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第411回

KRYSTAL(株) 代表取締役社長 山口十一郎氏/COO 小西晃雄氏


世界初のPZT単結晶
早期のIPOを計画中

2021/2/5

社長の山口十一郎氏
 世界で初めてMEMSデバイス向けの単結晶ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)の事業化に成功したベンチャー企業のKRYSTAL(株)(クリスタル、山口県宇部市あすとぴあ2-1-17、Tel.0836-39-7822)。同社はスマートフォン(スマホ)や車の自動運転といった進化を支える、MEMSデバイスの性能を飛躍的に高められるキー材料で世界に打って出る。代表取締役社長の山口十一郎氏ならびにCOO(最高執行責任者)の小西晃雄氏に今後の事業戦略を聞いた。

―― 貴社の概要からお願いします。
 山口 当社は2017年設立のMEMSの素材開発を行うベンチャー企業である。ダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)成膜装置の製造販売や高性能のPZT開発を行っていたアドバンストマテリアルテクノロジーズ(株)(千葉県流山市)から成膜部門を独立させて発足した。エンジニアらを中心にスタッフは13人体制の技術・開発志向の企業だ。

―― PZT単結晶膜を世界でいち早く開発しました。
COOの小西晃雄氏
 小西 ポイントは、単結晶形成の核となるバッファー層であるジルコニアの配向膜形状を制御できたことだ。圧電材料の結晶格子に合わせバッファー層が変化していることを突き止め、世界で初めて「可変するナノピラミッド構造」を自由に作り出すことに成功した。このため、専用の単結晶成膜が可能な多チャンバー式スパッタ装置を独自開発している。バッファー層から圧電成膜までの連続成膜が可能で6/8インチウエハーに対応する。単結晶の純度は現在99.5%まで引き上げている。このバッファー層は幅広いプロセスマージンを確保でき、PZT以外にも様々な材料の単結晶化が可能だ。

―― PZT以外の単結晶化も可能ということですが、具体的事例については。
 小西 例えば窒化アルミ(AlN)やタンタル酸リチウム、チタン酸バリウムなどの素材にも適用可能だ。PZTは少量の鉛が含まれていることから、ポストPZTの圧電材料の開発と確立が急務とみている。
 当社が開発した単結晶化技術は様々な材料開発にも応用が可能なプラットフォーム性の高い技術だ。大学や企業と連携して次世代のMEMS材料の単結晶化に挑んでいる。

―― 具体的なビジネスモデルを教えて下さい。
 山口 現在PZTの単結晶膜や電極形成の受託、成膜済みウエハーの販売を行っている。スタッフにはプロセスや回路技術者もおり、MEMSデバイスの開発設計・製造販売も可能だ。
 基本的には顧客と二人三脚で、評価技術も一緒になって開発を進めるケースもある。また、膜の構造体やその製造や検査などに関する各種特許を取得済みで、これらのライセンシーを有料で供与している。

―― 最終アプリケーションについて教えて下さい。
 山口 インクジェットプリンター用のMEMSヘッドをはじめ、スマートフォン用のMEMSマイクやオートフォーカス機能など、アクチュエーターの高性能化を狙っている。
 また、将来は指紋認証技術にとって代わる高性能超音波センサー向けにも有望とみている。車の自動運転実現などの必須デバイスの1つにジャイロセンサーがあるが、さらなる高性能化が求められている。当社の単結晶材料により、高性能化できる点を売りにする。RFフィルターやパワーデバイス用途にも展開したい。

―― 足元のビジネス環境について。
 山口 国内外から強い引き合いや商談をいただいている。海外は中国や東南アジアからが多い。すでに現在、実用化に向けて10アイテム程度が走り出しており、21年夏場以降から事業が本格化しそうだ。まずはインクジェット向けヘッド用途が期待される。
 自社では限界もあるので、できる限りネットワーク化を図り、顧客をはじめ大学や公的研究機関などとの連携をさらに強化していく。

―― IPOに向けた動きは。
 山口 23~24年にも株式の公開を目指す。その時点では売上高も数十億円を見込む。優れた技術を世界に広めることが社会的にも大きな使命だと考えている。当社が世界に先がけて開発した単結晶薄膜化技術が、早く世の中で普及していくことを強く願っている。

(聞き手・副編集長 野村和広)
(本紙2021年2月4日号8面 掲載)

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