商業施設新聞
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No.818

アフターコロナと熱中症


高橋直也

2021/8/10

 緊急事態宣言が延長し、対象地域が追加された。先日、ある商業事業者が「今回が最後、今回が最後と言うけど、結局いつが最後になるのか」と話していた。本当にいつが最後になるのか。アフターコロナという言葉が生まれて久しいが、『アフター』の時期が見えてこないのは辛い。外出ができず、時間だけはたっぷりあるため考える時間が増えた。商業記者としてよく考えるのは商業施設にとってのニューノーマル、アフターコロナとは何かである。色々あるが、「DX」と「自由度の高さ」がキーワードではないかと思っている。

DXが加速していく(写真はQBIT Roboticsが展開する「&robot cafe system」)
DXが加速していく(写真はQBIT Roboticsが展開する「&robot cafe system」)
 DXが進んでいるのは周知の事実。セルフレジ、ロボットの導入、センサーやAIを活用した顧客分析など様々なシステムが開発・導入されている。コロナ前からDXは一部で進んでいたが、小売・外食店には「人の温かみ」「対面」も重要であるため、ロボット導入などに抵抗を示す企業もあった。要は小売・外食店はDXが進んでいる業界ではなかった。だがコロナ禍によって非対面を求められる環境になり、企業、消費者ともに抵抗が薄れた。ただし前述のように人の温かみ、対面など接客を強みにする企業も少なくない。DXは加速するが、その一方でどこまでデジタルに任せるかというバランスのとり方が重要だ。人とデジタルが絶妙にかみ合った業態が増えることを心待ちにしている。

 一方、自由度の高さについてだが、商業施設や店舗は不動産ということもあり、ある程度の不自由さがある。例えばある商業施設の「A」という区画に出店したとする。店舗がオープンした後、より視認性の高い「B」という区画の方に移りたくなっても簡単に移ることはできない。ただ最近、移動販売車が増えている。外出を控える人が多いなら、こちらから届けるということか。最近では物販も参入し始め、業種も拡大した。これにより、極端な言い方をすれば場所の制約が解消された。アフターコロナにおいて、テナントは販売手法、場所がより自由になる。ECとは違った形で、自宅、もしくは自宅近くで買い物ができるかもしれない。

 自由度の高さが増したことに関連して、スタートアップ企業のチャンスも広がっているように感じる。コロナ禍がどこまで影響しているかは分からないが、ポップアップストアが昨今増えている。商業施設への出店はある程度資金が必要であり、スタートアップの小売・外食店にとってはハードルが高いこともある。ただ、ポップアップストアならば比較的気軽に自分たちがどこまでやれるか実証実験ができる。施設側にとっては魅力的な店舗・ブランドの発掘にもつながる。結果的にアフターコロナにおいては若い企業・ブランドの存在感は増していくのではないか。

 色々考えを巡らせることはあるが、あくまでアフターコロナのこと。今は依然としてウィズコロナだ。話は変わるが、オフィスにいるのにやたら汗をかくと思っていたら熱中症になった。顔がやたらと蒸し暑かったので、マスクで体の熱が逃げにくくなったことが原因の一つだと思われる。救急車を呼ぶか迷っているとき、コロナのため病床が空いていなかったらどうしようかと不安になった。こういう不安を抱くとますます外出がしにくくなる。今回が最後の緊急事態宣言になってほしい。来年の夏は病院の受け入れ先を心配することがないアフターコロナになっていてほしい。
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