインである100万個/月に満たない物が大半であるから、赤字の垂れ流しにしかならない。カスタムICをコストダウンのために作るサービスから業界は脱却すべきと考えるし、これなしに復活はありえない。
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