商業施設新聞
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No.814

各所で進むワクチン接種キャンペーン


山田高裕

2021/7/13

 新型コロナの感染拡大が続く中、ワクチンの接種も各国は急ピッチで進めている。アメリカでは人口の約48%がワクチンを2回接種し、イギリスでは50%以上が2回接種、約68%が少なくとも1回接種している。シンガポールに至ってはワクチン接種が進んだことなどから、行動制限を全面的に解除し、感染者の集計も中止する方針を発表している。

 一方で、ワクチン接種が進んだ国の多くでは、様々な理由でワクチンを打たないワクチン忌避者が問題となっている。アメリカでは約25%の人がワクチンを打つつもりはないと答えたと言われており、接種ペースもこの影響を受けて鈍化している。ロシアでもワクチン不信により、ワクチンを世界で最初に認可したにも関わらず、1回以上ワクチンを打った人が人口の2割にも達していない。

 こうした人たちの存在を受け、各国は様々な施策を講じている。ワクチン接種を雇用条件とし、接種しない人を締め出す実質的な強制策を採っている例もあるが、多くのところでは接種者に対しインセンティブを与える施策を採っている。接種者は行動制限の対象から外すといったものから、ドーナツなどの軽食を提供するもの、様々な割引を行うといったものが一般的だ。アメリカではMLBが接種者を対象に無料観戦チケットが当たるキャンペーンを行うなど、様々な民間セクターとの協力が注目されている。また興味深い例では、ワクチン忌避者が多いとみられる政治的保守派を狙い、ワクチン接種で保守派の人々が好むピックアップトラックや銃が当たるなどの的を絞ったキャンペーンを行っている州もあるようだ。

自衛隊が運営する東京のワクチン大規模接種会場
自衛隊が運営する
東京のワクチン大規模接種会場
 日本ではワクチン接種が急速に進んではいるが、2回接種が済んだ人は人口の約14%にとどまっており、高齢者以外の一般接種はこれからというところだ(7月6日現在)。よって、まだワクチン忌避の問題が一般的になるという状況ではないが、そうした問題が表面化した際にはそれに応じた施策が必要となるだろう。

 現にいくつかの事業者はワクチン接種者を対象としたキャンペーンを行っている。居酒屋大手のワタミは、ワクチン2回接種者を対象に、店舗でドリンクを1杯無料提供するキャンペーンを開始した。富士急グループでは富士急ハイランドの展望台入場料が無料になるのをはじめ、グループの百貨店やホテル、娯楽施設などで割引や優遇措置などをワクチン接種者に対し提供する。行政でも、横須賀市では市内の店舗と協力し、ワクチン接種済証の提示で特典サービスが受けられる接種推進キャンペーンを行っている。今後の情勢を鑑み、多くの事業者や行政がこうしたキャンペーンを進めれば、ワクチン忌避の問題だけではなく、消費の盛り上げにも貢献していけるだろう。
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