商業施設新聞
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No.836

OMOなど新形態店舗が増加


新井谷千恵子

2021/12/14

QRコードを読み込んで、Rakuten Fashionで決済するシステムだ
QRコードを読み込んで、
Rakuten Fashionで決済するシステムだ
 東京・渋谷の商業施設「渋谷スクランブルスクエア」において、11月11日から12月1日の期間限定で、楽天が運営するファッション通販サイト「Rakuten Fashion」のOMO型ポップアップストアがオープンしていた。同店は、在庫を一切持たず、購入する際には商品に付属しているQRコードを読み込むことで、Rakuten Fashionのページで購入できるというシステム。商品は後日指定した届け先に届くため、手ぶらでショッピングが可能となった。

 ここ最近、OMO型店舗やショールーミング店舗が増えてきている。紳士服を販売する青山商事(株)も、10月にOMO型店舗を新宿に出店した。同店は、店内には「デジラボ試着室」を導入しており、ECにある商品を比較したり、購入した商品を自宅へ配送したりできる利便性と、商品を実際に触れるリアルの価値を掛け合わせた店舗となった。また、同社が展開するザ・スーツカンパニーの4つのブランドを集結したブランドコンテンツミックス店舗であることから、横断的に様々な商品を比較・検討できるのも大きな特徴だ。店舗運営面でも、売り場面積を縮小できるほか、ECの在庫を有効活用できることで店頭在庫の削減も見込めるという。

 様々なメリットがある一方で、OMO型店舗やショールーミング店舗に疑問を持つ人も少なくない。手ぶらで買い物できるというのは利点だが、欲しい商品は今すぐほしいという考えは一定数あるため、OMOという形態に意味がないと思う人もいる。また、ショールーミング店舗では店舗の採算性という観点で考えても、「将来的には、商品を見るために入場料をもらうエリアになるのでは」と語る人もいた。

 そもそも、OMO型店舗やショールーミング店舗というのは一体何なのだろうか。OMOとは「Online Mergers with Offline」の略称で、筆者はオンライン(EC)とオフライン(実店舗)をシームレスに連携した形態であると認識している。ユニクロやジーユーがその最先端を行く店舗であると思うが、ECで頼んだ商品を店舗で受け取れたり、店舗にない商品をECで取り寄せたり、店頭の在庫に縛られないで商品を買うことができるのがOMOの特徴の一つと言えるだろう。ショールーミング店舗は、店舗で何かを購入するというよりも、店舗で新製品などを体験することに重きを置いている印象だ。店舗は場所を出店者に貸し出すことで賃料を得て、人々は体験を目当てに店舗を訪れ、出店者は自分たちをより知ってもらうチャンスにお金を払うのだ。

 取材をしていると、OMOやショールーミングの話がよく出るが、「正解はわからない」という人が多いと感じる。新しく出てきた業態であるがゆえに、一時のブームで終わるのではないかという人もいるが、これをより深掘りして磨き上げていくことで、より新たな購買体験につながるのではないかという人もいる。今はまだ数が少ないが、10年後にはもしかしたら、通信技術の発展なども相まって一般的な店舗形態になっているかもしれない。ECも世の中で出回り始めたころは「実際に試せないなんて怖い」など、利用する人の抵抗も大きかったかもしれないが、たった10年ちょっとでそれらも大きく解消されている。OMOやショールーミングも、今後大いに期待できるだろう。
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