電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第452回

(株)NTTドコモ 5G・IoTビジネス部 社会イノベーション推進 XRソリューション担当 課長 織田敦氏/プロダクト部 第一商品企画 商品企画担当 石丸夏輝氏


スマートグラス文化の醸成へ
法人、個人用どちらも軽さが決め手

2021/11/26

(株)NTTドコモ 5G・IoTビジネス部 社会イノベーション推進 XRソリューション担当 課長 織田敦氏
織田敦氏
(株)NTTドコモ プロダクト部 第一商品企画 商品企画担当 石丸夏輝氏
石丸夏輝氏
(株)NTTドコモでは、XR(VR、AR、MRの総称)戦略を進める中で、様々なスマートグラスを販売展開している。8月には、Google社の「Glass Enterprise Edition 2」を法人向けに販売開始し、12月からはコンシューマー向けにNreal社の「Nreal Air」の販売を開始する。それぞれの機種を選択した狙いや事業展開などについて、5G・IoTビジネス部 社会イノベーション推進 XRソリューション担当課長の織田敦氏と、プロダクト部 第一商品企画 商品企画担当の石丸夏輝氏に伺った。

―― まずは「Glass Enterprise Edition 2」(Enterprise2)を選ばれた理由から。
 織田 当社では、法人向けのサービス・ソリューションとして、遠隔作業支援を展開している。そのなかで、お客様からケーブルの取り回しを簡素にしたい、デバイスを軽くしたいといった声が多く上がってきていた。
 同機種は、ワイヤレスで、46gと軽量であることが決め手となった。電池の持ちも良く、ディスプレーが640×360ピクセル、カメラが800万画素など、高スペックでブランドの知名度が高いこともプラス要因となった。
 ソフトウエアはアンドロイドベースのため、当社やお客様が多少のチューニングを施すことで使用が可能だ。また、Googleが提供するソフトウエアを使うこともできる。今後、当社でもスマートグラス向けのソフトウエアの開発を進めていく。

―― 導入状況は。
 織田 具体的な数字は非公表だが、徐々に採用が進んでいる。現状のお客様の反応としては、デバイスを使用しての評価や、自社ソフトウエアとの相互性などの確認をされているようだ。また、コロナ禍により出張ができなくなり、現場において直接指導や指示ができない状況が生じたことで、グラスデバイスを使用してみたいというニーズが増えている。
 当社では、Enterprise2だけでなく、すでに様々なグラスデバイスを法人向けに展開しており、今後も新しい機種を検討ししつつ、法人のお客様のニーズを吸い上げていく。

―― 遠隔作業支援以外の用途もあるのでしょうか。
 織田 カメラを搭載しているため、まずは、遠隔(店舗)接客など、人との関わりの中で、コロナ禍により変化が求められる部分に対応できると見ている。
 スマートグラス全体の動きを俯瞰すると、ニーズの高まりと市場拡大が見て取れる。近い将来、5G通信が一般普及し、現状よりもリッチな映像が送信できるようになると、グラスの使い方も拡大していくだろう。
 私見ではあるが、例えば、プレゼンを行う際に、グラスにセリフが映れば便利だろう。また、顔認証システムを使って、お客様や社内の人間の名前や所属などが分かるようになるかもしれない。まだ想像の段階ではあるが、日常生活で当たり前に、便利に使えるツールになるのではないかと考えている。

―― コンシューマー向けに「Nreal Air」を選ばれた理由については。
 石丸 当社では、5G通信対応のスマートフォン(スマホ)をハブとして、様々な周辺デバイスと連携させ、いろいろなサービスやソリューションを展開する「マイネットワーク構想」を掲げている。そのなかで、5Gと親和性の高いリッチなコンテンツについては、現状のスマホの画面や形状では表現に限界があり、スマホ+αが必須となると見ている。このαの部分を担うデバイスの1つがスマートグラスとなるだろう。
 とはいえ、現在はそのリッチなコンテンツはまだ少ないため、スマホのコンテンツをそのまま使用でき、かつ日常使いに最適な機種として、Nreal Airを選んだ。同機種はバッテリーを搭載していないため、スマホから有線で給電とコンテンツの送信をするが、76gと軽量で、通常のメガネのように長時間かけていることが可能だ。この軽さで、両眼共にFHDの高画素で映像を見ることができるのは、他に類を見ない。

―― ハードウエアがあっても、コンテンツが乏しい状況での普及は難しいと感じます。
 石丸 そのとおりだ。最近は5G通信もつながる場所が増えつつあるが、コンテンツはスマホと比べると数少ない状況だ。現時点において、ハードがあってもコンテンツが無ければ使われない、という状況を打破するためには別のアプローチを考える必要がある。その点で、Nreal Airは、専用のコンテンツが無くても、スマホのコンテンツをそのまま使えるということが魅力的だった。今あるコンテンツを活用することで、まずはスマートグラスを使うという文化を創出、醸成していく。そのうえで、専用コンテンツが必要となる本格的なグラスデバイスが、広く導入されていくと考えている。当社では、それまでの橋渡しをする取り組みを進めていく。

―― 今後も新製品を販売されていくのでしょうか。
 石丸 新しい機種については、常に注視している。XR戦略を進める中で、MR分野では「Magic Leap 1」を展開している。このほど、AR分野でNreal Airを、VR分野でもソニーの「Xperia View」の販売を発表し、XRデバイスのすべてを網羅したかたちだ。スマートグラス文化を醸成していくなかで、XRデバイスの相互拡大も図り、販売チャネルを拡大させていく。
 まずは、スマホ+グラスという形で手軽に使えるXRデバイスの存在をお客様に知っていただきたい。一部のドコモショップでは、実機を店頭に置いて体験できるようにするため、ぜひ手に取って試していただきたい。


(聞き手・澤登美英子記者)
(本紙2021年11月25日号6面 掲載)

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